8.それでも本を作りたい
さて、ここまで申し上げた通り、同人活動――ことに一次創作小説を本にして利益を得ることは、余程でない限り難しいと思います。
手っ取り早く収益化したいなら、公募に出して商業デビューを狙ったり、インセンティブをもらえるサイトに投稿したりしている方がいいでしょう。書くだけなら、元手もかからないし。
あとは漫画を描けるようになるとか、人気作品の二次創作をやるとか、身も蓋もないことを適当に放言しておきます。即売会にはプロの編集者も来ているし、もしかしたら目に留まって商業デビュー、なんてこともあるかもしれませんが。
それでも上手く売る方法は、きっとあるのでしょう。周りを見ると、実際に売れているサークルもあります。ジェラシーです。
売るためのノウハウや効果的な宣伝の方法なんかは、ブログなどに書いている人が多数いるので、探してみてください。むしろ私が知りたい。いい方法があったら教えてくれ!
同人誌を売るのは難しい。けれど、作品を書き上げ、本にまでしたその努力、労力を褒め称えたい。執筆だけでなく、編集をして目次や表紙を作って印刷用のデータを作り、締め切りに間に合わせ、イベント会場まで足を運んだ。それだけで、きっとすごいことです。どんな装丁にしようか、予算とにらめっこして印刷会社を選び、これで大丈夫だろうかとドキドキしながら入稿し、仕上がりを待つ。そうやって出来上がった本を手に取った瞬間は、何者にも代え難い喜びがあります。
苦労してものを作ったという達成感は、やはり嬉しいものです。
もう一つ、私の場合、本を作る理由は、何を書いたか確認するのが楽だから、という部分もあります。データだと画面をスクロールして、「あそこ何て書いたっけなあ」と探すのに少々時間がかかってしまいますが、紙に出力して置けば、ぱらぱらめくって斜め読みしながら探せます。私はその方が楽なのです、古い人間なので。その過程で、何故か誤字が見つかります。入稿する前にチェックしたはずなのに。
そして、イベント会場にはたくさんの出会いがあります。隣のサークルの人、名刺や無料配布をもらってくれた人も、袖振り合うも他生の縁。それから、本に興味を持ってくれた人、買ってくれた人は神にも思えるでしょう。そして、自分も欲しいと思える本との出会いがあるかもしれません。ネットだけでは出会えない人と出会えることこそ、リアルイベントの醍醐味です。
そんな建前と売れたいという現金な気持ち、妬み、それから喜びを味わえるのが、本作り、そして即売会です。
もちろん、いつかやめなければいけない日も来るでしょう。でもその日までは、まだ見ぬ出会いを求めて、自分で作った本を引っ提げて、イベントに出たいと思うのです。
売れなければ価値がないわけじゃない。この一冊が、いつか誰かに届くと信じて。
お読みくださり、ありがとうございました!
ここで一旦完結とさせていただきますが、何かネタを思いついたら追記するかもしれません。その時はまたお付き合いいただけましたら幸いです。




