90章 魔法学校プロローグ
87.章 プロローグ
猛スピードの蒸気機関車が、蒸気をたなびかせ汽笛を響かせながら、田舎駅のホームに入ってくる。ようやく、マジック・マウント行きの列車が、ルーラル駅に到着したのだ。
ここは『ポート・アンド・マジックマウント鉄道』の中継駅。車両のドアが開くと乗客の雑踏が交錯する。慌ただしく人が通り過ぎ去り、ようやく落ち着くと駅舎のベンチから1人の少女がスッと立ち上がった。先ほどまで、雑談をしていた車掌は、静かに頭を下げて彼女を見送る。
「行ってきますね」そう言ってカリナは客車に足を踏み入れていった。
客車の内装は金と深緑で装飾され、どこか古めかしい印象を受ける。
触り心地の良いビロードの座席に腰を下ろすと、スプリングの弾力が、体重を押し返した。
座席の横には大きく開いたガラス窓、木目の天井にはアンティークランプが揺れている。
蒸気機関車は、大きな汽笛を一つ響かせると、蒸気の音を残して走りはじめた。
カリナの目線の先には、車窓に流れる木々。それは、猛スピードで後方へと流れていく。
これから不安と期待の入り混じった、新しい魔法学校への旅路が始まるのだった。
──「魔法を教えてほしい?」
2ヶ月前。
カリナは思い切って、そう師匠のカシウスに切り出していた。
「はい。そろそろ、わたしに魔法学を教えてください」
「んー。……正直、カリナの魔法の実践経験が無さすぎて、今教えられる事もないんだよね」
カリナは、いい加減、こきばかり使われて、一向に魔法を教えてくれない、この師匠に不満が溜まっていた。
「そうだなあー。」
「じゃ、魔法学校にでも入学する?」
「……えっ!?」
「……うん。それがいい。推薦状書いてあげるから、マジック・マウント魔法学校へ行ってきなさい」
師匠の大魔法使いカシウス・オルデウスは、これでうるさい弟子にとやかく言われず、女の子の所へ遊びに行ける。心密かに思い、この思い付きに小躍りしていた。
しかし、そんな師匠の心の内を見透かしてか、カリナはこの邪な企みを見抜いている。
「そんな事を言って、わたしをここから追い出す算段じゃないんですか?」
それを聞いて師匠の大魔法使いは、内心ぎくりとしたが何気ない顔をして目線をそらす。その様子にカリナの疑念はますます深まった。
「先生……。なにか誤魔化してませんか?わたし、騙されませんから!」
カシウスは内心慌てたものの、ひとつ咳払いしてあらたまり、こんな重大情報を切り出した。
「──じゃあ、その学園に魔王がいるかもしれない。と言ったら………どうする?」
「!?」
カリナは一瞬驚いて、すばやく聞き返した。
「魔王様が……!それは……それは!?本当ですか?!」
カリナはそう言いながら、師匠カシウスの襟元を強く握り締めた。
「ぐ……苦しい……」
「……い、行きます!!わたし、その学園に行かせて下さい!!」
カリナはそう言って、ぐわんぐわんと師匠を揺さぶる。
「カリナちゃん、ずいぶん前のめりね。……あくまで噂、だから……」
師匠はそう言いながらゴホゴホと咳き込んだ。それとは対照的に、僅かばかりの希望を感じてカリナの顔は思わずほころんだ。
『もしかしたら、魔王様に会えるかもしれない……!』
「──とりあえず、手続きはしておくから……」
「先生!ありがとうございます!」
嬉しそうな弟子の様子に、カシウスはため息を吐く。
『なんとも複雑な気分だな……』
師匠は、密かに思うのだった。
あとがき
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