第7.5話:エビチリの宴と4次元の誓い
利権公爵による最終断裁が始まる直前、1.3兆階の最上階「銀座アスター・マケマケ宇宙支店」の円卓を、四人のゾロと成美菩薩が囲んでいた。外は黄金のシュレッダーが時空を削る不気味な音が響いているが、室内はエビチリの芳醇な香りと、温かな湯気に包まれている。
「1951年の先輩、この『海老のチリソース煮』を。戦後のあなたが見たかった、豊かな未来の味です」 正美が取り分けると、モノクロ大師は震える手で箸を取った。 「……旨い。白黒の世界では想像もできなかった、この『赤』の輝き。この一皿を守るためなら、マントルの圧力など微々たるものだ」
1957年の怪傑スターは、紹興酒のグラスを掲げて高笑いする。 「これだよ! この華やかさ、この味のエンターテインメント! 誰にランキングされずとも、この一口で私は救われる」
1996年のリンク少年は、杏仁豆腐を口に運びながら、タブレットで塔の防衛システムを最終チェックしていた。 「……同期完了。ボクたちの記憶、そしてこの宴の幸福感を、全1.3兆階の構造計算にマージしたよ。これでこのビルは、物理的な強度じゃなく『思い出の総量』で耐えるようになる」
成美菩薩は、みんなにジャスミン茶を注ぎながら静かに語りかけた。 「みんな、種に水が満ちたわ。あなたたちが今感じている『美味しい、幸せだ』という思考が、宇宙で最も硬いダイヤモンド構造を作るの。……さあ、完食したら行きましょう。私たちの『権利』を、あの冷酷な公爵に教えてあげる時よ」
五人は立ち上がった。円卓の中央には、空になった皿が美しく並んでいる。それは、完遂された施工と、満たされた魂の象徴だった。




