「2025年問題」とは何か?
◇「2025年問題」は「日本の社会システムの欠陥・放置」が原因
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は「2025年問題」について触れていこうと思います。
2025年問題とは、
約800万人いる全ての「団塊の世代」(1947~1949年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)となることで、国民の5人に1人が後期高齢者という超高齢化社会を迎えます。
厚労省によれば、75歳以上の後期高齢者1人当たりの年間医療費は90万円といわれています。これは、75歳未満の平均値22万円の4倍もの金額となり、今後日本全体の社会保障費増大が見込まれています。
質問者:
高額療養費の上限が引き上げられたみたいなんですけど、そう言ったことも影響しているんですか?
筆者:
凄い皮肉な話なんですけど、高額医療改定で一番影響を受けるのは現役世代なんですね。
70歳未満の年収の5区分では年900~3万7800円の引き上げになるそうです。
70歳以上の医療費は通院の負担が増えます。窓口負担割合が2割の人については、1万円増の2万8千円に。1割負担の人は2千円増の2万円になるそうです。
質問者:
それって高齢者が増える2025年問題の対策に全くなっていないじゃないですか……。
結局現役世代から取るんですね……。
筆者:
本当に酷い話だと思います。
今の「全世代型保障」の年金・保険制度にはどう見ても限界があります。
厚生労働省の「社会保障の給付と負担の現状(2024年度予算ベース)」というページから抜粋しますと、
2024年度の社会保障関係費は保険料と予算を合わせて137.8兆円になっています。
これだけでも低所得者は15%負担と、とんでもない負担なのですが、現行制度が続いたままですと2040年度には187.3兆円と50兆円ほど増えることになっています。
これは現役世代1世帯当たり1年間で148.9万円の負担増(企業負担分除くと112万円)と月換算でも12万円以上負担が増えることになります。
その間給料は少しずつ上がるとは思いますが「自動手取り減システム」によって全く手取りは増えないでしょう。
2070年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は39%の水準になるという推計ですからここに向けてさらに負担が増えることが予想されます。
質問者:
これについては全く言われていませんよね……。
筆者:
子供は例外として、加入年数に応じた自己積立型保障、年金制度にしていかなくては若ければ若いほど負担が増えるんです。
「制度の持続可能性」を無意味に追及しても意味がありません。
今の「カスのような制度」なら真水国債(返済不要の国債)で補填するか制度を完全解体するかの2択だと思います。
このことは出生率が2.0を切り始めた50年前、「1.57ショック」と言われた平成元年(1989年)には分かっていたはずです。
この「社会保障の2025年問題」というのはシステムそのものが根本的に欠陥を有している「100%人災」であると断言できるのです。
◇「後継者不足の問題」はM&Aを推進したいから
質問者:
後継者に関する問題と言うのもあると思うんですけどそれについてはどうなんですか?
後継者不足により会社が倒産していくかもしれないというお話なんですけど……。
筆者:
皆さん「会社」というと白いオフィスと机にキャスター付きの椅子がずらりと並んだ図が思い浮かぶと思うのですが、現実的に高齢者で跡継ぎが無いという会社というのはそういったところはほとんど無いと思うんです。
建設業や農家といった「自宅兼事務所」の地味なところです。
そういったところが黒字だったとしても後継ぎがいないというのはある意味当たり前だと思います。
子供や従業員が「継ぎたくないと思ってしまうような事業内容」なら厳しいと思いますよ。
例えば、食品衛生法改正で漬物をやっている個人事業主や会社が閉店するという話がありました。
この件は新しく設備投資をする余力が無く、長期的にわたって回収する見込みが薄いために「黒字でありながら閉店」と言ったケースも存在するんです。
質問者:
なるほど、儲かりそうで魅力的な事業内容なら跡を継ぎたいと思いますものね……。
筆者:
継承したいと思わせない会社が無くなるという事については実はさほど問題ではありません。
それより問題なのはこの「後継者不足問題」を盾にして「M&Aを推進する流れ」と言うのが出てきていることです。
2015年から「中小M&Aガイドライン」を中小企業庁が数年に一度改訂を行ったり、
2021年には中小企業経営資源集約化(M&A)税制、M&A後のリスクに備える準備金・設備投資・雇用確保の促進などの方策を打ち出したりしています。
「買い取って事業を続けるのは良いことじゃないか」と思われるかもしれませんが、
買ってくれる先が「日本企業ばかりではない」と言うところに問題があるのです。
継承先が外国(特に中国)であれば事実上の「技術を盗まれる」といった懸念も出てきますからね。
質問者:
なるほど、日本会社が事業継承先とは限りませんからね……。
特に買う相手の規制は無いようですし……。
筆者:
さらに円安も相まって「草刈り場」になっていると思いますよ。
本当に酷い話だと思います。
◇2030年台中盤以降に「地価崩壊」又は「外資侵略」が起きる
質問者:
そうなると、あまり問題が無いということで良いんですか?
筆者:
政治家的な言い方をすれば「ただちに影響は無い」という奴だと思います。
もっとも、現在の社会保障制度が続いて50兆円負担増が自然にかつ静かに発生、
外資に日本の中小企業が買収されていることも問題だとは思いますけどね。
しかし、本当に高齢化関係で問題があるとするなら2030年代中盤以降に起こると僕は考えます。
今から約10年後には団塊の世代の方々が亡くなっていき、「大量相続」が発生していくんです。
ここで相続が起きたらどうなると思いますか?
質問者:
お金を持っている人が増えるという事ですか?
筆者:
それもあるかもしれませんが、本質的なことではありません。
団塊の世代はバブル期前後に不動産を大量購入して今も保有している状況です。
郊外の中古不動産を購入する人は少なく、売れたとしても二束三文、もしくは売れない可能性もあるでしょう。
古い家屋は解体費用もかかります。
自宅を売却しようにも、よほど立地のいいところでないとなかなか難しい状況になるのです。
そうなるとどうなるか? 「地価の崩壊」が始まるのです。
質問者:
な、なるほど……でも、東京オリンピックの後地価が下がると言われていましたが、今も下がっていませんよね?
筆者:
2030年台に「土地・家屋がバンバン売れる」という状況も実は問題です。
もちろん日本人はその間もずっと減り続けているわけですから、後から買っているのは誰か? と言えば外国人の方々です。
土地の価格が下がっていない場合は「日本人が日本の土地を所有していない」という現象が今もありますが、より加速していくと考えます。
質問者:
確かに今現在も都心の一等地のタワーマンションは外国人の方が多く買っているという話もありますものね……。
筆者:
2024年5月のマンションリサーチ(株)による「東京都湾岸エリアに位置する高級タワーマンションの所有権移転に関する調査」では外国人による所有権移転の比率はおよそ30%という結果が出ました。
今は富裕層が日本に住まいを求めて来ている(中国本土では所有権が無いために所有権を求めて日本にやってきている)段階ですが、中国や韓国の社会・政治状況次第では一般市民層が30年台に押し寄せる可能性もあると思います。
どっちに転ぼうとも2030年台は「団塊の世代からの相続問題」で大変なことになるでしょうね。
質問者:
そもそも、そんなに簡単に外国人の方が買えていることが問題ですよね……。
筆者:
ただ、外国人の土地購入規制って実は結構難しいんですよ。
中国人が本当のオーナーだけど日本人を「名ばかり雇われ社長」にした「傀儡会社」を作って、会社所有で買わせれば、実に簡単に「日本会社所有」で買うことが出来ます。
ただ、中々の金持ちで無いと出来ない上に出資や株式の割合規制をすれば良いとは思いますけど、
現状の日本政府が「それ、インバウンドだ! やれ、外国からの投資だ!」
で、全く規制してくれる気配は無いですけどね。
質問者:
日本人を豊かにして国内を回して欲しいですよね……。
今のままだと将来不安で貯金するばかりでしょうに……。
でも、何かシステムを改善したところで「2030年代問題」って解決しそうに無いですよね……。
筆者:
日本には「新築信仰」があって、新築しか売れないことが問題だと思いますよ。
住宅取得控除など税制控除で有利になっている点がありますが、今団塊の世代が住んでいる家が空き家になることを回避することは困難だと思います。
郊外の住宅地などが一番危険じゃないかなと思いますね。
(逆に中古で良ければ10年待てば郊外一戸建てを安く買えるでしょう)
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は「社会保障の2025年問題」は「人災」であること。
「後継者の2025年問題」は「M&A推進策」であること。
本当に地盤沈下が起きるのは2030年中盤以降の「団塊の世代相続のとき」だという事をお伝えしました。
今後もこのような政治・経済、社会問題について個人的な解説を行っていきますのでどうぞご覧ください。