31話〜32話
31.章 好み
カリナは風に吹かれて、
彼方の水平線をながめる、魔王を見ていた。
銀髪がサラサラと輝いていた。
『魔王様ってほんと、すごい美男子なんだろうな。』
太陽は水面に反射して眩しく、目がくらみそうだ。
『だけど…。ごめんなさい。』
わたしは、魔王様に異性としての魅力を感じない。
『魔王様は、全然わたしの好みじゃない…。』
やっぱり、わたしの好みは男性は、もっと、もっと、たくましい人。
肉、肉、肉のある………そう筋肉質な人が好き!
魔王様は、旦那様としては、いい人だとは、思うんですけど、ね。
「魔王様がもっと、ガチムチマッチョだったらなぁ(ため息)」
カリナは独り言をもらす。
「悪かったな、体質だ。」
魔王に、独り言を聞かれたことに、はたと気づいて赤面する。
「すみません、独り言です…(汗)」
まさか魔王に聞かれていたなんて、カリナは冷汗が止まらなかった。
「安心しろ。我は、お前とそういう関係にはならない。」
「そもそも、そんなものを、我は理解出来ないからな。」
魔王はそう言い放つ。
─カリナ•オルデウス16歳、こう見えて、魔王様と『契約結婚』しています。
だけど、魔王様とわたしは、お互い全然、好きじゃない。
きっと、好き合うことも、愛し合うこともないんだろうなと思う。
お互い交差する事が無い。海と細くのびる雲、それを隔てる空を見て思った。
32.章 魔法のコンパス
太陽は高く、風を受けたマストや帆柱の木材から、ギシギシときしみが響く。
船で羽を休めた、うみねこは遠く水平線の彼方まで飛び去っていく。
魔王とそんなやり取りを、していると、いつの間にか、甲板がざわついていることに気づく。
船乗りたちが、なにやら慌てている。
─カリナが事情を聞いてみた。
「…魔法のコンパス?」
「おうよ!」
「前回の航海の嵐で、船がやられちまって、魔法のコンパスが壊れちまったんだよ。」
「だから、新しいのを前の港で手に入れたんだが、コレが見事に使えない」
他の船乗りが叫ぶ。
「どうするんだよ、魔法のコンパス使えなくて。」
「もう、戻れないぞ!」
「いや、仕方ない引き返すか!」
「親方も、使い方わからねぇってよ!」
船乗りは、すまなそうにカリナに言った。
「お嬢ちゃん、すまねぇが、引き返す事になりそうだぜ。」
カリナは少し考えて、聞いた。
「あの、わたし、ちょっと見ても良いですか?」
「いいぜ、どうせ誰も使えないし。」
カリナは魔道具のコンパスを受け取ると、しげしげと見回した。
「ここを引っ張って。これを、こうやって」
カリナは手際良く、魔道具のコンパスをセットしていく。
「ここに魔力を送ると。」
魔道具のコンパスはカチカチと小気味良い、機械音をたてながら、動きはじめる。
「おおおぉぉぉぉ!!!!動いたっっっ!!」
甲板には、歓声と、どよめきが上がった。
「お嬢ちゃん、よくこんな古い魔道具の使い方、知ってたなぁ!!」
「親方でも分からなかったのによ!」
カリナは船乗りたちに褒められて、キョトンとしている。
『えっ?なんか、みんな喜んでくれてる…?そんな凄いことしたかしら?』
船乗りたちは船を、元の港に戻さなくて、良くなり、カリナに大いに感謝した。
「親方、このお嬢ちゃんでさぁ。」
そう言われて、親方と言われる、船乗りの頭目が現れた。
「アンタかい?この魔法のコンパスを動かしたのは、お嬢ちゃん若いのに、魔道具に詳しいんだねぇ。」
船乗り達が、あんまり褒めるので、カリナはポカンとしていた。
『これって、誰でも知っている事ではないかしら…?』
「一等航海士ですら、分からなかったんだぜ。この若いお嬢ちゃんは天才だな!」
親方はカリナの謙虚な態度も大いに気に入った。
「お嬢ちゃん、そんなに詳しいなら、学者さんになるといいよ。きっと、皆んなの役にたって感謝される人になれるよ」
「学者さん…?」
カリナは言葉を反芻する。
親方はなおも、カリナを絶賛する。
「お前さんは、俺らの命の恩人だ。なにせ船の荷物が遅れたら、船主からどれだけの、違約金をふんだくられるか、分からないからな!」
そうして豪快に続ける。
「もちろん、この船の乗船料はタダにしてやるから安心してくれよ!」
そう言ってカリナ達を、船に乗っている間中、特別待遇にすると約束した。
そんな親方に、カリナは当惑しながら御礼を言った。
そして、カリナは自分に自信がちょっぴり持てた気がした。
『良かった、本の知識が役に立って…。』
魔法の本はわたしに、なんでも教えてくれる。
わたしに、力を与えてくれる。
きっと、この世の全てだって、本でわかる。
そう『グランドブック』みたいな、
─偉大なる書で、
みんなを幸せにする事だって出来るはず…!
あとがき
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