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二つの出会いと一つの別れ

作者: 入多麗夜

 彼が人とは違うと気づいたのは、許婚として初めて顔を合わせた十ニ歳の頃だった。


 その日は初夏の午後で、空はやけに晴れていた。両家の親同士が並び立ち、控えめに笑いを交わす中、レティシアは母に背を押されて一歩前に出た。


 練習してきた挨拶の言葉はきちんと覚えていたけれど、頭が少しぼんやりしていた。緊張していたのか、それともその場の空気があまりにも重かったのか――今となってはもうわからない。


 許婚のオドリックは、テラスの椅子に座っていた。銀のティーカップが目の前に置かれていたが、彼はそれに手を伸ばすでもなく、白紙のノートに鉛筆で何かを書いていた。

 それは、五本の横線。見たことのある形。音符――たぶん、音楽の記号だった。


「オドリック。失礼ですよ、紹介の途中です」


 子爵夫人――彼の母が声を強めた。だが彼は、すぐには顔を上げなかった。まるで、この場にいる誰よりも遠いところにいるような――目の前の現実とは違う世界に、心だけ浮かべているようだった。


 やがて、ようやく顔を上げた彼の瞳が、レティシアを見た。


 その目を見た瞬間、レティシアは悟った。


 この人は、誰の目もちゃんと見ないまま、大人になるのだろう、と。


 彼の瞳は澄んでいた。けれど、その視線の先は、誰かに向けられたものではなかった。彼の目は、人ではなく、他の何かを見ていた。世界のどこかにある、自分だけの世界のようなものを――。


「……初めまして、レティシア・アーランと申します」


 ようやく口にした彼女の声に、彼は一瞬だけまばたきをして、小さく会釈した。


「僕は……オドリック・ヴェルヌです。よろしく」


 不器用な挨拶。でも、声は透き通っていて、よく響いた。


 この人は、きっと変わっている。でも、変わっていることが、悪いことではないのだと――十歳の彼女の心は、なぜか知っていた。


 彼は決して、人前で演奏をすることはなかった。

 それは彼の性質によるものでもあり、また、この社会における価値観によるものでもあった。


 貴族たちは芸術を学ぶ。音楽も例外ではない。けれどそれは、あくまで“教養”でしかない。舞踏と同じく、披露する場は限られ、誰の目にもそれは「品格を示すもの」としてしか映らなかった。


 芸術という文化が市民のあいだで広がって久しい時代だった。街を歩けば、辻にヴァイオリンを奏でる者がいて、広場では子供たちが歌を口ずさむ。人々の生活と音楽は密接につながっている。


 貴族の社会は市民の生活とは乖離しており、文化として浸透しにくいという社会的構造故か“壁”のようなものが、たしかに存在していた。


 今思えば、それは格差によるものだろうと気づいたのだが、当時のレティシアにとっては、もっと曖昧で、ぼんやりとした違和感だった。


 音楽は教養として学ぶものの一つにすぎなかった。弾ければ立派、分かれば上品――けれど、それ以上ではなかった。


 貴族にとっての芸術とは、あくまで外側を飾るための装飾品であり、それに情熱を注ぐ者はどこか「道を踏み外した人間」として見られた。

 技術を磨きすぎれば、職人じみて見える。創作を志せば、変人とされる。


 だからこそ、オドリックが音楽に惹かれていることは、周囲にとって奇異だった。

 礼儀作法は申し分ない。血統も申し分ない。ただ、その情熱だけが、彼を「貴族らしくない存在」にしていた。


 そんな彼の演奏を、一度だけ耳にしたことがあった。


 十四の春、レティシアがヴェルヌ邸を訪れていた日のことだった。昼食の準備が整うまでの時間、彼女は書斎隣の客間に通されていた。扉の外は静かで、屋敷の奥に人の気配はなかった。


 しんとした空気の中、最初は気のせいかと思った。けれどそれは確かに音だった。誰かが鍵盤を叩いている。


 しかし、レティシアが知るピアノ曲とは違っていた。整った旋律もなければ、決まった拍もない。重厚さも格式もない。むしろ、音の並びは不揃いで、どこまでも自由だった。


 廊下を歩き、音のする部屋の前で足を止めた。扉は少しだけ開いていて、中が見えた。


 ピアノの前に、オドリックがいた。


 姿勢はやや前傾し、視線は鍵盤から動かなかった。譜面は置かれておらず、彼は音の感覚を確かめながら弾いているようだった。


 レティシアは音を漏らさぬよう、そっと壁際に立った。


 やがて、オドリックの手がふと止まり、彼はゆっくりと顔を上げた。

 視線がまっすぐ、扉の隙間を捉えていた。


「……入ってきても大丈夫ですよ」


 落ち着いた声だった。驚いている様子もなかった。むしろ、最初から気づいていたかのような口調だった。


 レティシアは少し迷ったが、無言のまま扉を押し開けた。軋んだ音が廊下に漏れる。


「ごめんなさい……邪魔するつもりはなかったの」


 レティシアの声は自然と小さくなった。


 オドリックはわずかに肩を揺らした。振り返ることなく、静かに答えた。


「別に。聴かれるのは、嫌じゃありませんよ」


 レティシアは、そっと足を踏み入れた。部屋の隅に置かれた椅子を見つけ、そこに腰を下ろす。距離はあったが、彼の横顔が見える位置だった。


 部屋は書斎にしては簡素だった。


 壁際には古びた本棚が一つ、色褪せた背表紙がぎっしりと並んでいる。窓にはカーテンもなく、午後の光がそのまま床を照らしていた。装飾と呼べるものはほとんどなく、絵画も彫刻もない。ただ、ピアノだけがこの部屋で不釣り合いなほど丁寧に磨かれていた。


「この部屋、あまり使ってないの?」


 レティシアが静かに尋ねると、オドリックは少しだけ首を傾けた。


「……たぶん。誰もここには入らないし、僕がいるときくらいしか鍵も開けない」


「じゃあ、ここでずっと……ピアノを?」


「うん。音を出せるの、ここくらいだから」


 返事は短いが、どこか気楽そうだった。


 レティシアは視線をピアノに移した。木目の深い艶が光を反射している。調律も行き届いているようだった。


「さっきの曲、あなたが作ったの?」


「……曲っていうほどのものじゃないよ。ただ、思いついた音を弾いてるだけ」


「でも、あんなふうに弾けるのって、すごいと思う」


 オドリックはしばらく黙ったあと、小さくつぶやくように言った。


「そんなことないですよ」


 オドリックはそう言って、軽く息をついた。気取った調子ではなく、本当にそう思っているようだった。


「ただ、頭に浮かんだ音を並べてるだけです。練習したわけでもないし、誰かに教わったわけでもないし」


「でも、なんだか気になったわ。あなたの演奏」


「……それ、変わってるって意味ですか?」


「ううん。面白いって意味」


 レティシアがはっきり言うと、オドリックは少し黙って、手元を見たまま肩をすくめた。


「そう言われたの、初めてかもしれません」


「貴方のピアノを聞く人少ないの?」


「ほとんどいませんよ。聴かれるの、苦手ですし」


「でも私は、聴けてよかったと思ってる」


 オドリックは反応しなかったが、少しだけ口元がゆるんだように見えた。


「私以外にも、誰かに聴かせたことあるの?」


 レティシアが尋ねると、オドリックは少しだけ眉を寄せて考えこむような顔をした。


「……昔、一度だけ。父に。すぐ止められましたけど」


「どうして?」


「“遊びじゃない”って。音楽をやるなら、習ったとおりに弾けって」


 オドリックは少し悲しそうに話していたが、その言葉の裏にある思いは、レティシアにもなんとなく伝わった。


「でも、今もやってるわね」


「やめられないんです。止める理由も、よく分からないから」


 その言い方が少しだけ不器用で、レティシアは口元をほころばせた。


「私は、それでいいと思う。習ったとおりに弾くより、今の方がずっと楽しそうに見えるわ」


 そう言うと、オドリックは小さく笑った。


「……そうですか」


 その笑いが、レティシアには妙に印象に残った。表情を崩すことの少ない彼が、あの時だけは、ほんの少しだけ気を緩めたように見えたのだ。


 ふと、オドリックが時計の針に目をやる。


「……さて、そろそろ戻らないと、バレるかもしれませんね」


 静かにそう言ったあと、彼はレティシアの方へ視線を向けた。


「どうか最後に一曲、聞いてもらえますか?」


 レティシアは驚いて、思わず息を飲んだ。


「いいの?」


「……はい。どうせ誰にも聴かせる機会なんて、滅多にないですから」


 オドリックは少し照れながら、視線を落とした。指先が、そっと鍵盤の端に触れる。


「うまく弾けるかはわかりませんけど」


 そう言って、息を整えるように短く吸い込むと、彼は静かに弾き始めた。




 ◇




 それ以来、二人は会うたびにあの場所で、ピアノを囲んで静かな時間を過ごすようになった。


 オドリックは譜面もなく、ただ思いついた音を並べるように鍵盤を叩いた。レティシアはそれを黙って聴いた。


 感想を求められることも、褒めることも、否定することもなかった。ただ、そこにいるだけで、十分だった。


 話すことがない日は、音だけが部屋に流れた。

 けれど、それが不思議と居心地が悪いとは思わなかった。


 ある日、レティシアは音に耳を傾けながら、いつの間にかうとうとしていた。


 気づけばピアノの音は止んでいて、部屋には夕方の光が差し込んでいた。重たい瞼を開けると、自分の肩に毛布が掛けられているのに気づいた。


 それは部屋の隅にあった予備のブランケットだった。


 ――ああ、彼が。


 誰に言われたわけでもなく、そっとそうしてくれたのだろう。レティシアはそれだけで、胸の奥がほんの少しだけ温かくなるのを感じた。


 オドリックはピアノの前に座ったまま、まだ鍵盤に手を置いていた。音は鳴らしていない。ただ、何かを考えているように、静かにしていた。


「……ごめんなさい。寝ちゃってたみたい」


 そう声をかけると、彼は少しだけこちらを振り向き、静かに首を振った。


「いいえ、大丈夫ですよ。飽きたのかと思ってたくらいです」


「そんなことないわ。むしろ、心地よすぎたの」


 言ってから少し恥ずかしくなって、レティシアは毛布をそっと膝の上に抱えた。


 オドリックはそれ以上何も言わず、視線を鍵盤へと戻した。けれど、その横顔はほんのわずかに緩んで見えた。


 レティシアは、毛布を膝にのせたまま、しばらく黙って彼の横顔を見つめていた。部屋にはもう日が差し込んでいなかったが、窓の外はまだ仄かに明るい。今日は少し長く居すぎたかもしれない。


「そろそろ帰るわね」


 そう言って立ち上がると、オドリックはゆるやかに頷いた。


 レティシアは微笑みを返し、毛布をそっと畳んで椅子の背にかけた。名残惜しさを押し隠すように扉へ向かう。


「……また来ても、いいかしら?」


 振り返って尋ねると、オドリックは少しだけ間をおいて答えた。


「ええ。構いませんよ」


 オドリックの返事を聞いて、レティシアはそっと安堵の息を吐いた。


「それじゃあ……またね」


 静かに扉を引いて部屋を出ると、廊下は昼よりもひんやりとした空気に満ちていた。窓の外にはもう陽の気配はなく、明かりも灯っていない廊下をレティシアはゆっくりと歩いた。


 音の余韻がまだ耳の奥に残っていた。


 この数ヶ月、何度もこの屋敷に通い、何度もこの部屋を訪れている。


 けれど帰り際には、いつも少しだけ名残惜しさを抱く――まるで、何かを忘れてきたような気持ちになるのだった。


 階段を降りながら、レティシアは心の中でそっと思った。


 ――また来よう。できるだけ早く。


 そう思える場所があることを、きっと彼はまだ気づいていないのだろう。


 それが少しだけ、もどかしくて、嬉しかった。




 ◇




 ある年の春のことだった。


 レティシアはすでに、正式にオドリックの婚約者となっていた。


 とはいえ、それは名ばかりの婚約であり、社交界の誰もが“順当な取り決め”と受け止めていたにすぎない。家柄と家柄をつなぐための線引きのようなもの。そこに本人たちの意思がどれだけ反映されているのかなど、誰も気に留めなかった。


 アーラン家とヴェルヌ家。どちらも長い歴史を持つ貴族であり、家同士の関係は良好だった。レティシア自身も、オドリックのことを嫌いだと思ったことは一度もない。


 ただ、彼の心がどこにあるのか――それだけは、昔から不思議に思っていた。


 春の風が、外套の裾を揺らす。


 今日はオドリックの母、子爵夫人に頼まれ、昼食前に屋敷へ寄ることになっていた。特別な用事があるわけではない。最近あまり人前に出ようとしないオドリックの様子を見てほしい――そう言われたのだった。


 そんな頼み事をされること自体が、彼の扱いにくさを物語っているのかもしれない。


 けれどレティシアにとって、それは嫌な役目ではなかった。


 むしろ、あの部屋で彼と過ごす時間は、少しだけ特別だった。あの空気の中には、言葉ではうまく言い表せない、何かがあった。


 だから今日もまた、屋敷に着いてすぐ、彼がいそうな書斎へと向かった。以前よりも足取りは早い。何度も来ているうちに、迷うことなく辿り着けるようになっていた。


 しかし――


「こんなもの……貴族の嗜みとは言えん!」


 怒声が、廊下の奥から響いた。


 一瞬、別人のように聞こえた。あの厳格な子爵が、声を荒げるなどほとんどなかったからだ。


「何度言わせるつもりだ。“遊び”でやるのなら、今すぐやめろ!」


 レティシアは反射的に立ち止まり、目を見開いた。その怒りの矛先が、誰に向けられているのか、すぐに分かった。


 オドリック――。


 彼女は、息を潜めるようにして廊下を歩いた。


 扉の前まで来たところで、レティシアは立ち止まった。中の様子をうかがう間もなく、足音が近づいてくる。


 とっさに、彼女は廊下の脇にある飾り棚の陰に隠れた。


 間もなく、扉が重たく軋む音とともに、子爵が現れた。


 頬には赤みが差し、眉間には深い皺が刻まれている。口を結んだまま、憤りを押し殺したような面持ちだった。彼はまっすぐ廊下を進んでいき、一階へと降りていった。


 レティシアは息を殺し、足音が遠ざかるまでじっと身を潜めていた。


 やがて、子爵がどこかへ外出したのを確認した彼女は、再び扉の前へと近づいた。


 中を覗くと、そこにはオドリックが立ち尽くしていた。彼はピアノの前に立ったまま、まるで時間が止まってしまったかのように、微動だにしていない。


 そう、そこには荒れ果てたピアノの姿があった。


 蓋は無惨に外れ、鍵盤のいくつかは叩き折られていた。脚も片方が砕けて傾いており、木片が床に散らばっている。普段、丁寧に手入れされていたはずのそれは、今や見る影もなかった。


 レティシアは、思わず息を飲んだ。


 音を立てないように踏み込んだ足音に、オドリックはぴくりと肩を揺らした。振り向くことはなかったが、誰が来たのかはすぐに分かったのだろう。


「……すみません。気まずい所をお見せしてしまって」


 オドリックは、うっすらと笑みを浮かべながらそう言った。


 レティシアは返す言葉も出ず、ただ彼の横顔を見つめた――そして、気づいた。


 左の頬が赤く腫れていた。頬骨のあたりには青紫が混じり、肌はじわりと熱を帯びているように見えた。殴られた直後なのだと、一目で分かった。


「……それ、冷やさないと跡になるわ」


 自分でも、こんな言葉しか出せないことに歯がゆくなる。だが、オドリックは小さく頷いただけだった。


「冷やすものを取ってくるわ。じっとしていて」


 階段を下りる足取りは速かった。使用人に見つからぬように、足音を立てぬように。台所の氷室を開け、氷の欠片を素手で掴むと、傍にあった布巾に包む。手がかじかんでも、そんなことはどうでもよかった。


 ――痛かっただろうに


 階段を駆け上がりながら、レティシアの胸には、ふつふつと怒りに似た熱がこみ上げていた。それは子爵に対するものだけではない。何も言わず耐えていたオドリックにも、自分自身にも向けられていた。


 あの音楽を、あんなふうに壊されて。なぜ何も言わずに、ひとりで全部、背負おうとするのか。


「……馬鹿ね、あなたって」


 レティシアは小さくそう呟きながら、もう一度、扉を開いた。


「ほら、じっとして」


 氷を包んだ布を、彼の頬にそっと当てる。


 オドリックは一瞬、身を引くように肩を動かしかけたが、レティシアの目が真っ直ぐこちらに向いているのに気づき、動きを止めた。


「……だいぶ腫れてるわね」


 オドリックは、どこか困ったように片目を伏せる。


「これくらい……大したことじゃありませんから」


「……そういうのを、“大したこと”って言うのよ」


 オドリックはそれ以上何も言わなかった。けれど彼がぐっと堪えているのは、レティシアにも分かった。


「痛かったでしょうに」


 レティシアがそっと言うと、オドリックはわずかに目を伏せたまま、ほんの少しだけ息を吐いた。


「……そうですね。少し、だけ」


 ピアノが壊されたせいか、彼の声に感情はほとんど乗っていなかった。


 レティシアは黙って、布の上から軽く押さえるようにして氷を当て続けた。しばらく、二人の間には会話がなかった。


 傍らには、破壊されたピアノの残骸が静かに転がっている。もう音を奏でることのない、ただの木の塊。


「直せるかしら」


「たぶん、無理です。脚が折れてますし……中の響板も割れてました」


 レティシアはそのまま返事をする事なく黙ってしまった。何を言えば、どこから言えばいいのか分からなかったからだ。ただ一つ、確かなのは、このまま彼を一人にしてはいけないということだった。


 レティシアは氷の布をそっと彼の頬から離し、手のひらで軽く頬を包み込むようにして、じっと彼を見た。


「……ねぇ、オドリック」


 彼がわずかに目を動かす。


「私は、貴方の事が好きよ。でもそれ以上に、音楽を楽しんでいるときの顔が、一番好き」


 オドリックは視線を落としたまま、何も言わなかった。


「ねえ、外に出ない? このままずっとここにいたら、気持ちが沈んでしまうもの」


 レティシアはそう言って立ち上がり、彼の手を軽く引いた。


「少し、歩きましょう。風にあたりに行くの。ね?」


 オドリックは一瞬だけレティシアの手を見て、それから立ち上がった。小さく頷き、彼女の横に並んだ。


 廊下の空気はひんやりとしていた。二人は無言のまま屋敷の裏庭へ歩き出す。


 扉を開けると、午後の陽が差し込んだ。


 庭木の影が地面に柔らかく伸びていて、風が通るたびに葉擦れの音が微かに聞こえる。


 二人は並んで歩き出した。無言のまま、小径を抜けて塀沿いへと向かう。


「……ごめんなさいね、勝手に連れ出して」


 しばらくして、レティシアが口を開いた。


「構いませんよ。むしろ……助かりました」


 足元には落ち葉が舞い、砂利を踏む音がささやかに響いた。庭の端を抜けて門を出ると、舗装された裏道に出る。馬車が通るほど広くはないが、人一人分の幅は十分にあった。


「行きたい場所があるの。もし嫌じゃなければ、付き合ってくれる?」


 レティシアが立ち止まり、少しだけ彼の方を見上げた。


「自分は大丈夫ですが、家の方が少し心配でして……」


 オドリックは周囲をちらと見回しながら、少しだけ眉をひそめた。


 そんな彼に、レティシアはいたずらっぽく微笑んだ。


「大丈夫よ。デートしてるって言えば分かってもらえるわ」


 その一言に、オドリックは一瞬きょとんとした顔をした。


「……で、デート……ですか?」


「そうよ。“婚約者と出かけていました”って言えば、きっと誰も文句は言わないわ。むしろ、真面目なあなただからこそ、心配する必要なんてないのよ」


 レティシアはそう言って、少しだけ彼の袖を引いた。


「ほら、こんなふうにして歩いてたら、それっぽく見えるでしょう?」


 からかうようなその声に、オドリックは口を開きかけたが、何も言わずに視線を逸らした。顔がほんの少しだけ赤くなっているのが、太陽の光のせいではないことは明らかだった。


「……やっぱり、からかってますね」


「ふふ、ちょっとだけ。でもね、本当に嫌だったら言って。無理には連れて行かないから」


 レティシアの声は、ふざけるようでいて、どこか優しかった。


 オドリックはしばし黙っていたが、やがて小さく息をついて言った。


「……いえ。行きます。貴女がそう言ってくれるなら」


「それなら決まりね」


 レティシアは満足そうに頷くと、再び歩き出した。石畳の上を鳴らす靴音が、昼下がりの静かな通りにやさしく響いた。




 ◇




 レティシアは迷いなく道を進んでいく。高台の屋敷から坂を下るにつれ、道は石畳になり、店や広場がちらほらと現れ始めた。


 けれど彼女の足は、人通りの少ない静かな方へ向かっていた。


「……このあたりに、教会があるんですね」


「ええ。小さいけれど、私の好きな場所なの」



 そう言って、レティシアは路地に入った。正面ではなく、教会の裏手へと続く道。


 錆びた鉄柵を開け、小さな庭へ足を踏み入れる。春の風に草花が揺れ、空気はひんやりと澄んでいた。


「ここよ」


 彼女が立ち止まった先。古びたフォルテピアノが、教会の壁際に寄せて置かれていた。屋根の張り出しが、ちょうど雨よけのように被さっていた。


「……ピアノ?」


 オドリックが小さくつぶやいた。


「教会の人が、子どもたちのために置いたらしいの。日曜学校が終わったあと、たまにここで遊ぶ子もいるみたい。でも平日は、あまり誰も来ないのよ」


 レティシアはピアノに近づき、鍵盤を覆う布をそっとめくった。木目の浮いた古い蓋がきしむ音を立てる。


「自由に弾いていいって。ここなら、誰にも文句は言われないわ」


 オドリックは無言でその場に立ち尽くしていた。


 かすかに風が吹いた。教会の壁に沿って植えられたラベンダーの葉が揺れ、微かな香りが漂ってくる。


「……まさか、こんなところに」


 かすれた声が、無意識に漏れた。


 彼は右手を伸ばし、ひとつ鍵盤を押す。ぽん、と鳴った音は、わずかに掠れていた。


 目を閉じる。もう一度、今度は両手を置く。音の配置を確かめるように、数音を順に押す。歪んだ音、遅れて響く音、それでも――この手が再びピアノと触れる事が出来るというだけで、胸の奥が静かに震えた。


 オドリックはぽつりと呟き、レティシアの方を見た。


「ありがとう。……本当に、ありがとう」


 レティシアは微笑み、少し離れた石の縁に腰を下ろした。


「弾いて。もしよければ……私、聴いていたいの」


 オドリックはしばらくのあいだ鍵盤の上に手を置いたまま、目を閉じていた。


 どこかで風が揺れ、枝の影が地面をかすめていく。教会裏の小さな庭は、静寂に包まれていた。遠くで誰かの笑い声が聞こえたような気もしたが、それもすぐに風の音に紛れていった。


 やがて、彼の指がゆっくりと動き始めた。


 ぎこちない始まりだった。調律は狂っていて、音の並びも少し歪んでいる。けれどそれこそが、オドリックという人間の形そのもののように、レティシアには思えた。




 ◇




 それから、二人は何度も街に降りた。


 その教会裏の庭は、いつしか二人だけの秘密の場所となった。用事を装って外出したり、偶然を装って出会ったりしながら、気づけば、週に何度も足を運ぶようになっていた。


 二人は少しずつお金を出し合い、フォルテピアノを修理していった。最初こそ苦労したものの、鍵盤は順に鳴るようになり、音は日に日に澄んでいった。


 そして、ある日ふと気づいたときには、二人だけの音楽ではなくなっていた。


 演奏の音が外へ漏れ、通りを歩く人の耳に届いたのだろう。最初は、裏門の隙間からひょいと顔を覗かせる子供。次に、通りすがりの老人が立ち止まり、帽子を取って静かに耳を傾けた。


 日が経つごとに、その人数は少しずつ増えていった。

 

 オドリックは、最初こそ戸惑っていた。


「……なんだか、落ち着かなくなりますね」


 そう言って演奏を途中で止めかけたこともある。


「大丈夫よ。あなたの音楽を、誰かが好きになってくれるのは、嬉しいことよ」


 彼女のその言葉に、オドリックは小さく息をついた。


「……嬉しい、ですか」


「ええ。私は、そう思うわ」


 オドリックは目を伏せたまま、しばらく黙っていた。けれどやがて、鍵盤に置いた手をそっと戻し、また弾きはじめた。


 その音は、最初こそためらいがちだったが、次第に風に溶けるように柔らかくなっていった。

 通りの奥から、足音がひとつ、またひとつと増えていった。


「……不思議ですね」


 演奏の合間に、オドリックがぽつりと呟いた。


「何が?」


「みんな、立ち止まってくれる。聴いてくれる。……こんなふうに、人が集まるなんて、思ってもいませんでした」


「ね。すごいことよ」


 レティシアがそう言うと、オドリックは少し黙って、鍵盤に目を落とした。


 やがて、ほんのかすかに口元が緩む。

 見慣れたはずの笑みなのに、どこか違って見えた。胸の奥が、温かい何かで満たされていく感じが。


 それがどれほど大きな変化か、彼女はちゃんと知っていたから。


 しかし、こんな小さな日常は――長くは続かなかった。




 ◇




 数ヶ月が経ったある日、教会裏の庭には、弾き始めたあの頃よりもずっと多くの人が集まっていた。


 日差しはやわらかく、風は静かだった。オドリックの音に誘われて、通りから人が足を止める。そのなかに、見慣れない男がひとり混じっていた。


 背筋の伸びた細身の体。落ち着いた色合いの上着に、胸元には金糸の刺繍。どこかで見覚えのある印章――王都のものだった。


 演奏がひと段落したところで、男がゆっくりと歩み寄ってきた。


「すみません。少し、話をしてもいいでしょうか」


 オドリックは戸惑いながらも頷いた。

 レティシアは黙ってそばに立ち、様子をうかがっている。


「私はルシアン・コルヴァンといいます。音楽学院で教鞭を執っております。……君の音を、ずっと聴いていました」


 オドリックが目を伏せる。


「上手な演奏をする者は数あれど……今日、私は久々に、心を動かされました。貴方には他の人とは違う才能があるようですね」


「……恐縮です」


「礼を言うのはこちらです。もし、君に学ぶ意思があるのなら――学院は、いつでも歓迎します」


 それだけ言って、男は懐から一枚の紙を差し出した。


「答えを急かすつもりはありません。ただ……音楽に生きるという選択肢があることだけは、忘れないでいてほしい」


 男は群衆に背を向けて静かに立ち去った。


 オドリックはふと、手に握らされた封筒に目を落とす。


 厚手の羊皮紙に、簡素な封。封緘はされておらず、差出人の名がひと目で分かるようになっていた。


 レティシアが隣から覗き込む。


「どこから……?」


 オドリックがゆっくりと封をめくる。


 《セリオール王立音楽院・育成部 ルシアン・コルヴァン》


 レティシアが、その一行を見た瞬間に息を呑む。


「……ちょっと待って。“セリオール”って……あのセリオール王立音楽院のこと!?」


 オドリックは少しだけ目を見開いた。


「ご存じなんですか?」


「ええ、もちろん。王都で最も由緒ある音楽機関よ。……貴族でも、入るには推薦状と厳しい審査が必要で、しかも“育成部”って……特別枠じゃない」


 声が少しだけ震えていた。驚きだけではなく、混じり合った感情がそこにあった。


「推薦というより――選ばれたってことなのよ。才能を見込まれた人にしか声はかからないの」


 オドリックは視線を下げ、再びその封筒を見つめた。たった数行の文字なのに、触れている指先が、どこか落ち着かない。


「……自分が、そんなふうに見られていたなんて、思ってもいませんでした」


 そう呟いた声は、ほとんど自分に言い聞かせるようだった。


 レティシアは黙って頷き、それからそっと便箋の下に目をやった。


「……これも、読んだ?」


 彼女の指が指し示す下部に、小さく追記のように書かれていた。


『なお、入学する者は、音楽への専心を妨げる私的交友を断ち、規則に従い、全寮制の生活に馴染むこと』


 その一文を読み終えたオドリックの目は、しばらく動かなかった。

 レティシアもその場から動く事ができなかった。


 交友関係を断つ、つまり――自分たちの関係も、終わらせなければならないということだった。




 ◇




 翌日の昼前、レティシアはひとりでオドリックの屋敷を訪れた。


 門をくぐり、石畳の道を進むにつれて、胸の奥がひどくざわついてくる。


 昨日のあれから、彼はどうしたのだろう。

 父親に話したのか、それとも――。


 扉をノックすると、いつもの執事が現れ、目を丸くした。


「……レティシア様。これはまた……」


「急にごめんなさい。少しだけ、お話できればと思って」


 執事は戸惑いながらも案内してくれた。

 やがて辿り着いたのは いつもと変わらないあの書斎の前だった。


「オドリック様は、今朝からこちらでお過ごしです。……少々、気の塞いだご様子で」


「そう……ありがとうございます、案内してくれて」


 レティシアは扉の前に立ち、軽くノックした。


 すぐに、微かな気配。けれど声は返ってこない。

 もう一度ノックして、そっと扉を押す。


「オドリック? 入ってもいいかしら」


 彼は窓辺に座っていた。音もなく、ただ景色を見下ろしている背中があった。

 静かな部屋に、レティシアの靴音だけが響く。


「突然でごめんなさい。気になって……様子を見に来たの」


 オドリックはすぐには振り返らなかった。

 その肩越しに見える横顔は、どこか遠くを見るようで、どこか見ていないようで。


「……ありがとうございます。お気遣い、感謝します」


 それは、まるでよそよそしい言葉だった。

 いつもより少し低い声でそう答えたあと、彼はようやくゆっくりと立ち上がった。


「何も言わずにいて、すみませんでした」


「……ううん。でも……やっぱり、ひとりで抱え込んでるんでしょう?」


 オドリックは一瞬だけ口を開きかけて、何も言えず、微かに笑った。


 レティシアは、少しだけ視線を落とす。彼が何も言わなくても、だいたい察しはついた。


「隠しごとができるほど、あなたは嘘がうまくないわ」


 レティシアの微笑みは、どこか寂しげだった。


「私……ちゃんとわかってるのよ。あなたが迷ってるってことも、本当はもう答えが出てるってことも」


 オドリックは言葉を失ったまま、レティシアを見つめた。


「……それに、あなたの夢には、私が邪魔になってしまうんでしょう?」


 ようやく、オドリックが小さく声を絞り出す。


「違う、そんなつもりじゃ……」


「わかってるわ」


 レティシアは、遮るように言った。オドリックの言葉を否定したかったのではない。

 ただ、その躊躇いに、彼の優しさが滲んでいることに気づいていたからだ。


「……でも、ね」


 彼女は一歩だけ彼に近づいた。


「あなたが悩んでる理由が、私のことなら……それは、嬉しくもあるけど、少しだけ苦しいの」


 オドリックの目がわずかに揺れた。けれど、何かを言いかけた言葉は、彼の喉の奥で溶けてしまったようだった。


 レティシアはそっと続けた。


「だから私は……あなたに行ってほしいの。あの場所で、音楽に向き合ってほしい。あなたが誰にも縛られず、最も自由である場所へ」


 静かな沈黙が、二人の間に落ちる。


「私、きっとあなたにとっての“支え”になりたいって、ずっと思ってた。だけど……もしかしたら、今の私は“重い”のかもしれない。あなたの自由を奪う存在になってしまってるかもしれない」


 オドリックが小さく首を振る。


「そんなこと、ない……」


 けれどその声は、とても弱かった。


「分かってる。あなたが優しいことも、本当は私のことを思ってくれてることも。だからこそ、今ここで、私が言わなきゃって思ったの」


 彼女の声はかすかに震えていた。けれど、その瞳は真っ直ぐだった。


「私たちの約束が、誰かに決められたものでも……私は、あなたと過ごした時間に嘘はなかったって、そう言える。でも――」


 言葉が詰まる。


 これ以上言葉を重ねれば、どちらかが崩れてしまう。


 レティシアは唇をかすかに噛んで、それでも微笑んだ。

 それは、泣かないための笑みだった。


「あなたがここを離れるなら、私はきっと寂しいと思う。でも……後悔はしないわ。だって、あなたの音を初めて聴いたあの日から、ずっと願ってきたものだから」


「願い……?」


「ええ。あなたが、自分のやりたい事で生きられるように」


 オドリックの喉が小さく鳴った。言葉が出ないのか、それとも堪えているのか。

 その静けさの中で、レティシアは一歩、彼に近づいた。


「ねえ、覚えてる? 最初に聴かせてくれたあの曲。まだ途中までしかできてなかったわよね」


 オドリックは小さく息をのんだ。

 レティシアは彼の目を見つめながら、少しだけ声を落とした。


「――いつか、貴方が本当に誰かのために弾けた時に、続きを聴かせてほしいの」


 オドリックはわずかに目を見開いた。


「……誰かのために?」


「うん。自分のためでも、義務のためでもなくて。

 その音が、誰かの心に届いたとき――そのときが、きっとあなたの“音楽”になると思うの」


「……そんな日が来るでしょうか」


「来るわ」


 レティシアは迷いなく言った。


「だって、あなたの音は優しいもの。きっと誰かの支えになれる」


 オドリックは小さく息を吐いて、うつむいた。

 けれどその表情には、ほんのわずかに光が戻っていた。


「……もし、本当にそんな日が来たら」


「ええ。その時は、教えて。そして――あの曲の続きを聴かせて」


 レティシアの声は静かで、けれどまっすぐだった。

 オドリックはしばらく彼女を見つめ、それからゆっくりと頷いた。


「……約束します。必ず」


 レティシアは小さく笑った。

 涙がこぼれそうになったけれど、ぐっとこらえて、ただその笑みだけを残した。




 ◇




 翌朝、オドリックは姿を消した。

 夜明けとともに出たのか、それとももっと早く、まだ星が残る時間だったのか。

 誰もその瞬間を見ていなかった。


 彼の部屋は整えられたままで、寝具にも手をつけた跡がない。

 机の上にあった楽譜も、本も、すべて消えていた。


 ただ、窓がわずかに開いていて、朝の風がカーテンを揺らしていた。


 屋敷では、すぐに騒ぎになった。

 彼の父は激しく怒り、母は信じられないように呆然と立ち尽くした。


 使用人たちは屋敷の中庭から馬小屋、町道まで探し回ったが、どこにもオドリックの姿はなかった。


 まるで、音もなく消えたようだった。


 その知らせがレティシアのもとに届いたのは、昼を少し過ぎた頃だった。

 窓際の椅子で紅茶を冷ましながら、ぼんやりと外を眺めていたとき、

 慌ただしい足音とともに侍女が駆け込んできた。


「……オドリック様が……いらっしゃいません」


 その言葉を聞いても、レティシアはすぐには反応しなかった。

 ただ一瞬だけ、まぶたを閉じて、小さく息を吐いた。


「……そう」


 それだけを答えた。

 声は驚くほど落ち着いていた。

 まるで、最初から分かっていたかのように。


 紅茶の表面に映る自分の顔を見つめながら、

 レティシアは静かにカップを置いた。


 窓の外では、陽の光が柔らかく庭を照らしている。


 ――行ったのね。


 言葉にはしなかったけれど、心の中でそう呟いた。

 昨日の彼の目を、最後の笑みを、思い出す。


 止めなかったことを、後悔はしていなかった。

 あのときの彼の顔を見たら、誰だって分かる。

 もうここに留まれない人の顔だった。


 レティシアはそっと立ち上がり、窓を開けた。

 春の風が吹き込み、カーテンがふわりと舞う。


「……行ってらっしゃい、オドリック」


 その言葉は風に溶け、やがて庭の向こうへと消えていったのだった。


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― 新着の感想 ―
薄暗い小さな部屋で、膝を抱えて縮こまっていた彼の手に触れ 明かりをともしたランプで、そっと出口の扉を照らす彼女。 彼を誰よりも理解し、その心に寄り添い続けた 柔らかな優しさがとても素敵なお話でした。…
今は道が分かたれてもいつか交わる日がくることを願っています。 もし交わることがなくてもお互いの幸いを願うことができる2人が幸せでありますように。
続きをっ(号泣)
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