63章
63.章 司祭とギャンブル
山の稜線が輝きだし、ゆっくりと太陽が顔を出し始めた。
東の空は白みはじめ、朝の光が溢れると、夜の闇は隅に押しやられ消え去る。
ありふれた、そして毎日やってくる、
神秘的な、こんな奇跡は、日々絶えず、
そして今日も1日がはじまる。
ジルド領の北部は、もうだいぶ寒く夜中に霜柱が立つ。
そこらの枯れた草木も、ダイヤのような霜が、薄く吹き付けられ、
朝の風にそよいで、輝いていた。
すでに、司祭は仕事を始めており、寒がりながらも、木製のタライで洗濯物を洗っている。
さむ、さむと、吐く息も白く、指先は冷たく痛んでいるようだ。
「…あの!わたし手伝います」
慌てて、カリナは司祭に声を掛けた。
カリナは、一方的にお世話になっている事を心苦しく思っており、なにか自分にできる事を探していた。
「あ…!おはようございます」
司祭が、カリナに気づき、驚いて挨拶を交わした。
「そんな、お客様にお手伝いなんて、申し訳ないです……」
司祭はそう言って、恐縮する。
そこへ、はしゃいで走ってきた子供が司祭にぶつかる。
ぶつかった拍子に、司祭はバラバラと何か『紙』を落としてしまう。
「おっと…!あまりはしゃぐと他の小さい子にぶつかってしまうよ…」
司祭はそう言って、走ってきた子に、優しく諭す。
カリナは慌てて、司祭が落とした、大量の小さな紙たちを拾った。
「司祭様、落ちましたよ」
そう言って、小さな紙たちを渡す。
『これって…競獣場の獣券?』
「あはは…。これは大変お恥ずかしい…。」
「競獣場に、行かれるんですか?」
「…ええ。まぁ、ほんの息抜きで…」
『落とした、大量の獣券は、とても息抜きレベルでは無かったけど…』
競獣場読んで字の如く、
競争用に調教された魔獣、妖獣、怪獣、ミニドラゴンなどを競争、および闘争させ、
金銭を賭ける、いわゆるギャンブルである。
アスタクは、不思議がる、カリナに事の次第を説明する。
「司祭様は、生活が厳しいくせに、ギャンブル大好きなんだよ。」
そう言って続ける。
「特に、競獣場に行くと、人が変わっちゃって、
この前なんて、{テメー舐めた、走りしたらぶっ殺すぞ!!}って野次ってたらしいよ。」
うんうんと、他の孤児たちもアスタクの意見に賛成している。
「ミロスの父ちゃんが言ってた。
競獣場でヤジってたって。」
「うん、言ってた。」
その他の孤児も、その言葉を保証する。
「…ちょっと意外…」
カリナは少し、びっくりする。
ニコニコしながら、洗濯物を干してしている、司祭をみていると、そんな風にはとても見えない。
『あんな優しそうな、人なのに…』
「まあ、ギャンブル狂さえなければ、良い司祭様だよ」
アスタクはそう言うと、がははと笑った。
あとがき
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