二十七歳はおばさんですか、、
由香、27歳、女、若年層向けの服屋の店員。
由香は口をとがらせた。
まったくもって幼稚な行為だ。
でもここは自分の部屋。誰もいないし良いだろう。
スマホのプ残りのロフィール記入欄に頭をひねる。
趣味は……なんて書けば男受けするだろう。
買い物?
服買って、アクセ買って、なんて浅ましい女に見られるか?
パフェめぐり。
一見可愛らしいが……。おごってほしいと取られるか?甘党はつれないか。
窓からカタリと音がした。
同時にふわりと風が吹いた。
外の少しひんやりとした空気が入ってくる。
由香が窓を見ると、そこにはネズミがいた。
ネズミは害獣である。
家屋や食料を食い荒らす。
昔ながらの木造家屋に住む由香は、迷いなくスリッパを脱ぎ手に握った。
きゃあ、なんて言って怖がる年はとうに終わっている。じりじりとネズミににじり寄ると、ネズミがたまらず声をあげた。
「ちょっと!!
可愛い僕にひどくない!?
僕は君と世界を救いに来たんだよ!?」
ネズミは金切り声をあげた。
由香は半目になる。
ネズミが喋った??
よくみればこのネズミ、白と茶色の毛並みで愛玩用にも見えなくはない。
しかし尻尾は長い。
由香は胡乱な目つきになり、スリッパを握る手に力がこもる。
ネズミは自身の危機を察してか身震いをした。
「みて!尻尾、ハート型でしょう!?
こんなん普通のネズミじゃないよね!?」
振り下ろされないスリッパを見て、ネズミはわめいた。
言われてみれば、長い尻尾は豚の尻尾のようにくるりと一周輪を描いていて、それはよくみればハートに見えないこともないが、歪だ。
「君は神に選ばれた戦士なんだよ!?」
「神って誰だよ。どこにいるんだよ。
ねぇ、それってつまりはさ、
ただで労働しろってこと??」
ネズミは、後ろを向いてひとりごちる。
「うわー、擦れてる!。これだから年増は……」
「おい、聞こえてんぞ。そんな年増に依頼に来てる奴は誰だよ」
「少子化なんだよ。なり手が足りないんだよ」
「うわー。急に現実的……」
「もう、とにかく時間もない。変身するよ!」
ネズミは、手を振り上げた。
由香の体が淡い色に包まれる。
上下ともにゆるいゆるっとしたラインの部屋着が形を変える。
由香は目を瞬かせた。
体にピッタリとした、いや食い込むようなキツさ。
全てが異様に窮屈で短い。胸は半分丸出しだし、短パンからはおしりは半分でている。黒を基調にしており、レザーのような素材の部分もあるが、レースや網タイツのような素材もふんだんに使われており、露出度満点だ。覆う面積が水着のようだ。
ひざ丈までのヒールの高いブーツに、黒いひじまである手袋。
そして片手には長い黒い棒を持っていた。
これではまるで……
「似合うじゃないか!」
目を輝かせるネズミに、由香の拳が炸裂した。
「このエロネズミが!!」
「私は変態か!?」
「一番君に合うものを選んだのだけど…」
「どういう意味だよ!?場合によってはもう一発だ」
ネズミはおお怖い、と震えてみせた。