第一話 初めの第一歩
「ハレ!あれ出来た!?」
「うるせぇ!と、言いたいところだが… あぁ、出来だぞ!」
工房のドアをものすごい勢いで開けながらハレに聞く。
俺がこうなるのも仕方ない。
今日は俺が、いや俺たちが待ち望んだ「ダイブランナー」のボディの完成日だからだ。
「ダイブランナー」。この2200年において最も流行っているスポーツ。
第二の体とも言える機械の体、「ボディ」にフルダイブ技術を利用して「ダイブ」することでボディを使って斬り合い、撃ち合い、走る。
一つの「ボディ」につく人は二人。「ダイブ」して体を動かす『ダイバー』。
そして情報を送り、視界にマップを表示し、動きをアシストする『サポーター』。
この二人の協力によって一つの「ボディ」を動かす。
そしてそれら五体で戦う。それが「ダイブランナー」だ。
「登録は済ませたんだろうな?」
「当然!」
「ダイブランナー」がここまでの流行を見せている原因はその手軽さにある。
公式サイトの選手登録、そして使用する「ボディ」を用意さえしていればどこにいようが専用のモジュールだけで対戦することができる。
この中で1番難易度が高いであろう「ボディ」も基本セットが十万と少しで販売されている。
「じゃあ、早速行くか。」
「あぁ!」
僕らが向かうは僕らが住んでいるこの「ドーム13」のダイブランナー会場。
車の後ろに「ボディ」を載せて道路を走る。
これがはじめの一歩だと知らしめるようにエンジン音を轟かせながら。
「では、『ダイバー』登録名彼方様、『サポーター』登録名遥様、使用する「ボディ」の提出をお願いします。」
いくら手軽に行えるといってもこの最初の提出から逃げることはできない。ここで提出されたものは公式側で管理される。ただ、管理とはいってもただバトル会場に輸送し、保管するだけで申請さえすればすぐに呼び戻せる。
僕たちは用意していたボディを提出し、チェックからの輸送の時間を含めた待ち時間に入る。
「彼方、動かすイメージはできたか?」
「あぁ、VRゲームでその辺りは復習済みだし、これ以上ないほど体も頭も調子がいい。」
「はっ、言うねぇ!」
問題はオリジナル武装だが…いや、動かす分には問題ない。と言うより、あれを扱えないと俺がダイブランナーに入る理由がなくなる。あれは、俺のアイデンティティだ。
「彼方様、遥様、機体チェック及び輸送、完了しました。ダイブランナーをお楽しみください。」
準備は終わった。そして、この施設にはダイブルームもある。
さぁ、初陣だ。