4.章 魔王編外伝
4.章 ゴムラ地方の魔蓄管工場への襲撃
今世紀最大の大発明、魔畜管【マジックシリンダー】。
今年初めの価格は、3,500 fだったものが、夏を過ぎた辺りから急激に高騰しだし、今や価格は6,000 fに迫る勢いだった。
今日、魔畜管は便利な魔道具の中に大体入っており、この魔力電池を内蔵する事によって、魔力の無い人間にも便利な魔道具が扱えることを可能にしていた。
そんな、人間の生活に欠かせない必需品が、価格高騰となり、庶民の生活に直結する大問題になっている。
それというのも、去年の年末から始まった、マジックシリンダー工場への魔族からの攻撃を受け、多数の地方工場が壊滅したためだった。
♢
魔物は人間型に近いほど弱く、人間に近い行動習慣を示す。
人間型の魔物の知性は高い。しかし、それは魔物として褒められた美徳では無く、弱い小物特有のずる賢い特徴としてあまり好まれていなかった。
むしろ頭が悪くても強い魔物が尊敬され、愚直でも生き残る純粋な強さに、魔物達は憧れを抱いていた。
♢
魔大陸にほど近い、東ソドムの貧民街。路上の一角に、そんな強い魔物に憧れる兄弟がいる。
「見ろよ!兄ちゃん、ブッシュオークが街中まで出て来てる!」
魔物の子供レムスは、興奮気味にブッシュオークの目撃を兄の魔物に報告してくる。
「凄いなぁ、あの爪!あの牙!強そうだなぁ」
兄の魔物ロムルスは面倒くさそうに弟を一瞥したきり寝たフリをしている。
「ねえ起きて、兄ちゃん!
どうして、俺たちは、こんな弱くて人間みたいな見た目で生まれたんだろう?」
「うるさいな!
タダでさえ、腹が減ってるっていうのに。これ以上、騒いで腹を減らすな」
兄の魔物ロムルスは、ここ何日かまともに食べ物にありつけず、酷くイライラしていた。
「ねぇ、教えておくれよ!
どうして、こんなに魔物でも違うんだい?」
兄の方の魔物は、ぶっきらぼうに答える。
「そんなの知るか!
死んだ母ちゃんから聞いた話だと、大昔、人間と魔物は近い種類の生き物で、途中から魔物と人間に分かれたんだ。
だから、人間でも魔力が使える奴もいるし、魔物でも人間みたいな奴がいるんだそうだ!」
兄はそう一息に言い終えると、背中を向けて布団をかぶった。
「ふうん。兄ちゃん何でも知ってるんだね」
仕事終わりの午後。兄弟は、窃盗団の胴元に今日の成果を渡す。
兄弟はこうして盗みを働き、わずかばかりの日銭を稼いで暮らしていた。
「なんだ、スナック菓子の空き袋しか、持ってこられなかったのか。
こんなんじゃ何も分けてやれないな」
胴元はそう言うと、兄弟に空き袋を投げてよこす。兄弟は、風に飛ばされないよう必死に散らばった袋を拾い集め、大事そうに腕いっぱいに抱えて帰った。
風の強い日だった。
嵐の真夜中、雨水とスナック菓子の袋に残るカスを舐めて、兄弟は今日の飢えをしのぐ。
「レムス、早く寝ろ」
兄は弟に声をかける。兄弟は、コンテナのような巨大なゴミ箱で寝泊まりしていた。
弟のレムスは、ゴミ箱のトタンに落ちる、ぽつんぽつんという雨音に気を散らされて、どうにも眠れない。
「兄ちゃん、いつになったら普通の家で寝られるようになるんだろうね」
「さあ。くだらねえ事考えてねぇで、さっさと寝ろ」
♢
貧民街、魔物の兄弟は、喧騒のさなかの往来で、裏社会の追っ手から逃げていた。
魔物の兄弟はあまりの空腹から、本来なら決して狙わない、暗黒市場で盗みを働いてしまったのだ。
兄弟は、裏社会の魔物に追いかけられ、四辻を全力で走り抜ける。逃げる途中、往来の真ん中で弟のレムスは盛大にすっ転んだ。
「兄ちゃん!逃げて」
弟が転んだことに気づき、兄のロムルスはもう一度逃げた道を戻ってくる。
「馬鹿やろう!だからヘマするなって言ったろう」
「えへへ。あんまり腹減り過ぎて、ふらついちゃったんだ」
「どうでもいいから、早く立て!走るぞ!」
追い詰められた兄弟は袋小路に逃げ込み、追っ手に行く手を塞がれてしまった。
「お前ら、俺らのシマで盗みを働いたんだ、どうなるか分かってるんだろうな?」
裏社会の用心棒たちが腕を鳴らし、兄弟に近づいてくる。2人はこれから訪れる、最悪の未来に絶望するのだった。
あとがき
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