55話
55.章 北部カナイ村での魔獣討伐
国境付近の深い森。ジルド国北部の街道沿いの村落に、
人類最強の魔導士、カシウス•オルデウスの 光魔詠唱が、こだまする。
「暗雲に迷える光よ、
我に集い、汝その力を解き放て、
神々の黄昏に戦果を挙げる者
光の轍聖なる紋章を刻め
憎悪の業火を撒き散らす
漆黒の眼を貫き
天より注ぐ蓬矢
幾千の雨矢となり
敵なすものに、破壊と破滅をもたらせ」
大気より集まった光が、幾何学模様のように多層的に複雑にうかび、
超高次元魔法である、光魔法陣が敷設される。
「ホーリー•ディストラクション…」
超高次元光魔法陣から放たれる、聖なる幾千の閃光が、
飛行する魔獣たちを貫き、爆発四散させた。
それらの魔獣たちは、空からボトボトと地表へと落下し、死体は魔力をはらんだ塵となり消えていった。
師匠の魔導士カシウスは、こうして村を荒らしていた、魔獣たちを次々に倒していく。
ここはジルド国の北部、街道沿いのカナイ村。
魔導士カシウス•オルデウスと弟子のカリナは、ジルド国王から依頼された、魔獣討伐の真っ只中だ。
「だんだんと、魔大陸に近づいているから、魔物も強くなってきたね。」
師匠の魔導士カシウス•オルデウスは、弟子のカリナに話しかける。
『………すっ…すごい……!』
カリナは、師匠の放つ魔法の圧倒的な強さに、見惚れて少しぼんやりしている。
師匠のカシウスは、そんな弟子の様子に気づいたようだ。
「…あれ?…もしかして、好きになっちゃった?」
カリナは我に返り、冷静に言いかえす。
「…いえ。先生のことは魔法使いとしては尊敬してますが、人間的には……嫌いです。」
「…………。」
この際、カリナは少し気になった事を師匠に聞いてみる。
「先生は、前みたいに魔法の杖持たないんですね…」
「……んー。魔法は想像の具現化力だから、
依代としての、アイテムはあった方がいいけど、
私は別に無くても変わらないかな。」
そう弟子に言うと、少し考え直して、言葉を付け加える。
「…少なくとも、この程度の魔獣討伐なら必要ないね」
『ほえー。天才はやっぱりすごい……』
カリナは素直に感心した。
大魔法使い、カシウス•オルデウスは悩んでいた。
このまま、この子、─カリナを弟子として、連れていくのは、どうなのかと。
『……正直、はじめに結んだ《魔法の契約書》のせいで、セクハラは出来ないし…。』
カシウスは、いくつかの不満を、心の中でボヤく。
《魔法の契約書》によって、カリナとカシウスの師弟関係は結ばれている。
コレは、魔法物理の理を越えた絶対的な契約だった。
なのでもし、師弟関係を越えたセクハラをしようモノなら、
厳しい魔法の懲罰が与えられる、そういう類いの契約だった。
具体的には、師匠のカシウスが、カリナに性的接触を、
例えば、押し倒す、胸を触る、など無理に図ろうとすると、
激しい雷の魔法で、電撃の制裁が下る。
また、約束をワザと反抗にして、弟子から逃げるなどをすると、
死に直結するとんでもない不運に見舞われるういう類いの契約でもあった。
他にも、弟子のカリナの、着替えを魔法を使って密かに覗こうとすると、
目の網膜に直接モザイクがかかり、裸は全く見えなかったりする。
『いや……モザイクは目を細めれば、薄っすらと、見え……る、…わけない…!
昭和のエロ本じゃあるまいしっ!』
「はぁー。」
全く、損な契約を結んだ訳である。
太陽は山の稜線を越え、陽は高く昇りはじめる。
空を黒く染めて、無数に飛んでいた、魔獣たちはあらかた、消えたようだ。
師匠のカシウスは、とりあえず息をつく。
このような魔獣討伐の合間に、手持ち無沙汰から弟子のカリナに質問する。
「聞いてもいい?」
「……はい。」
「何で魔大陸に行きたいの?」
「それは……探したいものがあるからです」
「……探しもの?……それって……」
師匠はそこまで言いかけたが、新たな魔物の気配を感じ、話しは中断された。
カリナは、師匠に聞かれて、あらためて想う。
『無駄になってもいい。わたしはどうしても…。
魔大陸に行き、《グランドブック》を手に入れたい。
そして、魔王様の心臓を見つけ出すんだ…。』
あとがき
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