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21話

21.章 聖女の奇跡




─その同時刻のこと。



王太后の私邸(してい)の寝室にて。王太后は病で、ふせっていた。



そこに、ローレライ•ローレンスは聖女として、王太后に治癒(ちゆ)の祈りを捧げている。



神から与えられる、慈悲の温かい光が、暗い病人の寝室に広がった。



王太后は目を覚ます。



「わたくしは…。」



(そば)で見ていた、王太子リアルは、

この奇跡を目の当たりにして、言いようのない感銘(かんめい)を受けていた。



「ありがとう聖女ローレライ、君が聖女だったなんて。なんとお礼をしていいか。」



「そんな。もったいないお言葉。私はこの国のためにお役に立ちたいと願っておりました。」



リアルは感激しきりで、聖女ローレライに何かを返したいと、望んでいた。



「どうか、お祖母様の治癒のお礼をかねて、君を夜会に招きたいんだが。」



聖女ローレライは恐縮して答える。



「それは…カリナが誤解すると、悪いので辞退(じたい)させてください。」



「そんな事気にする必要はない。これはお礼なのだから。」



─その晩



王太后の回復祝いもかねて、夜会は盛大に開かれた。



にぎわう、夜会の会場を離れて、



リアル王太子と聖女ローレライは、バルコニーで語らっている。



「聖女ローレライ、君を、お妃候補から外すなんて、王妃はなんて見る目が無いのだろう。」



「もったいない、お言葉です。」



「ありがとう。君のような人を僕は待っていたのかもしれない…」



王太子リアルと聖女ローレライは、人目を避けるように、バルコニーのすみで庭園を見ていた。



「聖女ローレライ、君は僕の事どう思っている?」



「そ…れは、敬愛(けいあい)しております。」



「そう、ではなくて。」



「あ…あの、親友のカリナが嫉妬すると悪いですから、今日はもう…おいとまします。」



そこで召使がリアルに何事かを伝えに、控えている。



「なんだ?」



王太子が尋ね、召使は話しだす。



「それが、婚約者のカリナ•オルデウス様がいらっしゃっています。」



王太子リアルは(いぶか)しがる。



「…?なぜカリナがこんな時間に?」



リアルの夜会に、カリナは招かれてはいなかった。



しかし、緊急事態のため突然、カリナは訪ねて行く。



「王太子様、突然お訪ねして申し訳わけありません。


実はこの度、大変なことが分かりまして。


…こちらです。」



そう言って、カリナは例の行商人が見せた、薬草の伝票を見せた。



王太子は不審がって、カリナを見返した。



「コレは何なのだ、ローレライの署名があるが。」



「実は、ローレライが王太后様に、例の薬草を飲ませるよう、画策(かくさく)していたことが分かりまして…。」



王太子リアルは、ワナワナと怒りで震えだす。



「そなた、自分が何を言っているのか、分かっているのか?!」



「本当です!信じて下さい。」



カリナは必死で訴える。



しかし、カリナはハッとする。



王太子リアルの後ろに、ローレライその人が、控えていたからだった。



「ローレライ…どうしてここに…。」



王太子リアルはカリナに告げる。



「聖女ローレライは、王太后に治癒(ちゆ)の祈りを与えてくれたんだ。」



王太子リアルは、ふっと寂しげに笑った。



「そのおかげで、今日、お祖母様は目を覚ましたんだ。」



だが、王太子リアルは、急に表情を変え、怒りで声を震わす。



「それなのに、君は今の今まで何をしていたんだ!」



カリナは力無く、呟く。



「聖女…ローレライ…」



知らなかった、ローレライが聖女に目覚めていたなんて。



王太子はなおも、カリナを責める。



「カリナ、君は嫉妬(しっと)に狂って、聖女ローレライをおとしめようと、しているんだな。」



「お願いです。信じて下さい!」



「こ…こちらに、証人の行商人の女もいます!!」



行商人の女が引っ立てられて来る。



しかし、この女はこう言って、王太子を捲し立てる。



「王子さま、騙されちゃいけない!!


アタイは、このカリナとかいう女に、頼まれて嘘の証言をするよう、ここに連れてこられたのさ!!」



カリナは悲鳴のように、叫んだ。



「あなた…!!なんてこというの?!!」



王太子リアルは、侮蔑(ぶべつ)の表情を浮かべ、カリナに言った。



「カリナ、君には失望したよ。」



そして、静かに宣言する。



「誰か、この者を独房(どくぼう)に入れておけ」



そう言うと、衛兵はカリナを拘束する。



カリナは衛兵に引っ立てられていく。



「待って下さい!お願いします!」



そこに聖女ローレライが割って入った。



「王太子様!」



「カリナを責めないで下さい。王太子様の愛を失うのが怖くて、このようなことを、しでかしたのです。」



王太子は聖女ローレライの話しに耳を傾ける。



「どうか、処罰などはお考えにならないで、一生のお願いでございます。」



王太子リアルはその言葉に感動している。



「ローレライ君はなんて素晴らしい人なんだ。」



そして考えを変えた。



「わかった。この女の罪は許そう。」



王太子はカリナをキッと睨みつけ、こう言った。



「だが、このような王太子妃は、ごめんだ。」



そう言って、カリナの腕を乱暴に引っ張る。



「今、ちょうど夜会中だ。」



そう言うと、夜会の会場の中心に、強引にカリナを引っ張っていく。



会場の聴衆は何事かと、王太子たちを眺めている。



今宵(こよい)、この時をもって、


カリナ•オルデウスとの、


婚約を破棄させてもらう!!」



ざわつく会場、ほくそ笑む、聖女が見えた。



カリナは絶望で目の前が、真っ暗になる。



頭の中は、ひとつの言葉がぐるぐると回る。



『もう、愛も何も、信じない。』



─ひとまず、


王妃の嘆願(たんがん)のおかげもあり、


カリナ•オルデウスの王太后、毒殺騒ぎは、証拠不十分として、不問となった。


あとがき


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!!」


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― 新着の感想 ―
お世話になっております。X企画へのご参加、ありがとうございました。 ひとまず婚約破棄の真相まで読ませていただきました。 カリナちゃんしんどい……! 魔王様のちょっとうぶな感じがかわいくて好きでした…
21章の褒めント  いやぁ、神様って慈悲があるんでしょうか。たしか、カリナは慈悲の神様にお願いをしたわわけで、ローレライに神が微笑んだということになりましたが、慈悲の一つもない女神だと思いました。たぶ…
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