70章
70.章 夜半
暗闇の森は、しんと静かで、遠く星はきらめき流れた。
ほうほうと闇夜のフクロウは瞳だけを、光らせ鳴いている。
魔法使いの屋敷は、自室から灯りがもれ、
魔導士が、まだ起きていることわかる。
ちょうど、厠に立とうかと、廊下を歩いていると、カリナと行き当たった。
「カリナ、まだ起きてたんですか?」
師匠は弟子に声をかける。
「今、寝るとこです。本読んでると夜更かししてダメですね。」
魔導士は、カリナの鼻にかかった声が気にかかる。
「………。」
よくよく見ると、目を擦った様に赤い。
「もしかして…泣いてた…?」
言ってから、これは言わなければよかったと、魔導士は後悔した。
「……そんなこと、ないですよ……」
「………目が赤い…から。」
「…あ…感動的な…本だったので…その…」
「それ、魔道書でしょ」
「………え…えっと…。」
カリナは、やりとりをしながら、
なぜか自室に向かう廊下を通してもらえない。
カシウスは、カリナの肩を掴み、その指先を鎖骨まで滑らせる。
親指で、アゴ先をなぞりながら、
カリナにキスしようとするが、やんわりと拒否された。
「…やめて下さい。そういうのは、夜のお店へ行って下さい。」
「……悪い、そんなつもりじゃなくて、」
そう言うと、何かを覚悟したように、話し始める。
「確かに君は、絶世の美女でも無いし、容姿は十人並みだと思うけど、
…その…万人受けしないけど、その代わり、マニアに愛されるというか…」
カシウスは、自分の気持ちを正確に話そうとして、言わなくてもいい事柄まで、なぜか正直に話してしまう。
話しを聞きながら、カリナの表情はだんだん暗くなる。
「……凄く心惹かれる訳ではないけど、気になるというか、特定の奴には刺さるタイプというか……」
魔導士は言いにくそうに、言葉を絞り出す。
「……私はいいなと思ってる。…その好ましいし、自信を持っていいと思う……」
いざ褒めようとすると、照れて上手く言葉が出てこない。
話しを聞いたカリナは、始めこそ驚いたもののだんだんと、怒りが湧いてくる。
「別に、同情はいらないです。哀れまれると余計惨めになるのでやめて下さい。」
「それに、男性に相手にされないからと言って、安売りしたいワケじゃないです。」
カリナも、自身の言葉があまりに酷く、話すのをやめたいのだが、
なぜか暴言が止まらない。
「わたしを馬鹿にするのもいい加減にして欲しいです。」
「先生のそういうところ、大嫌いです。」
「2度とこういうのは止めてください。」
そこまで言うと、カシウスに真顔で見返される。
「…………悪かった。」
カシウスは力無く、そう言った。
「この事は忘れます、おやすみなさい。」
そう言って、カリナは自室に消えた。
あとがき
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