20話
20.章 意外な人物
─聖女。
数千年に一度、現世に現れるとされる、奇跡の乙女。その治癒の祈りにより万病を癒し、時に人を蘇生させる。また、あらゆる奇跡をおこすともいわれている。
東スタン通の外れ、ドブ川のような、川にへばりつくように、東スラム街がある。
そこは、汚水と瓦礫に囲まれた、悪臭漂う、貧民窟だった。
まさか自分が、こんな所に足を踏み入れるなんて、カリナは夢にも思っていなかった。
カリナは、信頼している従者から、例の行商人の女がここらへんでうろついていた、という情報をつかんでいた。
カリナと従者は、何時間か粘った後、
この、スラムの街で、薬草を売ってくれた、行商人の老婆を見つけることに成功した。
『早く、薬草の自生している場所を聞き出し、王太后様に解毒薬をお届けしなくては…!』
「そこの行商人の女!待ちなさい…!」
逃げ出す行商人の女を従者は苦労して、捕まえてくれた。
「ちくしょう。なんだって、足がついちまったんだ!あの女は絶対、捕まらないって言っていたのによ!」
行商人の女は激しく暴れて、従者を手こずらせる。
「あなたを、どうこうしたいんじゃないのよ!
ただ薬草の生えてる場所が知りたいだけ」
「ふん!信じないね。」
「『あの女』みたいな、身なりのいいアンタに何がわかる。淑女さまとやらは、アタイたちとは、人間の出来が違うんだろ。いつでも手が切れると思って、馬鹿にして!」
「あの女?……一体、どういう事?」
カリナは少し思案して、穏やかに答えた。
「おとなしく聞かせてくれたら、悪いようにはしないわ」
そしてチラリと行商人の女をみた。
「例えば、お金とか。」
行商人の女は、とたんに、小狡い薄笑いを浮かべる。
「金…。話がわかるじやないか。」
女に金品を渡すと、やけに素直になり。いやむしろ饒舌に、詳細を話し始めた。
「なに、簡単な話さ。お嬢様、アンタにあの薬草を売りつけて欲しいって、そう頼まれただけさ。どんな、病にも効くってね。」
なおも、『その女』の計画とやらを問いただすと、意外なほどあっさりと、吐いた。
「ほら、これが指示書だよ。アンタの屋敷の地図、召使の名前から性格。なんでも書いてあったよ」
「その女の名前は?!」
「それは、金、次第さ。」
「渡すわ。」
老女は、にやにやと、喜んだ。
「実は『女』は名前を…。あの女、素直に名を名乗りやがらなかった。
でも、アタイは馬鹿じゃない。あの女の財布をちょっぴり、失敬してやったよ。
そしたらどうだい、この薬草の伝票に『その女』のサインがしっかり入っていたのさ。」
「ほら、見てごらんよ。」
手渡された、伝票にカリナは目を落とす。
「…まさか…!」
そこにはカリナにとって、意外な人物の名前が書かれていた。
あとがき
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