49章〜50章
49.章 魔法の契約書
異人種専門ショーパブ、『異人種性館マリウセン』の個室のVIPルームは、豪奢な造りの特別室だ。
カリナとカシウスは、そこに場所を移した。
「しっかし、よくココがわかったね。」
カシウスは素直に関心していた。
「いかがわしい店なら108軒行きました。」
「ここで見つからなかったらどうするつもりだったの?」
「109軒目に行くまでです。」
「うーん。その、ど根性にめんじて、話しを聞いてやりたいけどねぇ。」
「大丈夫です。ユーラ大陸中のいかがわしい店、全てにいくつもりだったので。」
「………。」
「……で。祖先に恨み言でもいいに来たの?」
「………。」
カリナはバッと膝をつくと、いきなりカシウスに土下座した。
「どうかお願いします。曾々々々お祖父様、わたしに魔法使いとしての心得を教えて下さい。」
カリナは、なおも懇願の言葉を続ける。
「わたしはどうしても、『魔大陸』に行きたいのです。」
「このまま、『魔大陸』に行っても、ただ殺されるだけになってしまいます。どうか、わたしに魔法使いとしての、技術を1からご教示ください。」
「…………。」
魔導士は、あっけにとられ、少し考えから尋ねた。
「…魔法教えて欲しいの?」
「そもそも、ハルトはどうしたのさ?」
「わたしの魅力が、いま一歩及ばす、魔王様には捨てられました。」
「……へ?」
『…ああ。なるほど…』
魔導士は足を組みつつ、思案している。
『それは……捨てたというより…むしろ…』
「あのー…ひとつ聞きたいことがあるのですが」
「輪環の腕輪で、わたしを助けてくれたのはどうしてですか?」
魔導士は少し固まって、言葉を濁す。
「………。まぁそれは、いいじゃない。」
「……はぁ。そうですか。」
「とにかく魔王様に、魔法を教えてもらったのですが、魔王様は魔族なので、
正直、人間のわたしには全く参考になりませんでした。」
「どうか曾々々々孫娘を、哀れと思って、魔法を教えて下さい。」
深々と頭を下げて、カリナはお願いした。
「…それはつまり、ハルトより私の方が優れた師匠であると、そう言いたいんだね。」
「…えー。はい!そうです!」
「魔王様は教えるのも大雑把であんまり…。
やる気もなさそうなので、カシウス公様の方が素晴らしい師匠になると思います!」
「なるほど…」
魔導士は、迷惑そうにしつつも、魔王より素晴らしいと聞くと、満更でもなさそうだ。
「それともやっぱり、魔王様の方が教えるのは上なのでしょうか?」
「ハルトが私より上……(怒怒怒)」
「お願いします。…先生。」
「………。」
正直、面倒くさいと思わない訳でもない。
だが、さっきから、かがむとチラチラと見える、カリナの胸の谷間を片目で拝みつつ、唸っていた。
「……うーん。」
『たまに、女の子を連れて歩くのもいいかなぁ…』
怪しげな室内のライティング。
上目づかいで見上げてくる、前屈みの美少女。
酔って回らない頭。
そうなると、なんとも言えないスケベ心に突き動かされてくる。
「…よし。いいでしょう!先生になりましょう」
「ありがとうございます。先生!それでは
『魔法の契約書』にサインを下さい。」
「……………。それいる?」
カリナはカシウスにずずずいと、近づくと、横乳を押し付けながら、魔法のペンを握らせる。
「…先生のサイン、見てみたいです…♡♡」
可愛くおねだりされると、悪い気はしない。
まいっか、と軽い気持ちでサインしてしまった。
─ロンロン遊郭にも、メント歓楽街にも朝が来る。
それから、カリナとカシウスはショーパブ店を出て、街中に朝食を取ろうと、出かけることになる。
50.章 後悔
『朝の光が美しいのは、後悔の色だから…。』
魔導士はやっちまったと、後悔していた。
正直、酔っていて冷静な判断が出来ていなかったと、今更ながら気づいた。
とにかく、朝になって、面倒くさいことを引き受けたことを自覚した。
『…あーあー…やっちまった。』
カリナは上機嫌で、魔導士について行く。
そういえば、セクシーな衣装もいつのまにか着替えている。
「…!!」
『…そういえば、契約書もよく読んで無かった…。』
契約書はキチンとよく読んでからサインする。母親からキツく言われていたことを思い出す。
魔導士は頭を抱えはじめる。
よくよく考えると、急に胃酸が逆流して、街角のすみに吐いてしまう。
《おぉぉぇぇっっ…》
「…先生、顔色悪いですよ?」
カリナは心配そうに覗き込む。
『…誰のせいなんだ……誰の…!!』
ウエリント地域の名物といえば、海洋生物、『ゲヘゲヘ』の姿焼き料理だろう。
『ゲヘゲヘ』をそのまま焼いただけのシンプルな、しかし、素材の新鮮さが問われる、その土地でしか食べられない、郷土料理である。
ここメント歓楽街には『ゲヘゲヘ料理』の有名店が数多く存在する。その中の一店舗にカリナたちは訪れていた。
カリナの前に、美味しそうなゲヘゲヘ料理が運ばれてくる。
「んー…。いい匂いですね♡」
カリナはうっとりと『ゲヘゲヘ(巨大でカラフルな船虫)』に舌鼓をうつ。
「おいしー♡やっぱり、ウエリント地方にきたらコレですね♡」
カリナはまるで、ミルフィーユでも、頬張るように、幸せそうな、かわいい仕草だ。
だが、食べているのは、巨大な船虫である。
カリナは師匠の顔色がもっと悪くなっていることに気づいた。
「先生、体調大丈夫でしょうか?」
「すみません、わたしばかり食べてしまって。」
そう言いながら、カリナは『ゲヘゲヘ』の刺さったフォークをこちらに、渡す。
ゲヘゲヘは、活きが良いのか、触覚がまだピクピクと動き続けている。
「いや、いい。体調が悪くて…」
ちなみに、これを素手で殻を剥きながら食べる郷土料理だ。
皿からヨタヨタと一匹が逃げ出し、魔導士の手の甲にへばり付く。
「…ひっ!」
思わず払いのける。
魔導士はますます、具合が悪くなってきた。
「…悪い…。」
そう言ってトイレに駆け込んだ。
《おぉぉぇぇっっ…》
お酒って大変なんだな、とカリナは思うのだった。
あとがき
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