第7.2話:1957年、マントの咆哮(怪傑の復讐)
次に現れたのは、最も華やかで、最も苛烈な、1957年版のゾロだった。 彼は大衆娯楽の黄金期に生まれ、百万人の歓声を背負って戦った「スター」である。彼のマントは深紅に輝き、振るう剣からは火花が散る。
「正美……! 偽物め! お前のビルなど、私の人気を奪うためのセットに過ぎん!」
1957年版のゾロは、公爵によって「人気」こそが真実であるという呪縛をかけられていた。彼は、自分が「忘れられる」ことを何よりも恐れている。かつての栄光が大きかった分、現在の沈黙に耐えられないのだ。
彼は宇宙空間を飛び回り、無数の「サイン色紙の刃」を投げつける。 「私はスターだ! 誰もが私を知っているはずだ! なぜ誰も私を検索しない!? なぜ誰も私をリポストしない!?」
彼の攻撃は、現代のSNSの承認欲求そのものだった。公爵は、彼の「愛されたい」という純粋な願いを歪め、正美を攻撃する兵器に変えたのだ。
正美は、54個のビッグバンを「拍手」の振動へと変換した。 「……聴こえるか。この塔の1.3兆階すべてから沸き上がる、感謝の振動が」
正美は「負け負け銀座ビル」の全階層のスピーカーを使い、1957年の映画主題歌を爆音で流した。 「お前は数字のために戦ったんじゃない。目の前の一人を、成美のように笑わせるために戦ったはずだ」
成美菩薩が、1.3兆階の窓から「平和の種」をライスシャワーのように撒く。 「1957年のあなた。あなたの輝きは、誰かのランキングの順位じゃない。誰かの心に咲いた、一輪の花なのよ」
その慈悲に触れた瞬間、1957年版の狂気は消えた。彼は剣を納め、優雅に帽子を取って礼をした。 「……そうか。私は、踊っていただけだったのだな。この美しい平和の種の上で」




