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58話

58.章  闇に潜むモノ



─カナイ村の東の外れ。



鬱蒼(うっそう)とした木立の中で、少年2人が、神妙な面持ちで話し合っている。



この少年たちはカナイ村の住人で、ようやく外遊びが許されたのだった。



つまり、魔獣討伐もあらかた済んで、子供達はようやく野山で遊ぶ事が出来るようになっていた。



子供の1人が相談する。



「最近、母さんの様子がおかしいんだ。」



そう相談した子供はテッドといい、父は早くに亡くなり今は母親と二人暮らしの少年だ。



「どうしたんだよ。」



話を聞く友達のロルフは心配そうだ。



「実は……、俺、母さんが、隣村の子供を殺しているところを見たんだ…」



テットは、そう打ち明けると黙ってしまう。



テットの母親は隣のリナト村の住人で、教会の手伝いで、生計をたてている。



「もう、家に帰りたくないよ。」



「俺も……殺されるかも知れない。」



「それ、確かなのか?」



「……うん。」



「………なら俺の家に来れば、いい。」



「……いいの?」



「なんだよ!水くさいなぁ……友達だろ、気にすんな!」



しばらくすると、テッドの母親が迎えにくる。



「テッド、帰るわよ。」



「母さん、今夜ロルフの家に行く約束なんだ…」



「あら、いけないわ、急にうかがってはダメよ」



「そんな……俺……!家に帰りたくないよ…だって」




「あらあら、そんな我儘言って。お母さんが昨日、厳しく言ったのが気に食わないのね。」




「それじゃ、司祭様のところへ泊まったらいいわ……」



母親はそう言うと、息子に帰りを(うなが)す。



「さ、帰りましょう。」



「テッド……。どうする?」



「……司祭様の所なら、大丈夫かなぁ。」



「……うん、……分かった。帰るよ。」



そう言うと、テッドは母親と共にリナト村へ帰って行った。



──夜月やげつも低く落ちた真夜中、寝静まったカナイ村は静寂(せいじゃく)に包まれる。



少年ロルフは、何か恐ろしい夢を見たらしくベットから飛び起きた。



ロルフは言いようのない、嫌な予感を胸に覚える。



どうしても、友達のテッドが心配になり、夜半だというのに、リナト村の司祭の所に尋ねていった。



「ロルフ、どうしたんですか?」



司祭は嫌な顔一つせず、ロルフを迎える。



「あの…テッドはいますか?」



「テッドですか?…やっぱり、夜中に家に戻ると言って帰りましたよ。」



妙な胸騒ぎを押さえつつ、テッドの家にロルフは向かう。



丘の上にらある、テッド家の中はがらんとして、静かだった。



ロルフは恐る恐る、家の中に入る。



そこには、変わり果て、四肢(しし)をバラバラにされた、テッドが横たわっていた。



「ウソだろ……やっぱり、テッドの母親が……」



《ガサッ!》



冷や汗が吹き出し、恐怖でガクガクと震えた。



『やばい……テッドの母親が戻ってきたんだ!?』



ロルフは慌てて、家を出ると、司祭の住む、教会に向かう。



「どうして…どうして、俺はもっと、引き止めなかったんだ!」



『テッドは母親を、怖がっていたのに。』



「……どうして……」



「とりあえず、司祭様を呼ばなくては…!」



ロルフは教会から、来た道を戻る。



─この瞬間、次の瞬間に、テッドの母親に追いつかれ、いつ肩を掴まれるのか分からない。




ロルフは恐怖を振り切り、獣道(けものみち)を全力で駆け抜ける。



─木立の影、獣道のその先の暗がり、遠く谷の深い淵、森のあらゆる闇に母親が潜んでいるように感じた。



ふと、闇の奥から自分の足音に混じり、別の違う音が聞こえた気がした。



そして、つい耳を澄ましてしまう。



闇よりも暗い森の奥から、ポキ、ポキ、と何か聞こえる。



どうやら、何者かが、小枝や落ち葉を踏みしめる音のようだ。



それらの音は、次第にこちらに近づいてくる。



ポキッ、ポキッ、ポキッ、………。



『だ……誰だ……テッドの母親か!』



ロルフはつい立ち止まってしまう。



息を殺し、その音を聞く。



ポキ、ポキ、ポキ、ポ……。



恐怖は絶頂に達し、やもたてもたまらない。



《…ガサッ!》



ロルフはびくっとして、振り返る。



月の逆光で見えない何者かの影が、背後に立つ。



『テッドの母親なのか?!』



『司祭様…助けて…!…あいつは……』



なぜ、恐怖にかられると、人は走りだすより、何者かを確認してしまうのか。



月光に照らされた真っ黒いシルエットが、サッとより近づく。



「…や…やめろ…来るな…!!」



声にならない悲鳴は、木立のざわめきと共に、



深い闇の奥へ、吸い込まれかき消えた。 


あとがき


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!!」


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