29話〜30話
29.章 ガレオン船、出航
カリナと魔王は、サライサの港に着くと、船に乗るため、船主組合を探す。
カリナたちの目指す、ユーラ大陸に渡るには、外洋を航海する、貿易商人の船に乗る必要がある。
その商船に乗るため、船主組合を通さなくてはならないからだった。
そうして、ふたりは、ドドの商人が持つ、ガレオン船に乗船することになる。
─サライサの港には、数隻のガレオン船が停泊している。
ガレオン船の乗客はカリナ達のほかは、小さな女の子を連れた夫婦が、1組いるだけだった。
かわいそうに、その女の子は、絶えずゴホゴホと咳をして、母親はそれを気遣って細々と世話をやいていた。
カリナは、女の子の身体を心配し。船の長旅は大丈夫なのかしら、と気にかけていた。
──そろそろ出航の時間が迫っている。
慌ただしく働く、荷運びの男たち。
カリナは、その仕事ぶりに見入っていた。
頬杖ついて、うっとりと眺めている。
「素敵ぃ…♡」
「なんて素敵な、大胸筋なのかしら…」
筋肉マニアのカリナは、そう言って、しばらく眺めていた。
しかし、カリナはまだ子供過ぎて、気づかない。その見事な筋肉を作るために、人間性を無視した、苛烈な労働があることを。
肩に食い込む、船荷に歯を食いしばりながら、耐える奴隷たちに、
哀れを感じれるほど、カリナは成熟してはいなかった。
─がレオン船の出航直前、船乗りたち、2人の噂話が聞こえてくる。
「最近、この船でネズミを見かけないよなぁ……」
「なんだよ不吉だな…。ネズミの逃げ出す船は沈むって言う迷信かぁ?」
「でも昨日、倉庫番の変死体が見つかっただろう…?
何か、得体の知れないモノが…積荷に紛れて潜んでいるとか…!!」
「シッ!…声がデカい、客に聞かれるぞ…。」
「あっ…悪い……。」
さまざまな思惑をのせて、船は出航する。
30.章 グランドブック─偉大なる書
船は湾から外洋へ出ると、波が立ち、船は大きく揺れる。船は速度を上げて白波を切った。
マストのカモメは港に戻るため、後ろに飛び去っていく。
外洋を見ながら、魔王と話す。
「あてどなく、旅に出てきたが、それで良かったのか?」
「目的もなく、これからどうするのか…」
それを聞いて、カリナの目に強い光が宿る。
「旅の目的なら、もちろんあります。
偉大なる書『グランドブック』を手に入れることです。」
『グランドブック』─偉大なる書。
現在、過去だけでなく未来さえも、網羅する、予言の書。
賢者の石にも匹敵する力をもつとされ、
あらゆる情報を収蔵する『グランドブック』。
カリナはきっぱりと魔王に宣言する。
「『グランドブック』は、魔大陸にある、伝説の魔塔ソロモンに眠っているはずです。
そこに到達し、手に入れる事。それが、わたしの人生の目標です。」
「なるほど、そこまで分かっているのなら、
魔大陸のどこに、魔塔ソロモンがあるのかもわかっているのか?」
「そ…それは…」
カリナは急に自信なさげだ。
「魔塔ソロモンは、魔王城にある。」
魔王はその疑問に、答える。
「だが、魔大陸は行かない。人間には危険すぎるからな。」
魔王はきっぱりと言い切った。
─魔王城。それは、魔大陸の中央に位置する。
魔大陸は強い瘴気が渦巻いていて、凶悪なモンスターが住まい、人間が訪れることは出来ない。
もし並みの人間が訪れたとしても、1日と肺がもたないといわれている。
「まあ、魔大陸はともかく。我は、別の大陸に向かうのは賛成だ。
正直、聖女ローレライがあのまま、おとなしく捕まっているとも、思えないからな。」
そして、魔王は薄暗い疑念を、胸に秘めていた。
『もう一つ、我の封魔の呪印を解いた、得体の知れない何者かを振り切るためにも。』
あとがき
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
作品下にある★から、作品の応援お願いいたします。
《お気に入り》をいただけると、大変励みになります。
面白くても、つまらなくても、正直に感じた気持ちを《コメント》していただけると、今後につながってありがたいです。
誤字脱字ありましたら、教えていただけると大変ありがたいです。
《しおり》もいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。




