61話
61.章 教会と孤児院
日もどっぷりと暮れ、冬の清浄な空気は、空に散らばる、星を美しく瞬かせる。
カリナとアスタクは日も暮れた頃、リナト村の孤児院へと到着する。
留守番の孤児たちは、口々にこう言う。
「司祭様ー?今ね、薪を探しに行ったよ。」
「あ!カナイ村のアスタクだ。わーい、久しぶり」
どうやら、司祭のインベルは薪を探しに行っていて留守のようだ。
そこへ薪を抱え、司祭は、凍えながら震えて帰ってくる。
「さむ、さむ、さむ……。」
カリナ達は、ちょうど、そこに出くわした。
「あ!…お客さん?こんな森の奥の、けもの道を歩いてきたの?」
そう言って、司祭のインベルは、にっこりと客人を迎える。
「さあ、入って。特に、今夜は冷えるね!」
招き入れてくれた司祭のインベルは、アイスブルー髪をした、優しげな男性だった。
そして、驚くほど若く、ほとんどカリナと同じくらいに見えた。
愛想も良く、子供達にもイジられつつ、よく懐かれているようだ。
なんとなくカリナは、インベルが、少し魔王様に顔立ちが、似ている気がした。
しかし、魔王にはピリッとした厳しさがあったのに対し、
司祭のインベルは、ふわりとした優しさがあった。
「この教会は、行き場のない戦災孤児を引き取り、孤児院のように運営しているんです。」
そう言いながらにこやかに、孤児院を案内する。
「おかげさまで、子供達の世話や、家事、教会運営など、一通り1人でなんとかこなしています。」
「今、お茶を淹れますね。」
そう言って、司祭は薪ストーブにお湯をかける。
司祭は、粗末な椅子に座り、孤児達の洋服の繕い物をしながら、にこやかに話しをする。
カリナが壁に目をやると、手作り品であろうタペストリーが掛かっている。
その刺繍がとても美しかった。
「このタペストリーの刺繍も、司祭様が作られたんですか?」
「ええ。下手の横好きてして、お恥ずかしいんですが…。」
どうやら、草木で糸から染めたようで、部屋の隅に道具や、原料の草木が干してある。
そのおかげなのか、色とりどりの糸を使った美しい刺繍だった。
それら制作物は、貴族の淑女の嗜みとして、刺繍を教え込まれた、カリナの刺繍より、ずっと出来が良かった。
『……すごい綺麗、刺繍の先生のお手本みたい。』
その手先の器用さに加えて、部屋を見まわし、完璧な掃除にも感嘆しきりだ。
「お一人で凄いですね、子供の世話も家事も、完璧ですし」
そう、なにより子供たちの様子をみて、心からこの司祭を慕っているのがわかる。
『こんな誠実な人がいるなんて……』
カリナは、心から感激している。
「ほんとうに、素晴らしいです。」
司祭は苦笑する。
「そんな、立場上やむにやまれずです。」
そう言って、おっとりと笑っている。
『なんて素敵な人だろう。』
『同じ男性なのに…。先生とこうも違うのだろうか、、』
カリナは思うのだった。
カリナとアスタクはここへ、行方不明のロルフを探しに来た事を説明する。
そして、話の行きがかりで、カナイ村の魔獣討伐の話しになった。
「…そうなんですね。魔獣討伐のためにこちらへ」
「はい。…そうなんです」
そこへ、アスタクが口を挟む。
「そうなんだよー。
でもね、このお姉ちゃんは、魔法使いの弟子なんだけど魔法は下手っぴなんだよ。」
「お弟子さん?では、お師匠様とこちらへ?」
「…ええ。」
「そうなんだよ、なんか有名な魔法使いで、王様からの命令で、魔獣退治に来たんだよ。
たしか、大昔、魔王を封印したんだっけ?」
「……へえ。魔王を……。」
「そんな有名な魔法使いさんが、お師匠様なんですね。」
司祭はそう言って、にこにこと2人にお茶を勧める。
「良かったら、夕食を召し上がりませんか?
お口に合うか分かりませんが…」
「そんな、申し訳ないです。きちんと、野営の準備もしてありますのから…」
「遠慮なさらないで、女性を野宿なんてさせられません。」
「孤児院なのでベットだけは、ありますので、ぜひ泊まって下さい。」
そう言って、お茶の二杯目を進めた。
あとがき
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