22話
22.章 リアルの独白
アルドリア国王の居城─
王宮の小道には、雑草が生い茂り。漆喰の剥がれは、もう何年も補修がみてとれない。
庭の手入れも簡素で、よく見ると、この国の窮状が見てとれた。
国王の執務室だけは、豪奢な内装だが、どう見ても召使は少ないようだ。
国王の執務室で、王太子リアルは、国王にお叱りをうけていた。
「聖女と仲良くするのはいい。
だが、カリナ•オルデウスとの婚約破棄までは、やり過ぎだ!
ただでさえ、オルデウス家は、クセがあって厄介だと言うのに。」
そこまで言うと、王太子リアルに詰問する。
「何より婚約破棄の違約金を、どう支払うつもりだ。」
「リアル、お前のおばあさま、王太后の長年の度重なる浪費で、我が国の国庫は危機的状況にある。
正直、国庫は空に近いと言っていい。今戦争などふっかけられたら─。」
──所詮、この世は金、金、金。
それは、王太子の身分になっても変わらない。
嫌な時代に生まれたものだ。
リアル王太子は、頭のなかで毒づきながら国王の話をきいている。
─カリナ•オルデウスと結婚しろ、
父上がそう言われたからでしょう?
リアルは結婚について、なんの感想も持っていなかった。しろと言われたからする。その程度のものだった。
ただ、カリナを愛する、ふりは出来た。
というより、彼は誰も愛していなかった。
国王は、お妃候補の中で、1番金が、かからなそうだ、という理由でカリナを選んだ。
王太子リアルのカリナ•オルデウスに対する感想は、
容姿は悪くないが、
本ばかり読む、変人だった。
だが、それは好都合、浮気もしなければ、浪費もしないだろう。
男慣れもしていない、操作するのにちょうど良さそうだと思っていた。
女は愛がないと、金を浪費する、
それが彼が祖母から学んだ経験則だった。
だから、リアルはカリナを愛しているふりができていた。
カリナなら無駄遣いせず倹約家で、研究家だから賢そうだ。実家で虐げられているから、我慢強いだろうとふんでいた。
冷たいだろうが、そう踏んでいた。
彼にとって、意外だったのは、国王に婚約破棄を反対されたことだった。
あんな醜聞もちの女なんか、もうどうでも良いだろうと、思っていたからだった。
しかしそれは、社会を知らない子供の浅はかさで、何事にも、手続きや手順が必要。
根回しもなしに、婚約破棄など、してはいけない事だった。
王太子リアルはため息をつく。
正直、カリナには飽きていた。その上での毒殺騒動、わずらわしさに拍車がかかった。
だからこそ聖女ローレライに、ふらついたのだ。
しかし、そうだからといって、ローレライを愛していたのかというと、それも怪しかった。
今だけ、金だけ、自分だけ、
彼にとってそれが全てだった。
婚約破棄の違約金を節約するため、
王国が出した結論は、カリナに無実の罪を着せて、殺すことだった。
つまり、カリナ•オルデウスの不貞はでっちあげられ、無実の罪を着せられ、死刑判決をうけるという事だった。
カリナの家族もまた、王族殺しの醜聞よりは、不貞での有罪の方が都合が良かった。
これ幸いと、死刑に抗議するでもなく、彼女の冤罪を受け入れた。
カリナのまわりの人間が、もう少しでも、優しければ、そんな事には、ならなかったかもしれない。
しかし、そうはならなかった、それだけの事だった。
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