十年の孤独
哲人さんが消えちゃった。
「冥界送りでないよね」
日本語で聞いてみる。
「ええ。おそらく魄の力で運ばれました」
私が乗る白いペガサスも日本語に付き合う。
つまり楊老師の仕業か。敵であるのが確定した。躾けて済ませられる相手でないのは分かっている。だから消滅させる。復活させた丸茂の株が落ち、私のはまた上がる。
台湾の森で鳥がさえずりだした。ここでの戦いが終わってしまった。
「ハーブは追跡できる?」
式神には厳しく接するので、ちゃんづけしない。またがるには羽根が邪魔で膝を畳んでいるけど、それは我慢する。哲人さんみたいに足を乗せない。
「残念ながら。申し訳ございません」
「謝らないで」
九郎ちゃんも哲人さんと一緒に消えた。PKの術で天宮の護符をくわえさせたけど……お天狗ちゃんも私の胸にいない。だから君には二重の護りか。私は心配し過ぎるな。
哲人さんが死ぬのを想像できない。異形となって復活するのがまだ想像できる。
思玲と京は冥界へ送られたらしい。大蚯蚓ちゃんを躾けるのに京と二人だけで行ったけど二度とごめんだ。哲人さんがいないと無理。……京がいれば思玲は安全。京が連れかえるかも。だから心配し過ぎるな。なんにしろ哲人さんと合流してからだ。
「ハーブ。これからどうすべきかな」
「まずは陳さんを助けましょう」
「私は癒しを与えたくない」
もう哲人さん以外と唇を合わせない。ハーブの上で重ねたばかりだし、へへ。
「あの程度の傷でしたら、いまの医学なら死なすことはございません。傷は残ろうとひと月で回復するでしょう。麓の医院に運びましょう」
昼間の人の世界か……慣れないとな。いつまでも哲人さんとデートできない。いつかセントラルで腕を組んでショッピング。数万ドルを私のためにって贅沢しないと使いきれないよ。愛想笑いを浮かべる店員を想像するだけで吐き気がする。
「まずは自室へ戻る。侵入者対策にとてつもないトラップを仕掛けておく」
「陳さんを放置するのですか?」
「ちょっとだけ」
「かしこまりました」
*
私は人の感情を読むのが苦手だ。どうすれば喜んでもらえるか、何をすれば怒られるか、いまひとつ分からない。
『梓群や、おのれの身に当てはめて考えてみなさい。自分が望むことを与え、望まぬことを遠ざけるから始めよう』と、おじいちゃんに言われたことがある。実践したら尚更相手を怒らせてしまった。怯えさせてしまった。
だけど哲人さんは違った。私が何をしても怒るだけ。私から逃げないし媚びない。夜起こせばすぐにやさしい目を向けてくれる。……だけど私は人の心がわからない。哲人さんが本当に私を好きなのか、それさえ確信もてない。
信じろ!
君が私の体だけが目当てでないのは分かっている。私の胸や太ももばかり見るのに、我慢していてかわいい。キスで舌入れようとしたのはひいたけど……。
セックスか。私に許されるだろうか。こればかりは仕方ないよね。食欲や睡眠欲以上に遺伝子に支配された欲望だ。おかげで私はパパとママから生を授か……のもとに現れた。
それに私は知っている。一部の魔道士は食事や睡眠を抑えた反動で、そもそも心壊れていたとしても、不特定多数と体を重ねているらしい。気味悪い。真忌ぐらい気色悪い。
京や丸茂もそっち系に近いかもな。哲人さんは、こっちの世界に関わる物珍しい一般人。それでいてかっこいいから狙われる。だから私と愛しあっているのを脚色して教えておいた。それでも手を出すのが狩人と宇宙人。どれだけ威嚇しても足りない。
性欲に忠実に。いずれ私は哲人さんと本当の意味で愛しあうだろう。そしたら結婚するしかない。私には赦されなくても君となら平気だ、へへ。
なんて何度も思っている。肌がひりひりするほどきれいにしてから君の部屋に向かったこともある。それでも欲情の手を伸ばされると避けてしまう。
やっぱり自分を赦せない。快楽に浸ってはいけない。体が望もうが耐える。望まれようが逃げる。それが自分への――ドロテアへの罰だ。
とりとめなく思いながら部屋のトラップを完了させる。これで私とハーブと思玲だけしか入れない――忘れていた! トイレとの仕切りもないシャワールームで拾っておいた意味がでた。哲人さんのあそこの毛で術を追加する。君もこの部屋にいつでもどうぞ、へへ。
中国へ向かう予定だったから、ここにストックしてある着替え全てをリュックに入れてしまった。右中指に隠してあるのは一週間前の汚れもの。哲人さんの部屋で得意げに披露しかけて慌てて消したけどそのまま。
失態だ。自分のだろうと洗わずに着たくない。
裸になりながら自慢の本棚を眺める。これらの書物を記述した人達はどんなだっただろう。いまは私の蔵書。あなた達の智は私が成就させてみせます。だけど足りないよ。肝心な部分への追及が――妖術を生みだすことを恐れぬ気概が足りない。
窓を開ければ山の空気。誰もいない。また一人だけ。ぼろぼろになった血まみれの服を術で浮かばせる。手をカニ型にする。
「噠!」
私がちょっと本気を見せれば、ハーブの護りがかかった服だろうと微塵も残らない。
「噠!」
洗濯する時間がないので、中指に隠してあったお古も紅色に消滅させる。シャワーもしたいのに。
右手に赤い護布を現す。それだけを体にまとう。恥ずかしいけど我慢する。前で結べばマント代わりになるし、私にちょうどのサイズだ。お尻もぎりぎり隠れる。
「では、ばあやのもとへ向かおう。どうせなら台北の大病院にしてあげよう。姿隠しは厳重にしてね」
前のお毛毛を手で隠しながら、戻ってきたハーブへ告げる。
「ドアと窓ガラスに張り紙をしておくべきでは?」
「ぷやう」
私の部屋へ無断侵入するものに警告など不要だ。またばあやのスマホへ電話する。つながらないまま……。
「ハーブ待たせてばかりでごめんね。一階にも用事があった」
私はドアを閉めて階段を降りる。ハーブが天井をすり抜けて現れない。ばあやのコンディションを確認に向かったのだろう。それくらいの独断は許している。
まずはばあやの部屋を開ける。明かりが差しこまず香が染みついた狭い部屋。市販品の観音様や神様だらけ……この箱があやしい。だって罠が仕掛けてある。だけど私はあの人の呪いなど素手でも平気。
誰もいないから、そっと手刀。
「へへ、あった。ちょっと借りますね」
独り言だって君と同じ言語だ。それを九尾狐の珠の代わりに右薬指へ隠す。
続いて思玲の部屋に向かう。散らかったままの部屋。掃除を手伝うのはすべてが終わってからだ。いまはベッドの枕の下へ手を差しこむだけ。
「もちろんこれも返す。いつか」
私は土色の扇をひろげてみる。台湾流の型で突きだす。マントがはだけた。
「うん。ほどよい強さ。しかも固そう。すぐに壊れない」
この驚蟄扇なら私の術を制御できる。人相手に強烈な術をださずに済む。燃える京を二度と見なくていい。しかも私は聞いている。この扇特有の術を……耀光舞。
光が敵をついばむ残虐な術。素早く勘が鋭いものでも逃げきれない。丸茂の躾けに打ってつけだ。私なら出せるに決まっているから、一段落したら必ず手合わせさせる。
「ドロシー様。陳さんの出血はとまりません。そろそろ時間切れになります」
ハーブが戻ってきた。
「ちょうど済んだ。出発しよう」
扇を左薬指に隠し部屋をでる。またふらっとした。寝ないと根本から回復しない。
*
玄関でハーブに乗り、血まみれのばあやのもとへ戻る。七葉扇経由のPKの術でハーブの上に乗せる。
昇おじちゃんの離れにも行きたかった。思玲がいない隙に漁りたかったけど……哲人さんを探す前にもう一度来よう。私ならおじちゃんの術を消せるかもしれないし、もしかしたら私にはトラップが発動しないかもしれない。
「出発しますので、陳さんをしっかりお抱えください」
「いやだ」
血みどろに触りたくない。ステップみたいな空間移動が始まる。結界へずり落ちたばあやがうめく。
この人はもともと忌むべき力が弱いうえ齢を重ねかすんできた。ただの人に戻っていく。同じ空間にいるのが気持ち悪い。だけど我慢しよう。
優秀なハーブは万が一のため、病院の救急口をポイントにしてあった。ハーブが頃合いを見定めて姿隠しを解除する。私はPKの術で入口へばあやを飛ばす。ちょっと強すぎた。ドアに当たり音が響き渡る。これで誰かすぐに現れるだろう。
さてと。いよいよ哲人さん探しだ。その前にシャワーを浴びないとな。汗くさいまま抱きついてしまうかも。しかも全裸で。
「思玲の家へ戻ろう」
「ドロシー様はすこしも匂いませんので、体を清める必要ございません。それと、離れに入れるなと思玲様に懇願されております」
先回りされた。たしかにハーブのおかげで傷と血は消えたけど、京と戦った汗は……自分の脇をチェック。人間の匂いはしないから哲人さんの真似して、シャワーはもう少し汚してからにしよう。戦いの予感にうずうずは、まだしないけど。
「では楊老師のアジト跡に行こう。いなければ、さっきの島と島へ向かう。いずれかにいる」
裸でだけど、哲人さんには目をつぶっていてもらう。どのみち何度も見られている。
「……理由は?」
「魄は抱えれば命あるものを運べる。だけど長距離なら哲人さんに反撃される。だから近くて監禁できる場所を選ぶ。老師は中国大陸に入れないから海峡を越えてはいない」
「楊は九郎も抱えたのですか? ドロシー様も知らない秘密アジトの存在とか、その考えには穴があります。そもそも時間が経過しすぎて――」
「試す価値はある。視認するなり即座に消す」
「……かしこまりました。ただちに向かいましょう」
「ひええ……」
いきなりポイント移動の連続。景色が瞬時に変わる。私はハーブの背にしがみつく。
気づけば影添大社の無人島だった。日差しがきつい。口を潤したくてもリュックサックは哲人さん。
「どこからも邪悪な気配は漂いませんでした。見落とした可能性は多少ながらございます」
私は考える。哲人さんは殺されていない。どこかで拷問されていて明日処刑の可能性ならある。ハーブは謙遜したけど楊老師の痕跡を見逃すとは思えない。ならば冥界……即座に連れ去れたはず。殺せたはず。
「もう一周しよう。今度は少しだけゆっくり」
「承知しました」
「ひえええ……」
*
私はしつこいから吐き気を我慢してハーブに四周してもらった。だけど見つけられなかった。
ハーブは病院を見おろす空で停止する。ばあやはもういなかった。
「どうなさいますか?」ふらふらの私へ聞いてくる。
私は折坂ちゃんに電話する。
『はぐれ魔導師どもが立川周辺で騒動を起こしました。宮司は執務室長とともに内宮へ移動し、私は唯一無二の砦として……松本? ご一緒でないのですか。ならば殺されたのでは――ひっ、
い、幾多の護り授かる星のあの男が簡単に死ぬはずなくても、ドロシー様の胸は不安で張り裂けそうでしょう。なのに私は宮司を守るで精一杯……大蔵司の所在を知りませんか?』
「見かけたら帰社させる」
電話を切る。……ふう。電波越しに怯えられた。ため息ついてしまう。
火の粉が飛ぶのだけ恐れている。所詮は内輪のドタバタと思われている。その通りだけど、でも龍が関わっているのに、やはり影添大社はあてにならない。
「哲人さんが持つスマホはつながらないまま。私のサブのスマホにも。だから不夜会と十四時茶会に頼んで老師狩りをする」
仕方ないけどそれしかない。だって私は非力だった。逃げられれば魄一体さえ追えなかった。
「そろそろシャワーを浴びたい。だけど思玲の家には戻らない。近くのホテルにしよう」
気づけばもう十三時だ。夜に備えて仮眠しないとな。
「フロア全体へ人除けを張りましょう。着替えもどこかのお店で拝借します」
「ありがとう。下着は沖縄まで行って日本製にして。ついでに炭酸水」
高級そうなホテルのベランダにしゃがみ鍵が開くのを待つ。夏の昼でよかった。
その時間にスマホをチェック。ずいぶん前に麻卦からメッセージ……剣を取りかえし盗っ人に罰を与えたら日本円で十五億? 誰が請けるものか。司命星剣は欲しい。
丸茂からもメッセージがあった。
『四川省に到着したよ。松本の飛び蛇とも会えたのでパンダ狩りの手伝いさせる。めちゃ強い人がいれば、そっちは平気だよね。日本語読めるよね』
弱いくせに素敵なまでの悠長。それは強者の特権だ。
丸茂は知恵足りぬ系ではない。ならばささやかな嫌がらせか。
『ニョロ子には(メッセージではちゃんづけしない)すぐに哲人さんを探させろ。台湾で楊偉天(メッセージでは呼び捨てる)にさらわれ行方不明になった。
オセロパンダは躾けるだけ。狩ったら、私が貴様を狩る。アプリで翻訳してない』
日本語は慣れると拼音より打ち込むのが簡単だ。だけど文面が難しい。ちゃんと伝わったかな。
続いてデニーさんの溜まったメッセージを確認……片手落ちだけどさすがだ。返信は……すごく幸せ。やっぱりあなたは素敵だ。にしよう。
『我很高兴! 你还是那么棒♡』
もちろん簡体字で送る。ハートマークは哲人さん以外に特別サービスだ。絵文字は礼儀としておじさん相手にやめておく。
知らぬ間に解錠されていた。窓を開けて入れば、ハーブはすぐに消える。忙しいけど頑張って。
空虚な部屋。異形がいようがいまいが私は一人きり。さっきまでいた窓の向こうは賑やか。
私には哲人さんがいてくれる。素敵なダーリンが。短所は悪びれることない浮気性だけど、卒業したとニョロ子ちゃんから聞いている。それに、そのおかげで思い続けた人を捨て、私は一緒になれた。
二度と手放すはずない。君と会うために十年の孤独……千年の孤独に耐えてきたのだから。
君を奪おうとする者は端から叩きつぶす。……ルビー・ハユン・クーパーが関わっている気がする。アメリカからご丁寧に繁体字で送られたデータの通りなら、正直言ってアンヘラよりも強敵だ。それでいて極度のメンヘラだから哲人さんに惹かれるかも。
『このタイプは惚れた異性に執着するよな。閉ざされたコロニーにそこそこが現れれば自分だけのものにしたがる』と、思玲が資料と私を見比べながら言っていた。
奪われるなよと匂わせていたんだ。ようやく気づけた。そして哲人さんは、そこそこどころか外見も中身も完璧だ。
ダーリンのストーカーになるなら徹底的に痛めつける。だけど奴のホームでは絶対に負ける。勝てたとしても後味悪いだろう。あの夜のように忘れられなくなる。十年以上過ぎようと。
「お待たせしました」
ハーブが戻ってきてくれた。着替えをくわえている。
「へへ、お疲れ様」
哲人さんだったら更に良かったのに。「護りの術をかけてくれたんだ。ハーブのは強くて軽いから助かる……。桜色のタンクトップは胸があきすぎだ。ショートパンツは灰色で地味なのに短すぎ。下着がいやらしすぎる」
こんなの男性向けエッチサイトでしか見たことない。
「どれもドロシー様にお似合いですよ。慎み深い哲人様も、その姿に再会すれば我慢できません」
「卑猥だ。むずむずするからやめて」
「お爺様かデニーさんに連絡なされましたか?」
「まだ。夜になったらかける。見張りよろしく」
私はシャワー室へ向かう。
*
「ホテルが騒がしくなっています。人除けの術だけでは抑えきれません」
夕方になってハーブに起こされる。
「だったら今すぐ夜にして」
ベッドから上半身をあげる。まだ脈がかすかに暴れる。
「……とてつもない。恥じているのか誘っているのか、大人なのか幼いのか。意識せず惑わし、世界の水平すら傾かす美女。私の見立てに間違いなかった」
「聞いてるの?」
ハーブは雌だけど、私はタンクトップを後ろへ引っ張る。ノーブラなのにすぐに前へ垂れてくるから布団へ入りなおす。同じ柄の衣服をサイズ違いでそろえるなんて見立てがおかしい。ちなみに今はパジャマとして上下ともLL。
「お休みこそ必要ですが、尊重すべき哲人様をまだ探しに向かわないのですか?」
「もう少し鋭気を養う。だけどおなかがすいたから、寝なおす前にハンバーガーを食べたい。ポテトとコーラも欲しい。歯ブラシは備品でなく柔らかめの市販品を使いたい。歯磨き粉はできたら日本製。それとお手入れ用の剃刀もだ。まだ先だけど念のためナプキンも。かさばるから五日分だけでいい。そうそう、下着はあと二日分ないと落ちつかない。
悪夢の前に急いで済ませて……どうしたの?」
またハーブがうっとりした目で私を見ていた。
「言葉のひとつひとつがきら星……。もっと命じて」
「はあ?」
「なんでもございません。サラダとフルーツも手配します」
ハーブは戻ってきたら黒い身体へ変わるだろう。私のために陽から陰へ――ナイトメアと化す。完璧に隷従された主だけが知り得る秘密の能力。
着替えや歯ブラシとかはハンドタオルと一緒にランジェリー袋に入れて、右手中指へ紐づける。ハーブの能力で充電されたスマホはポケットにしまい、左親指をブランクにしておく。
深夜になろうと私は電話を躊躇する。やっぱり君が関わるなら自力で切り抜けたい。私の力でまた出逢いたい。ボランティアならいつでも受け付けるけど。丸茂以外は。
スマホは何度か鳴り、いずれもメッセージだった。
『ニョロ子は斥候したまま顔を見せない。あのデブ蛇は私にもデニーにも従順でない。戻ってきたらすぐに向かわせるけど、なんなら私だけでも帰る』
『お前は不要!』
丸茂のメッセージにむかついたから、返信以降は誰からのも中身を見ず放置する。どうせハーブが電波の状態でチェックしている。重要な情報なら、盗み見を認めて進言するだろう。
合わせて八時間寝たけどだるい。螺旋は控えめに。だけど動きださないとな。君でさえ不安になりだしたかも。
「ハーブ、日本へ行こう。アンヘラ一味を捕らえて尋問する。老師と組んでいるかもしれない」
「それならば服従の真似を続けるハカを狙うべきですが、冥界に逃げられる可能性があります。しかも二日後は新月。復活を見越してわざと死ぬかもしれません」
「ならばヒューゴか」
拷問なんてしたことない。露泥無あらためハラペコちゃんを脅したぐらい。もとを正せばはぐれ魔導師どもにこそ責任あるけど、私には無理。
だからやっぱり邪悪なハカにしよう。あのサソリはロタマモ達と同類だ。痛めつけても私の心は痛まないし、いざとなれば完全消滅させてやるし、アンヘラの加護を逆手にとれば――あれ?
とんとん
風が窓を叩いた。風がないのに。……へへ、猛禽である風軍より先に私を見つけるとは、さすが思玲の式神。ニョロ子ちゃんが大陸にいる現在、次いで有能な道先案内の到着だ。
君を救う戦いの予感はまだ遠い。だけどうずうずしだした。
次章「0.6ーtune」
次回「立川男子」
十一月中に再開予定です。




