80章
80章 罪と罰
カリナはえずきながら、気丈に司祭のインベルに対峙する。
「司祭さま…。」
カリナは涙を、浮かべて、訴える。
「どうして、こんな…事されたのですか…?」
そうして司祭に向かって呼びかける。
不思議なことに─。
カリナの悲痛な訴えが、司祭の様子に、なにがしかの変化を起こした。
「……っ…僕は…っ…!」
カリナの言葉を受けて、司祭インベルは頭を抱えて苦しむ。
「ゔっゔっ………。……僕は…一体っ…。」
「!!!」
その様子に、驚くカリナ。
「司祭…様……大丈夫…で…すか?」
カリナは心配そうに、司祭インベルの様子をうかがう。
「なーんて!!!…んな訳ねーだろ。」
一転、司祭は薄ら笑いを浮かべ、言い放った。
「こっちが素なんだよ。ばぁーーーか!!」
司祭は、口調と人格が豹変する。
そして、あははと心底楽しそうだ。
「ホント、君がロザリオを受け取ってくれて、助かったよ。」
「アレはね。君達のアジトへ足取りをたどるための、
僕の痕跡つきの魔石だったんだ。」
「君の案内のおかげで、思ったより早くヤツの拠点を見つける事が出来たよ。」
カリナは、その事実にショックを受ける。
「ふふ……手強かったよ。ヤツひとりの時は、細心の注意を払って、痕跡を残さずに暮らしていたから」
「まあ、弟子なんて取るからこうなる。」
「下手なスケベ心が招いた罰だ。」
司祭は、カリナが打ちひしがれている様子を見て、こう言う。
「どうも、コイツのことを勘違いしているようだが…」
司祭は、魔導士を冷ややかに一瞥する。
「こいつは、僕と組んでハルトをはめ、悠久の時に封印したんだ。」
「こんなクズに、情けをかけてやる必要は無い。」
司祭は吐き捨てるように言う。
カリナはかまわず、師匠のそばに駆けつけると、司祭との間に立った。
そうして、瀕死の先生を庇い背中に隠すと、司祭インベルと対峙する。
「それでも、先生は、殺させません。」
「ふうん。……勇敢だね。」
「でも手が震えている。…怖い?」
『…なにか、考えなくちゃ。』
カリナは必死で考える。
「死ぬのは怖くないの?」
カリナは司祭から問われ、こう答えた。
「一回死んだので、その分慣れてます…」
その言葉に、司祭は思わず吹き出す。
「…ぷ。あはははっ。やっぱり君面白いね」
「僕の秘密のお城へ、連れて帰りたいな」
司祭はそう言いながら、カリナの髪に触れる。
「もし君が、僕のだけのものになるなら…」
そうして髪にキスすると、カリナの耳元で囁く。
「そうしたら、ツカサは見逃してあげるよ?」
『えっ…』
その提案に、心が揺れる。
そこへ魔導士が、話しに割って入る。
「カリナ、騙されるな。コイツも私同様のクズで、嘘つきだ」
カシウスの魔法詠唱が聞こえる。
「……転移魔法、デジョン、」
「…えっ?」
そう、言うが早いか、カリナは転移魔法の光りだけを残して消える。
魔導士カシウスが、高速詠術を使い、転移魔法でカリナを、逃したのだった。
『クソ…あまり遠くに飛ばせなかった…。』
「…彼女を転移魔法で逃したか。」
「ずいぶん、カッコいい事したな。」
司祭は言いながら、魔導士に詰め寄る。
「だが、魔力の無駄遣いをしている余裕があるのか?」
司祭の眼に、殺意がこもる。
「まあ、自分が転移しなかった事だけ褒めてやる。」
落ちた眼鏡が踏みつけられ、割れた破片がパチッと砕けた。
「もっとも、これだけ実力差があれば、逃げても無駄なのは分かっているだろうけど。」
眼前の司祭は、カシウスを見下ろす。
「ご褒美だ、苦しまずに死ね。」
あとがき
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