66章〜67章
66.章 大魔法使いのアジト
「ここが先生の拠点ですかぁ…」
カリナと、その師匠、魔導士カシウスは、森の奥に隠れるように建つ、大きな古い屋敷の前にいる。
この屋敷にたどり着くまでに、敵や侵入者を防ぐための、さまざまなな仕掛けを通らなくてはならない。
そのため、カリナ達がここに辿り着くまで、半日はかかってしまった。
そうして、師匠のカシウスはカリナにある物を渡す。
「はい、バケツにほうき!」
そう言って、カリナは掃除用具と、灯りとりのろうそくを渡される。
「…えっ?」
そして師匠のカシウスは、カリナにこう告げる。
「…という事で掃除です。なんと言っても、見習いはまず掃除しないとね。」
「あんまり汚いから、引越ししようかと思ってたとこだったからラッキーでした。」
カシウスはそう言うと、転移魔法の詠唱をはじめる。
「私は遊びに行ってくるので、後はよろしくー♪」
「…えっ!」
「じゃ、ばいばーい♡」
「えぇぇぇ…!!」
師匠は思い出したように、付け足す。
「…そうそう、危険な魔具があるので、あんまり色々さわらないでね♡」
そう言い残し、魔導士の師匠は、転移魔法でどこかへ行ってしまった。
「………。」
残されたカリナはとりあえず、恐る恐る、屋敷に繋がる立派な門をくぐる。
「うーん。汚屋敷…」
庭は荒れ放題…。
屋敷の中は蜘蛛の巣だらけ…。
廊下は本が横積みされて、うず高くつみあげられている。
そして、それらの上には分厚い埃が積もっていた。
炊事場は食器なのか生ゴミなのか、判別不能なゴミが、部屋いっぱいはみ出している。
それらは、異臭を放ち小蝿が飛んでいる。
廊下は薄暗く、ろうそくの灯りを嫌って、虫たちが逃げ惑っていく。
カリナは、お化けが出そうな、屋敷を勇気をもって探索していく。
なんとか、最後の部屋まで辿り着くと、埃と共に、窓をいっぱいに開け放った。
「立派なお屋敷なのに、この汚さ。本当は誰の物だったのかしら?」
夜会ができそうなホールも、灯りのろうそくで照らすと、天井は蜘蛛の巣だらけ…。
大きな窓は、埃で曇り景色も見えない。
真紅のビロードのカーテンはズタズタに破れている。
「こんな時、お手伝いしてくれる、小動物がいればいいのに…」
そう言って、ため息を吐く。
不遇なお姫様が下働きをするような、
メルヘン気分で浸っていたいが、そうもいかない…。
「やりますか!」
そう言いながら、腕まくりをすると、裏の井戸から水を汲んでくるのだった。
65.章 掃除
魔法使いの弟子となった、カリナ•オルデウスが、
白い三角巾、エプロンをつけ、拠点の屋敷前をホウキで掃いている。
そこへ、娼館でさんざん遊んできた、魔導士カシウス•オルデウスが帰ってくる。
師匠は上機嫌でカリナに話しかける。
「感心、感心…!ちゃんと掃除しているね。」
カリナは師匠を見ると、急に怒りが湧いてくる。
そうして今にも、手にしたホウキで師匠に殴りかかりそうだ。
「先生っ…!!どうして、3日もいなくなるんですか!?
……死んだかと思って心配していたんですよ!」
カシウスは少し驚いて、聞き返す。
「もしかして…心配してたの?」
「あたり前じゃないですか!…3日ですよ!3日!」
カリナはぶちぶちと、文句を言っている。
魔導士は苦笑しながら、弟子をなだめている。
「まぁまぁ。…そういえば、屋敷はどうなった?掃除、ひとりで大変だったんじゃない?」
「そうですよ…。ひとりで頑張ったんですから!」
魔導士は磨かれたドアノブを引くと、屋敷の中にはいってみる。
屋敷の中は、柱の一本、一本。ガラス窓から、敷物に至るまで綺麗に掃除されていた。
ついでに、サイドテーブルに花まで生けてある。
魔導士は、見違えるように、綺麗に整えられた屋敷に感心している。
「……すごい。……よく…頑張ったね。」
「そうですよ、掃除の仕方を1から本で学んで、頑張ったんですから…!!」
カリナは、ぷんぷん怒っている。
「そっかぁ…。えらい、えらい。」
そう言って、師匠はカリナの頭を撫でた。
「…こっ…子供あつかい、しないで下さい!」
ますます、弟子のカリナは怒ってしまう。
「…そうなの?じゃ、抱きしめてあげればいい?」
「……!!……ちっ…違います(激怒)!!」
「…ぁ!赤くなった。」
魔導士がそう言うと、カリナはムキーッと怒って行ってしまった。
「わたしは…怒ってるんです。…とにかく、はやく魔法を教えて下さい!!」
そう言って、のしのし歩いていく弟子を、魔導士カシウスは見送った。
あとがき
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「今後どうなるの!!」
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