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古代の記憶
それは、見たこともない世界だった。
巨大な都市。空には、複数の月が浮かんでいる。いや、月じゃない。人工の構造物だ。
街を歩く人々。でも、人間じゃない。背が高く、肌が青白い。
『時が来る』
誰かの声が、頭の中に響いた。
『我々の文明は、終わりを迎える』
場面が切り替わる。
巨大な神殿。中央に、翡翠色の石が置かれている。あの石だ。
周囲に、何十人もの人々が跪いている。
『種を残す』
声が、続いた。
『未来の者たちへ。我々の記憶を』
石が、光り始めた。
眩しい光が、神殿全体を包み込む。
そして、全てが消えた。
「篠原君!」
黒木が、俺の肩を揺さぶっていた。
「大丈夫か!」
「あ、ああ……」
俺は、額の汗を拭った。
「今、何が……」
「分からない。急に、倒れたんだ」
黒木が、心配そうに俺を見ている。
「幻視、ですかね……」
「幻視?」
「石の記憶を、見た気がします」
俺は、今見た光景を説明した。
黒木は、黙って聞いていた。
「つまり、石は記憶媒体だと」
「はい。古代文明の記憶が、刻まれている」
「なぜ、君にそれが見えた」
「分かりません。でも、あの遺跡で石に触れた時から、何か変わった気がします」
俺は、自分の手を見た。
「石が、俺に何かを伝えようとしているのかもしれません」




