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異国の舞姫はポンコツ皇子を笑わせたい  作者: にわ冬莉


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罪と罰

「ですから、私は謀反(むほん)などという事は全く考えてはおりませんですっ。今回の件は、ハスラオ様に嵌められただけでございますっ。いきなり船上で謀反の話を持ち掛けられ、協力しなければ殺すと脅されたのですから!」


 涙ながらに懇願するのは宰相であるコムラ・オスイルである。さっき尋問した執事のヤガサ・コールも全く同じことを話していた。そしてハスラオから出た黒幕と思わしき人物の名は、副宰相のキンダ・リー・フェスである、と。


「国王の首を挿げ替えようなどと、よくもそんな大それたことを……」

 大宰相であるエイシルが眉を寄せ、口にする。


 尋問には錚々たる顔触れが揃っている。一人ずつ個別に話を聞いているが、皆、内容は一致している。


 そして次は、実行犯でもあるハスラオの番だった。ハスラオはララナのことも持ち出すに違いない。リダファは少しだけ、不安だった。が、


「国王陛下、恐れながら!」

 近衛師団長が血相を変えて駆け込んでくる。

「どうした?」

「はっ。大変申し上げにくいのですが……その、地下牢に拘束していたハスラオ様が、亡くなりました」

「なんだとっ?」

「なんだって?」

 その場にいた全員がざわつき、椅子から立ち上がる。


「一体どういうことだっ?」

 厳しく問い正す大宰相エイシルに、師団長は汗だくで答える。

「誰かが毒を……盛ったようです」

 再び全員がざわつく。

「一体誰がっ」

「わかりません。地下牢には見張りの近衛が常駐しておりますゆえ、外部からの侵入は難しいと思われ、」

「ってことは、内部にいる誰かが」

 リダファが周りを見渡す。


「今回の件、情報の多くはハスラオが持っていたはずだ。彼なしに真相追及は……、」


 無理。


 例え副宰相キンダ・リー・フェスを尋問したとしても、何の証拠もない。彼を黒幕扱いしたところでただの言いがかりだと言われればそれで終わりだ。それはキンダが挿げ替えようとしている国王ムスファの甥に対しても、そう。ムスファの弟であるデグナーは既に亡くなっている。例え奥方が関与していたとしても、知らないと言われればそれまでなのだ。

 だからこそ、ハスラオは消されたという事になるが。


「迷宮入り……か」

 国王ムスファがぼそりと呟き、椅子に腰を落とす。査問会はこれ以上続ける意味をなさなくなってしまったのである。


 それでも、今回の件に関わった者たちにはそれ相当の罰が与えられることになる。実行犯である近衛兵二名は死罪。リダファを眠らせる手伝いをした女中には国外追放。宰相コムラ、執事ヤガサにはそれぞれ減給と役職剥奪が下された。

執事長はガックリと肩を落とし、息子のヤガサと共に退職届を提出してきたようだが、国王ムスファが説得し、思い留まらせる一幕もあった。


 なにはともあれ、今回の件はこれで幕引きとせざるを得ないようである。

 今回の黒幕が本当に副宰相キンダだとするならば、ハスラオを失ったことで少しは大人しくなるはずだ……と思いたい。


*****


「結局、カラツォでゆっくり遊ぶってことは出来なかったなぁ」


 執務室。

 仕事の合間にふと思い出し、イスタに向かって愚痴のような一言を吐く。


「何を言っているのですか。殺されかけたってのに。あの状況で観光なんかできるわけないでしょうっ?」

「そりゃそうだけどさ」

 新婚旅行、とまではいかなくとも、二人で街をうろついたりしたかったのだ。が、勿論それどころではなく、帰りは大急ぎで迎えの船に乗り込む羽目になった。


「あ、そういえば」

 作業の手を止め、イスタがリダファに向き直る。

「ララナ様の件も有耶無耶になってしまいましたよね、今回」

 そう。ハスラオの尋問前に彼が死んでしまったため、ララナが偽物であるという話が持ち上がらなかったのだ。この事実を知っているのは、リダファと、イスタ、そしてイスタの父であり大宰相であるエイシルのみ。

「もう一度きちんと調べますか?」

 イスタが真剣な眼差しで訊ねる。が、リダファはそんなイスタに首を振ってみせた。


「いいよ。彼女が誰だとしても、もう俺は彼女以外を妻にする気はない。ララナとしてここに来たのだから、彼女はララナだ。それでいいだろう」

「そう……ですね」

 イスタは口を噤む。告げた方がいいのか、迷っていたのだが、わざわざ言わなくてもいいような気もしていた。


 本物のララナは亡くなっていた。


 リダファたちが公務で出ている間、ハスラオに押し付けられた仕事を終えたイスタは、実は極秘裏にニースへ出した手紙の返事を遣いから受け取っていたのだ。

 ニース国王とのやり取りに、こちらが宰相補佐では問題だろうと、事情を話し父である大宰相を巻き込んだ。ニース国王には『この件はごく一部のものしか知らない』と前置きをし、輿入れの迎えの際にどんなやり取りがあったのかの説明を求めた。ハスラオの強引な話の進め方は、やはり暗殺のための駒として花嫁が必要不可欠であったためなのだろう。たまたま妾の子を傍に置いていたこと。その子がララナと同じ年であったことは単なる偶然。


 ニースにはもう、ララナという名の娘はいない。結果的には彼女が、ララナとして残されたのだ。


*****


 そして、そのララナだが、猛勉強の甲斐あって日に日に言葉も上達し、会話もスムーズになっている。時々おかしな言葉を口にしては周りに笑いを提供し、本人もそれを恥ずかしく思うのではなく楽しんでいる様子さえあった。


 リダファとの仲は睦まじく、また、カラツォでの公務も評判が良い。突如、ホールの真ん中で舞を舞った皇太子妃、という看板がドーンと掲げられてしまったようだ。


 アトリス国内でもララナは皆から愛されていた。勿論、謀反による暗殺からリダファを守ったことも多くの支持を集める要因にはなったのだが、何よりその底抜けの明るさに、皆、やられてしまっているのである。


 このまま幸せな日々が続いていく。

 誰もがそう信じて疑わなかった。




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