7.各イベント体感レポート③文学フリマ東京
文学フリマは、文芸作品の展示即売会と銘打たれているイベントです。出店者が「自分が“文学”と信じるもの」を自らの手で販売します。カクヨムなどで見かける作家さんも多く見かけるイメージ。
コミティアと同じように、全国各地で開催されています。が、先述のとおり、私は東京にしか行ったことがないので、ここでお話するのは、あくまで東京の、そして弱小サークルの負け惜しみのようなものとご承知おきください。
こちらはコミケやコミティアと違い、文字の本を販売しているサークルが多いですが、漫画やイラスト、写真集やCD、グッズなど、様々な作品が販売されています。この辺は他の即売会と同じですね。
2002年に第一回が開催され、少しずつ規模を拡大し、2024年の冬から東京ビッグサイトに会場を移しています。
イベントの知名度が上がり、多くのサークル参加や集客があることはよいことかもしれません。が、私のような弱小サークルからすると、そうも言えない部分があると実感せざるを得なかったのです。
私が初めて文学フリマに出店したのは、2022年の5月でした。この時の会場は東京流通センターという場所で、会場もワンフロアのみと、今と比べると小規模でした。
この時は、コピー本を15部ほど作って、半分くらい売れました。それで、アホなわたくしは「これはいける……!」と味を占めたわけです。ハイ。
ところがその後、明確に潮目の変化を感じました。ワンフロアでの開催だったのが、流通センター全館を使っての開催になり、その後はさらに大きな箱、ビッグサイトに引っ越したわけです。
一回目の参加以降、毎回参加していましたが、2024年頃から段々と売り上げが落ちていき、ビッグサイトに移ってからは知り合いが買いに来てくれなければ壊滅、という状況に追い込まれています(現在進行形)。
もちろん、売れている人は売れているのだろうと思うので、これは私個人の話です。しかし、サークルも一般参加者も増えて、人の流れが変わったのは明らかなように思います。
初参加の時は、人の流れはゆったりしていて、足を止めてくれる人が多く、その分買ってくれる人も思いがけずいました。ところがここ数回は、足早に目当てのサークルを目指す人が多くなり、ペーパーや名刺を手に取ってもらうこともままならなくなった印象です。
開場が広くなれば回るだけでも大変だし、目当てのサークルを事前にチェックすることは必須になってきます。これは仕方のないことでしょう。
しかし、これだと宣伝力のある人気アカウントやプロの作家、企業ばかりが目立つことになってしまいます。これの弊害が、文学フリマは大きいように感じます。
文学フリマに限らず、コミケやコミティアなどの大きな即売会には、商業で本を出している作家さんもサークルとして参加しています。しかし、コミケは商業誌の販売は認めていないと明記してあるし、コミティアも「自身の著作であり、出版社の許可があること、作家本人がサークルとして出ること」など、ルールが定められています。
しかし、文学フリマは個人・法人、プロ・アマチュア、同人誌・商業誌、営利・非営利を問わず、出店を認めています。こうなると、知名度のない個人は埋もれてしまいます。両側を著名人に挟まれて悲しかった、という声も聞きます。出版社が新刊の試し読みを無料で配っているという話もありました。
もちろん、禁止事項ではないので、有名人や法人が目立つことを批判しても、弱者の負け惜しみにしかならないのでしょう。しかし、こういったイベントが法人のプロモーション会場や、プロ作家のサイン会会場と化すことは、果たして良いことなのか。そして、文学フリマはそれを目指しているのか。
そう、コミケやコミティアは「同人誌即売会」としての方針を明記しているし、法人は法人枠で参加してくれとあるのに、文学フリマはそれが曖昧なんですよね。誰でも参加できるのはわかる、だけど、法人も一般サークルとして参加できる、商業誌も販売OKとなれば、同人誌即売会の姿勢としては、疑問を抱かざるを得ません。それに辟易して、「文学フリマ東京にはもう参加しない」と宣言した書き手も多くみられました。
まあ、よくよく見ると、文学フリマは「文芸作品の展示即売会」と書かれていて、「同人誌即売会」とは書かれていません。なので、まあそういうことなのかもしれません。文学フリマは何を目指しているのか。
批判ばかりしていても仕方ないのですが。買ってもらえなくなったのは、単純に会場が大きくなって、目立たなくなったからというだけかもしれませんし。何を言っても弱者の負け惜しみと言われればそれまでです。
でも、売れない作品に価値がないかと言われれば、そんなことはないと信じたいじゃないですか。投稿サイトにも、「これなんで書籍化されないの?」というレベルのすごい作家さんがたくさんいるし、見てもらえるかどうかは運もある。伝えたいことがあって、それを物語にしたためただけで、すごいことなのです。
自分の書いた物語は、きっと誰かに届く。そう信じて、創作を続けたいと思うのです。
そして、イベントの雰囲気を作るのは、サークルも一般も、全ての参加者です。文学フリマが開かれた場所だというのなら、私たちも大手に負けず腐らず、イベントを盛り上げる一人として参加し、本を作って売ってみたいという人が新しく来たら、応援できる場であってほしいと思います。だから、本当に嫌気が差すまでは、私は参加を続けようかなあと思います。
こういった即売会は、書き手と読み手の出会いの場であること。そのことを忘れずにいきたいものです。




