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二十四 立川男子

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 ともに修羅場を経験すれば、その人となりが分かる。ルビーはおのれの力を嫌悪している。なのにそれへすがるしかないから、泣きながら術を叫んだ。俺のために……。

 車のガラス越しに真夏の日差しを感じる。ドロシーはどうしているだろう。


「まどろみで別の人を思うのはやめてください」

 ルビーの声が隣からした。

「なおもこの車は攻撃されていません。でも慢心できません」


 ルームミラーに映るのは短い黒髪のやや強面だけどありふれた男。虚ろな眼差しのまま黙って運転を続けている。

 ……俺はほとんど寝てないな。眠れるはずないよな。ルビーはもう髪をさすってくれていない。緊張した横顔。前だけ見ている。まだホテルの寝間着。その下は透けたネグリジェらしいけど、……便器に顔を突っ込まれたよな。アンヘラは水を流したよな。殺そうとはしなかった。


 濡れた前髪。おでこが赤い。そんな人に俺が聞くことは。


「ルビーは俺を冥界送りできるかな」

「哲人さんでも失礼すぎます。できるはずないし、あなたを死なすはずありません」

「そういう意味でなくて」

「そんな場所に顔をだすのは狂ったアンヘラ一味だけです。一緒にしないでください」

「ごめん」


 予想外に強い口調に頭をさげる。でも思玲を助けに行かなきゃ。俺以外に誰がいる? それもまた楊偉天の狙いだとしても……。

 まだだ。隣にいる人より強くて頼りになる人と再び一緒になってからだ。


「私こそごめんなさい。でも魔物みたいに扱れたみたいで」

「俺のが化け物だよ。冥界には何度か顔だしている」

「え?」

「この話題はやめよう」

「……はい」


 俺は半裸のままでリュックサックを抱えていた。ルビーは気にしない。緊張したまま。ドロシーなら戦場だろうと赤らんでちらちら見てくるのに。史乃だったらくすくす笑うかな。

 後部座席の窓はスモークが張ってあって、景色はほぼ見えない。それでも車が何もなかったように行き交うのは分かる。俺達が乗ったカスタマイズワゴンRもありふれた速度で進んでいる。


「どこへ向かっている?」

「さあ。さきほどサンドがボンネットで姿をさらしました。私達への威嚇です。……逃げ場はありません。被害を減らすために人の少ない場所を探しています」


 ルビーの能力を活かすのは人間が多い場所だろ。言えるはずない。

 エイジとヒューゴは俺達との関わりを断つのを望んだ。影添大社宮司の証である剣を手にしたのだから充分だろう。それを手に、はやく日本から抜けだすべき。俺ならそうする。

 だけどリーダーであるアンヘラは俺達に執着したようだ。怒りの持続こそ強い力。戦いはまだまだ続く。


「近くに競馬場がある。広いのは確か」

 人口密度も低いだろう。


「馬はいますか?」ルビーに聞かれる。


「平日は開催しないし、夏場は地方だったような」

 課金せぬうち飽きた育成ゲームでの、うろ覚えな知識。


「つまりいないのですね」

「そこまでは分からない」


 ルビーは馬が傷つくのも恐れるのか。俺だって犬や猫も巻き添えにしたくない。……聞いてもいいよな。


「ルビーは馬や猫にも術をかけられるの?」

「好奇と恐れで見られるのには慣れている。でもきっぱりと教えておきます」

「俺はそんな目で――」

「丸焼きのローストチキンも屠殺されたての豚も操れません。人だけです。……レーストラックの状況が不明ならば向かうのをやめましょう。どうせ先回りされるだけ」

「そうしようか」


 話題は現れては踏みこまず消える。隠密の飛び蛇がうっとうしい。俺の飛び蛇はどうなっている。

 ここまで一番手強かったのはアンヘラよりガラガラヘビのサンド。紫毒に耐性がついたのに弱った瞬間を狙い噛まれた。二重の護りを出し抜いてだ。あの蛇の首を握る千載一遇の機会があったのに、視覚に怯えて離してしまった。明らかに賢いサンド相手に二度目があるとは思えない。


 車が信号で停まる。いつまでドライブは続く。操られて運転する男こそ、忌むべき世界に引きずりこまれている。はやく解放してあげたい。


「攻撃されないのは結界のおかげかな?」

 いまも車内はほんのりラベンダー色。


「そうだと思います。ここは住宅地の一角。私達を車からあぶりだしても、さっきの繰り返しになるだけ」

 ルビーが握ったままの天宮の護符に目を落とす。


 誰かと連絡を取りたい。ドロシーのスマホがリュックの外ポケにあるけど電源が入ってない。トラップが仕掛けられていたらと思うとスイッチを押せない。腕が消滅したアンヘラを見た以上はギャンブルできない……。

 ルビーも俺に癒しを授けられた。あれこそ賭けだった。さもなければ浴室で死んで……ゾンビになっていたかな。

 俺から彼女の唇を奪ってしまった。サンドに見られたかどうか。伝令のため不在だった可能性もあるけど、あの視覚をドロシーに見せられたくない。でも焼けただれた全身で必死に唇にすがる様は、ドロシーでもさすがに。


赦すしかないけど……罰として、いまここで私も君に癒しを授ける、へへ


 その展開こそあり得る。

 サンドは、史乃の俺への告白を編集してまでドロシーに見せた。いやらしすぎるが、決着がついたら女性陣と距離を開けるべきだな……史乃か。丸い瞳。あれだって奇跡的愛らしさ……。

 俺はほっぺたをつねる。痛い。つまりルビーのは、傷を全回復させるだけの理想的な癒しだった。残り続ける疲労感は心因性だろう。


「私は人の声の日本語を理解できないので」

 ルビーが体を伸ばし運転手の頭に手を当てる。

「国道20号線を都心方面へ走っているそうです。このままでよろしいですか?」


 峻計みたく脳内を読んだのか。傀儡を完璧に我が物にしている。おぞましく感じようが、いまは彼女の忌むべき力にすがるしかない。


「うん。日暮里へ向かうように命じて」

 膠着状態を打開するにはそれしかない。


「それならばエルケ・フィナル・ヴェラノが殺戮を始める」

 即座にアンヘラの視覚が届く。肩にはうたた寝のチコ。


「僕らはハカの上で昼寝してるから、ルビーちゃんは好きなだけ死んだ人を操りな。腐るまで」

 その背後でヒューゴが中指をたてる。その更に後ろは空。


 事前に用意しやがって。だが影添大社に近寄るのさえNGか。


「チコが巨大化したらおなかをすかせるはず。人だらけのなかでアンヘラでも制御できないかも」

 ルビーがつぶやく。


 視覚が消え、虚ろだった景色が戻ってくる。ガラガラヘビがボンネットでとぐろを巻き、尻尾を立てていた。


「サンド。俺達にどうしてもらいたいんだよ」


 偏執的に狙われるだけなら覚悟を決めないとならない。人なき場所で果たしあうしかない。

 また視覚が上塗りされる。


「松本が持つ珠を寄こせ。それで手切れにしてやる」


 アンヘラが望むのは、奴に切られかけた股間の玉。であるはずなく九尾狐の珠。なかには人を異形に変える青い光の残片……。


「わかった。持っていけ」

 俺は抱えていたリュックを開ける。

「ルビーは封を解除できるかな?」


 空っぽにしてからサンドに渡そう。そして俺は青い目になる。


「封じるどころか開封? やり方さえ知りません。そんな高度な術は鍛錬を積まねば無理です。そもそもたいていの魔導師は、魔物を封じた聖なる道具など見たことない。閉ざす開ける以前にです」


 そんなレアな術だったのか。ドロシーが特異な存在だったのを再認識する。


「やっぱり九尾狐の珠は渡せない。代わりに現金でどうだ? 100万ドルで手を打とう」


 返事が戻らない。サンドは伝令に向かったのだろう。……どうせドロシーの金からだし、目減りしない四十六億円の、これこそ有効活用だ。事後承諾してもらえ。問題はリュックに現金がなさげなこと。

 それでも漁ってみる。やはり心に念じようが財布もカードも通帳も印鑑も現れない。覗いてみれば、ドロシーの着替えが畳まれて見えるだけ。カモフラージュだろうけどやけに量が多い。奥行きがありすぎて、ただのリュックの真似は破綻している。

 とりあえずペットボトルを心に思う。ドロシーの飲みかけが現れた。


「私にください。ずっと飢えていた」


 ルビーが奪い口をゆすぐ。うわっ、座席の床へ吐きだした。……残りをごくごく飲み干す。ペットボトルを足もとに捨てる。

 目で追えば、すね毛と黒のボクサーパンツが見えた。


「拾っておいて」

 俺は飲料水より自分の服を心に思い、赤いシャツ(ドロシーが選んだ)と白いチノパンを取りだす。


「護りの術がかかっている。かなり強そう……。ドロシーさんの術ですか?」

 ペットボトルを足で運転席の下へ蹴とばしながら聞いてくる。


「たぶん彼女の式神がかけた。ルビーも普段着になるべきだよ」


 心惜しいけど狭い車内で着替えながら告げる。着るなりシャツ一枚が冬服ぐらい重くなる。心を読むエイジやハカ対策に聖なる九尾弧の珠をポケットにしまう。


「どうしたの? 俺は覗かないよ。目をつぶっている」

「日本人は今なおジェントルマンですね。信じますけど、いきなり襲われたので衣服は棚に入れたままです。上着ならマリオネットから奪えますが、さすがに下着は避けたい」


 だったらドロシーのを……絶対に怒るだろうな。この逃避行だって不愉快だろう。史乃なら自分の着ている服を脱いで渡してくれそうなのに。その下はやはりノーブラ……。

 窮地だろ。煩悩遮断しろ。


「どこかで買おうか。どうせ襲撃されない」

「財布も置いてきてしまいました。バックパックは洗濯するものが入っているぐらいでほぼ空っぽ。ショッピングセンターで略奪しましょう」


 女子は魔道士だろうとお泊りで私物をテーブルに並べるのか。あのマーキング活動がなければ出発前にいらいらされないで済むのに。

 車がまた目的もなく動きだす。


「ドロシーのを貸す」

「恐れ多くて借りられません」

「俺のせいにしていい」

 現金をリュックに入れなかったせいにしよう。


「正直に言います。そろそろ月に一度が始まりそう。汚すかもしれない」


 生理か。そういうところも魔道士は人の子か。ドロシーはその手の話題を徹底的に避けるけど、まさに月に一度ほど誘っても断られる期間がある。その時がそれだろう。彼女は血や汗など人である匂いを病的に避ける。自分のものでも。俺の以外は。


「松本のパトロンが金持ちなのは知っている。200万にしよう」

 いきなりアンヘラの視覚が届いた。腕を組んでいる。

「一番スマートな決着だな。引き渡し場所を決めろ」


 さすが悪党だ。ここにはないと答えるべきか。下手すればよけいに怒らせてしまう。というか……かすかに浮かべた笑み。こいつはあきらめてない。


「剣も返して。哲人さんが更に100万ドルだす」

 ルビーが見えないサンドへ独断を訴えた。


 また沈黙……。


「ここに一円玉もない」

 サンドが伝令で消えていそうな隙に小声で伝える。


「え? 私がホテルに置いてきたのも100ドルぐらいだけ。追われる身なので、カードも電子決済も使えません。でも立川の人々からかき集めれば」

「それはしない」


 本当のお金持ちは現金を持ち歩かない。本当の貧乏人は現金を持ち歩けない。逃亡者に金はなくても、傀儡の使い手には必要ない。それでも立川市民から一人三千円寄付してもらわない。そもそもすでに国立あたりだろう。


「あいつらが司命星剣を手放すはずない。交渉が決裂するだけです」


 ルビーが正面を向いたままで告げる。黒い瞳。横顔も美人。品ある声もよい。ネイティブだから当然だけど英語はドロシーより流暢。面持ちに幼さは感じられず、ホテルの味気ない寝間着の襟をただせばドキリとさせられるのは、スリムな体形に胸が成長曲線反比例だから。その下は透けたネグリジェか……。男子だから気になるのは仕方ない。


「すべて合わせて500万。それでよければ多摩霊園で取引しよう。その場での交渉なしだ」

 エイジの視覚が届いた。背景はタクシーの車内。その手に白銀の光沢を帯びた剣が現れる。

「これを持つと異形に嫌われるからな、嫌われ者のルビーが所有者にふさわしい。お前が依頼者を殺して奪ったものだしな」


 円安150円として……七億五千万円はふっかけ過ぎだろ!

 暗算してしまうと、自腹でないから適当に提示した100万ドル(一億五千万円)だって稟議すべきになってしまった。インフレすぎる。そもそもここにない。


「数日だけ待ってくれ」と言って通用するだろうか。……ドロシーなら白銀の剣を欲する。そして俺が彼女を尊敬できる数少ない――数少なくなくはないひとつが、お金の価値を知っているのに執着しないこと。

 金に糸目をつけられないのはコレクターのさが。戦わずに手に入る云々と説得すれば、きっと指のどれかに収蔵するはず。そのために俺が年長の百戦錬磨と猶予時間を交渉――


「だったらボス狒狒のアンヘラに渡すがいい」

 ルビーが態度を百八十度破綻させた。「そして哲人さんが奪還する。交渉は決裂だ!」


 ……また沈黙。サンドは両者へ報告に向かうだろうな。


「あの日本人は貪欲にして傲慢にして心弱かった。ドイメに魂の奥深くまで吸われていたので、救済の手立てはありませんでした」

 ルビーがぽつり言う。前宮司のことだろう。


「人を金で雇い殺させる者に救いはないよ。それを請ける者も」

「それよりドイメの存在を忘れていました。あれは必死になれば昼だろうと一途」


 話題を逸らされた気はするけど、付き合うしかない。


「淫魔と吸血鬼のハーフだよね。知り合い(横根)は吸血鬼を、弔いの祈りで消し去ったらしい」

「ドイメは不死なる死人の娘のくせに完全な死人ではありません(なんだそりゃ?)。聖なる祈りにも耐える代わりに、吸血鬼の仲間を増やせない。精も血も吸い下僕にするだけ。

たやすく狙われるのは、血も精も濃く理性薄弱な者ども。十代後半から二十代前半の男子のほとんどが、それに当てはまります」


 若人を傀儡にするのか。俺も含まれるし厄介と言えば厄介だけど、短時間に不特定多数と何らかの行為をおこなえないだろう。

 ドイメは色白すぎるけど、野の花みたいなおとなしめで可憐なかわいさがある。化け物だろうと見た目は十代半ばの白人少女か……。ターゲットになった奴をうらやましいなんて思わないし、俺も吸われたいなんて思うはずない。


「惑わされないように」

「もちろん。俺はドロシーオンリー……」


 反射的に言ってしまった。ルビーが俺に顔を向ける。


「私は二股許容です」

 またも言われる。「ただし大魔女が認めないならば独占するしかない」


 二十号線が混みだした。もう少ししたらサッカー場。サンドから視覚は届かない。俺はルビーに返事しない。姑息なだんまり。


「話を戻します」

 ルビーが窓に顔を向ける。「いまの男性は性風俗に長けています。昔のように純粋でないので、淫魔といえども簡単に堕とせません。……いつの時代も若い男だけは愚かです。ドイメに唇を当てられ汗を舐められるだけで堕ちます」


「人外にならないなら怖くないよね? ただの男子のまま」

 ただの男子である俺が確認する。


「哲人さんは暴徒と化した罪なき人と戦えるのですか? 淫魔との契約は祓いの術でも消せません。後づけでマリオネットにもできない。汗を吸われただけな簡易なものでも二十四時間は有効です」


 クーリングオフは無理だろうな。……さらに道が混みだした。渋滞の原因が見えてきた。若くて男臭そうな一団が車道を占拠していた。真夏に男だけだから男臭いに決まっている。


「堕とされた立川の男達ですね。電車で先回りしたのでしょう。誘導したのはドイメ」

 ルビーの手に天宮の護符が現れる。


 トラックが隣車線で乱暴に停車した。荷台にも立川の若人が満載。宅配便のトラックも停まる。若い男性ドライバーが荷台のドアを開ける。


「ひゃっほー」

 閉じこもっていた男達が、汗を光らせ半裸で飛び降りてきた。熱中症でダウンした人がいようと。


 これは暴徒ではない。暴力に支配された秩序なき近未来の有様だ。


「ひい、多すぎる……。て、哲人さん、ドイメを探してください。奴を倒せば契約は消える」

 震えだしたルビーから無理難題を頼まれる。


「天宮の護符に頼れ! それを持つルビーは無敵だろ」

「そ、そうでした」

 彼女の手に再びラベンダーカラーが現れる。「淫魔に負けるものか。立川の男どもよ、私に従え」


 掲げれば、男達は襲撃をやめないではないか。まったく勝てていない。

 ならば戦え。


「降りて強行突破する。俺にあの術(一物が勃ってしまう術)をかけろ」

 人でなき力を得れば、立川の男が何人いようが敵でない。


「火蓋を開けるのですね。エラス、ギフィオ、ノマレ!」

 ルビーが天宮の護符を振りかざす。車内が血の色。

「し、しまった。強すぎて、外の人々にもかかりました」

 車外も血の色……。


 ルビーはお笑いでも大蔵司でもない。単に天宮の護符を制御できなかっただけ。彼女が手にすれば予想以上に力があふれることに慣れないだけ。……五感が研ぎ澄まされだした。

 狭い空間。すぐ横にルビー。閉ざされた二人。十七歳の女の匂い。石鹸の香りさえ洗い落とす梓群より肉感的でないか。

 お前は見せるのを焦らしてるのだろ、ネグリジェを!


「ルビー!」

「轢き倒せ!」

「わあ」


 本能のままに襲いかけた俺は、ルビーの掛け声とともに急発進した車内で転がる。……人を跳ねる衝撃が続く。車にぶつかる音も。


「もうやめろ。……男達に術がかかり結果的によかった。跳ね返しをまとった車に当てられようと、忌むべきパワーでほぼ無傷でしょう」

 ルビーが振り向く。

「人でなき速度で追いかけてきますけど」


 俺も振り向き、人でなき視力で黒いスモーク越しに背後を覗く。推しを追う一団は車に轢かれたくらいでは元気そうだが、俺達をあきらめてくれそうにない。だったら先に独占。


「ルビー!」あらためて隣の人へのしかかる。


「いやっ」


 払いのけようとしても俺も人外の力だよ。やってもらいたいんだろ。そのために理性を飛ばす術をかけたのだろ。寝間着を破り裂いてやる。


「哲人さん冷静になって」

 護符を振ろうが無駄。それは俺を守るものだよ。

「サ、サンドが覗いている」


 俺は助手席に目を向ける。ガラガラヘビが姿をさらし浮かんでいた。感情なき瞳で笑っている。

 いいネタを仕入れたと…………。





次回「青空給仕好餌」

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