62話
62.章 タンシチュー
白い湯気が、孤児院の炊事場に上がり、
美味しそうな、肉の匂いがする。
司祭は、土間に設置された薪ストーブのオーブンに深鍋をのせ、器用に肉のスープを調理している。
「んー…。良い匂い。」
「ホントだね、お姉ちゃん。」
カリナとアスタクは、朝からなにも食べていなかったので、お腹ペコペコである。
他の孤児たちに混ざり、食器をならべたり、夕食の支度を手伝っている。
料理が運ばれて、皆が決まった席に座る。
カリナ達も、広い食堂で他の孤児達にまざり、座っている。
孤児の数は、6人ほど。
それほど多くないのは、やはり1人では孤児院の運営は難しいからだろう。
司祭と孤児たち、カリナたちは食事のお祈りをすませ、皆んなで食卓を囲む。
司祭インベルはカリナの向かいに座り、苦笑しながら話しかける。
「お口にあうか分かりませんが…」
今夜のメニューは、シカ肉の煮込み。
ちょっと豪華な食事内容に驚く。
お客様がきたので今日は、奮発して、と司祭がいったので、ますますカリナは恐縮する。
そして、ありがたく頂くことにした。
ひとまず、一口食べてみる。
「美味しい…!」
司祭は、美味しそうに料理を頬張るカリナを、満足そうに微笑んで見ている。
「似ている、な…。」
カリナは、食卓から目を上げる。
「…すみません、おかしな事言って。」
司祭のインベルはカリナに謝った。
「僕の恋人もね、よく食べる子だったんです。」
「大昔、司祭になる前の話し、ですけど…」
そう言って苦笑した。
「わたし、そんなに食べていましたか?」
そう言って、カリナは顔を赤くした。
「そういうところ。なんだか、かわいいですね」
カリナは、なんだか照れてしまい、話題を変える。
「恋人さんはどんな方だったんですか?」
「よく…食べる子でした」
そう言って手元に目を落とす。
「そう、本当に、どんな料理でも、
美味しそうによく食べる、食いしん坊な子だったんですよ。」
そう言って微笑み、司祭は遠い目をする。
「彼女は、すごく優しい…優しすぎる子でした…」
「でももう…、いなくなってしまったんですけどね…。」
そして、悲しげにな表情をする。
司祭インベルは胸にかけた、ロザリオをぎゅっと握る。
その悲痛な表情に、カリナはひどく同情した。
あとがき
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