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64章〜65章

64.章 事件の真相




空は、(あかね)から(あい)へのグラデーションができ、


藍銅(らんどう)色の雲が、それを縦横(じゅうおう)して、乱れながら細く広がっていく。


やがて銀のピーズを散らかしたように、星が(またた)きはじめた。




孤児院近くの森で、(きぬ)()くような子供の悲鳴が、響き渡った。




《ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!》




「…何でしょうか!?」




司祭インベルはカリナに意見を求めた。




「探していた子供かも知れません!」




カリナは、とっさにそう思った。




カリナ達が、現場に駆けつける。




しかし、悲鳴を上げたのは孤児院で暮らしている子で、カリナの探していた子供では無かった。



「…あっ…あっ…あれ…」



その子は、そう言うと、足元を震える(ゆび)で指し示す。




「ロルフの死体だ…!」




そう言って指の先、茂みの闇に目をやる。




司祭が勇気を持って、確かめに行ってみる。




「可哀想に…。どうやら、探していたロルフは誰かに殺されたらしい…」




そう言うと、ガックリと項垂(うなだ)れて戻ってくる。





「司祭様…!こっち、こっち…!」




他の孤児院の子供が司祭を、呼ぶ声がする。




声の方に行くと、茂みのその先に、もう一つ死体があると言う。




「これは…テッドの母親の死体ですね…。」




司祭は死体を、改めながらそう言った。



「自分の子供を殺し、ロルフも殺してた事で、



自責(じせき)の念で、自殺したのでしょうか…」




そう断定(だんてい)すると、子供達から、死体を遠ざけた。




孤児院の子供達、そしてカリナと来ていた、アスタクも泣いていた。




カリナは、そんなアスタクを悲しく見つめながら、小さな子供達を抱きしめる事しか、できなかった。




事件は、後味悪(あとあじわる)収束(しゅうそく)し、カリナと、アスタクは、とりあえずカナイ村に帰る事になった。





司祭インベルは首にかけていた、ロザリオを外すと、カリナに渡した。




「あの…コレは…?」




「コレは…本当は恋人に贈るはずの、ロザリオでした。」




「でも、…もうそれは、(かな)いません。」




「僕は、コレをあなたに贈りたいのです。………もらっては頂けませんか?」




そう言われて、カリナは驚く。




「……そんな、大切なもの頂けません。」





「もらって頂けると、僕も……嬉しいんです。」




そう言ってロザリオを握らされる。




涙ぐむインベルをみて、気の毒に思い、おもわず受け取ってしまう。




「……受け取ってくれて……ありがとう…」




司祭のインベルは寂しげに、カリナを見送る。




「もう、お目にかかる様な、チャンスは2度とないかも知れませんが、どうかお元気で……。」




そう言って、司祭はにっこりと微笑み、手を差し出す。



差し出された手を取って握手を交わすと、引き寄せられハグされる。



「ごめんね…」



小さく謝られ、あまりの事にカリナは驚いた。



「…やっ……あの、」



反射的に両手で(せい)し、彼を押し戻す。



「……ごめんなさい。………お世話になりました…」




カリナは驚き、司祭の顔をまともに見られない。




「……さよなら…。」




そう言って、逃げるようにその場から離れた。




それを見ていた、アスタクは、カリナを冷やかす。




「お姉ちゃんも、意外と(すみ)におけないなぁー!」




「……そうだ!お姉ちゃん、魔法使いなんて()めて、ここで暮らせば良いよ!」




そんな、冗談を言って、笑っている。




カリナは、アスタクが少し元気になったので、ちょっぴり安心する。





アスタクと、カリナが村に帰ると、複数のジルドの衛兵が、



今や遅しと、カリナを待っていた。








65.章 ロザリオ






拠点(きょてん)のカナイ村で、ジルド国の衛兵は、カリナを迎えに待っていた。




「魔獣討伐はあらかた成功しました。大魔法使いのカシウス•オルデウス様が本国ジルドの王都(おうと)でお待ちです。」




御者(ぎょしゃ)はそう告げると、カリナを馬車に乗車するよう促す。




後ろ髪を引かれながら、アスタクに別れを告げ、カナイ村を去る。




黄昏(たそがれ)の村を、馬車で去りながら、




カリナは手の中に光る、ロザリオをしげしげと眺める。




『こんな高価なものをもらえない、どうしたら返せるかしら……。』




なんとか、アスタクに代わりに返してもらうように頼んだのだが、



「嫌だよ。お姉ちゃんがもらったんだろ」



と断られてしまっていた。





クロスに趣意(しゅい)された細工の美しい、豪奢(ごうしゃ)な宝石のペンダントトップを裏返してみる。



そこに、古い装飾文字(そうしょくもじ)でこう書かれている。




『※※※※※※※ (Mayuri I want to meet you beyond time and space.)』



(マユリ 時間と空間をこえて、君に会いたい。)




『※※※※※※※(Even if I can't live the same time as you, I'll love you forever.)』 



(たとえ、君と同じ時を生きられなくても、いつまでも愛している。)




()れていたが、かろうじて、この世界の言葉で書かれた、部分を読み取る。




『………マユリ…って…。』





『魔王様も、気にしていた言葉。』





『どういう事だろう…?』





─数日が過ぎ、アスタクはあれから、孤児院の仕事を手伝っている。



カリナが、帰るとまた元の退屈な日常に戻ってしまった。



アスタクは、魔獣討伐とか楽しかったなぁと、ひとり考えている。



そこへ、家事をしている司祭をなんの気なしに見ていると、気づく事があった。




「司祭様、どうして法衣(ほうい)(すそ)に血がついているのですか?」




「あっ…よく気がつきましたね。」




司祭インベルはにっこりと笑う。




「でもね…。なんでも口にする浅はかさ、やはり子供ですね。」




そう言って薄く笑った。





あとがき


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!!」


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