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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ニートは異世界でもチートじゃない

作者: 有機野菜

思いついてパパっと書いたやつ。そのうち消すかも。

最初に言っておきたいことがある。努力して生きろ。


俺のように何もしないまま異世界転生?転移?したニートは人権なんて存在しない。いや、本来はあるものだけれど神のような存在に嫌な顔されたんだよね。


「はあ?虐められた訳でもない、病気でもない、ただゲームが楽しいだけでヒキニートになって45歳?

資格もない、特技もない、常識もない、義務教育終えてない、書いてる小説とやらも十番煎じな上に売れたいことしか考えていないクソザコナメクジ!

両親健在、家庭を持ってる姉と弟に金を無心、マシなことと言えば犯罪をしてないこと…人間として必要最低限じゃねぇかよ!

それが酒の飲み過ぎで体壊してお陀仏したから異世界転生してチート使ってハーレムとか夢見過ぎだろ!!」


ボロクソに言われた。本当に傷付いた。


神のようなサムシングはペッと唾を吐いた。


「俺のような慈悲深い存在がチート持たせて異世界転生させるのは、それ相応の経歴がある奴だけなの。稀に悪趣味な奴もいるけど、俺は真っ当に人間の味方だからね。

おまえは何もない。加算するべきポイントがない。マイナスしかない。でも異世界転生してチートは持ちたい…それなら、これからプラスになるしかねぇだろ」

「ここから入れる保険があるんですか!?」

「あるよ。ようは、ここから不幸になりゃいいんだ」


それから俺の地獄ツアーが始まった。




俺の不幸とは「これから転生してくる人のためのテストプレイヤーになること」だった。嫌な仕事だね。


「死ぬー!!!」


棍棒を持ったゴブリン達に追いかけられて俺は必死に逃げていた。涙と鼻水を垂らしながら逃げていると、前方に武装したゴツい冒険者を見つけた。


助けてくれると思うじゃん?アイツ、俺をチラッと見たら無視を決め込みやがった。


「あ゛あ゛あ゛!!!」


この異世界転生の唯一良いところは、俺の死が確定すると早めにブラックアウトするところ。最初に背中ぶっ叩かれた所で意識がなくなったわけだが、普通に初撃がアホほど痛いので何回も経験はしたくない。



次の世界を決める運命のロード時間を待ちながら、俺は涙を流した。


テストプレイヤーを始めて知ったことがある。まず、45歳のキモオタデブヒキニートを快く助けてくれる人はあまりいない。奴らも人の子なので、助けるなら女子供がいいのだ。美女と2択になってみろ、確定で見捨てられるぞ。


めちゃくちゃ強い冒険者か、あるいは駆け出しキラキラな子たちは助けてくれる率が高いんだけど、俺がキモオタデブヒキニートだと解ると露骨にガッカリした顔をされる。そりゃそうだ、見返りなんもないからな。



こんな俺でも真っ当に働こうと思って、頑張ったこともあるんだよ。それこそスローライフ系の世界に転生した時は畑なんか作ろうとしたわけ。


死因知りたい?餓死だよ。農業ってそんな楽にできないの。水道がないから水を汲みに行かなきゃならないし、その水を運んでる間に農業やる体力なんて無くなってるの。ヒキニートだから。そんな状態なのに肉がないんだぞ、飢えるだろ。


「次の世界は現代日本に近いといいなぁ」


テストプレイヤーを何回もやってわかったことだが、中世とかの世界はクソだ。俺の立場的に。なにせ奴隷にすらなれないから乞食になるしかない。


まだ現代日本に近い世界だと残飯が美味しいからマシなんだ…。ホームレス生活でも。まあ、半グレチルドレンのストレス解消に付き合わされてお陀仏しましたけどね。つらっ…。


「本物の異世界だけはヤダー!」


このクソテストプレイに意味はあるのかと思ったが、3回目にして俺は理由を知った。惑星の殆どが海に沈んでしまった世界では半魚人がデフォだったからね。こんなふうに、そもそも人間が生きるのに向いていない世界があって、それを見つけるためのテストプレイなんだ。


俺の屍を越えてゆけー!徳を積んだチートキャラ達よー!俺の犠牲あっての異世界転生だぞー!


「なんで子供の頃に頑張らなかったんだろ…」


いや、せめてアルバイトをやれる程度になってれば良かったな。ていうか、異世界とかクソだなと思った。普通に現代日本のがいいわ。


上水道も下水道もしっかりしてるし、ガスで火が使えるし、ご飯美味しいし、ネット使いたい放題だし。


色々行ったけど異世界はだいたいクソ。人間が生きていく環境じゃないのはまだマシで、そこそこ文明発展してるのにご飯がクソだとやる気でない。


料理チートできるだろって?できるわけねぇだろ、油も肉も貴重品だし、味のないクソ野菜しかないから。ていうか料理技術ねえわ。親に寄生してるヒキニートだぞ。


「あー、生きるのにイージーモードな世界ってねぇんだなー。あったけどクソだったなー」


一回だけ働かなくていい世界に転生したことがある。仕事は全部ロボットがやってくれるから、人間は何もしなくていい世界。


何があったと思う?知らないうちに衰弱死していた。


「生きるってつれぇー!」


人間の体と言うのは、使わないと死ぬらしい。人というのは寝ているだけの生活になると体が「こいつ死んだんじゃね?」て勘違いして強制終了する。怖いね。


点滴に繋がられるから食べることもできず、仕事もないから責任はなく、やることといったら排泄と睡眠だけ。娯楽はあるけど刺激がない生活の前ではただ退屈なだけだった。食事が点滴だからスポーツができる体力もないしね。


「もうやだ。おうち帰りたい」


思ったより好き勝手に生きられない。本当に辛い。一回だけ地球人なら無条件でスーパーマンになれる世界に行ったことがあるけど、そこも地獄だった。


力加減ができないから触れるもの全てを壊す怪獣になってしまってな、この世の全てを絹ごし豆腐と思って活動しなくちゃいけなくて大変だった。ストレス凄かった。


それでもヒーローになれるだろうと思ったけど破壊のほうが多くて、最終的に寝込み襲われて海に投げ込まれたわ。溺れることが確定したらブラックアウト。なんかもう涙が出てきたよね。ガリバーは偉大だったんや。


「一度でいいから好き勝手したいけど…それしたら地獄が加速するしなあ」


死が確定したらブラックアウトして逃れられるだけ俺はマシだという。実は俺以外のテストプレイヤーに遭遇したこともあるが、彼は一度ハメを外して盗みなどをしたためにブラックアウト機能が無くなったらしい。


異世界はクソだ。異世界の死因は真っ当じゃないものもある。おぞましい方法で三日三晩苦しんだこともある彼の話を聞いて、俺は真っ当に生きようと決意した。


「もう異世界ヤダー!!!」


あんなに憧れた転生は最悪なものでしかない。なんの努力もしてこなかった俺は知識チートもできない。誰かが強過ぎてニューゲームを用意してくれるのを待つなんて愚かだったんだ。




もう転生したのが何回目か分からなくなったな、と考えていたら景色が明るくなった。ロード画面終わって新しい世界のおでましか…と思っていたら、目の前にあの神のようなサムシングがいた。


「おまえの苦難が規定値に達したぞ。おめでとう」

「俺の苦難が…」

「おまえには二つの道がある。一つは本当の意味で異世界転生すること。赤ん坊からやり直せるし、それなりの能力も与えよう」


前だったら飛びついたかもしれない条件に、俺は首を横に振った。


「もう一つは?」

「人生のやり直しだ。おまえがチートしてハーレム作るのに十分なエネルギーを巻き戻しに使う。おまえが何を成し遂げても世界が変わらないように調整するがな」


どういうことと首を傾げると神らしきものは答えた。


「バタフライエフェクトって知ってるか。小さなものが後に大きくなるSFでよくあるやつだ。アレが起こらないようにする」


仮に俺が戦国武将だとして、時間をいくら巻き戻しても織田信長を助けることはできない…ということだろう。世界を変えるような事件は無かったことにならない。


「それでも、元の世界に戻りたいです」

「いいだろう。おまえを引きこもりを始める少し前に戻してやる」

「いいんですか!?ヤッター!!!」



俺は引きこもる前に戻れたので、そこから頑張って勉強をした。友達も作った。そのうち好きな人ができたけど振られたりして日々を送った。


大きな天災が起きることも、いたましい事件が起きることも、全て知っていたけど何もできない。俺の起こしたバタフライエフェクトが何になるかわからないからだ。


そのうち、俺は小さな会社に就職した。そこで細々と生きていたら同僚と良い雰囲気になった。


二人でベロベロに酔った日のこと。


「俺ねー!異世界転生したことあるー!」

「マジでー!?私もー!!」

「一番辛かったのは虫だらけの世界に行ったことー!」

「アタシ、男だらけの世界に行ったときー!」


二人でガハガハ笑ってたんだけど、改めて話してみたら二人とも似た経験をしていることがわかった。


彼女も俺と同じキモオタデブヒキニートの45歳だったらしい。今はデブじゃなくて普通サイズだけどね。


「異世界はクソだー!」

「もう二度と行くもんかー!」


こうして俺達は結婚した。


二人でゲームしながら子育てするのが楽しいので、ガチでもう異世界には行きたくない。

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― 新着の感想 ―
この罰をクリアしたとして、 生きる=理不尽って刷り込みが完了してるから、 そこからもう一度生きるのごめんだな…… 生き直すことを選んだだけ、すげぇ偉いな……
 序盤の神のような何かしらの存在の言葉にもっともだと思いつつ、テストプレイヤーとして数々の悲惨な目に遭う主人公が気の毒になってきたところで、やっと幸せを掴めたことにほっとしました。自分の今いる世界で地…
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