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ショートショート12月~3回目

他人

作者: たかさば
掲載日:2022/12/03

 ……私の中に、他人が押し寄せる。


 ―――食べたくないの、あまりおいしくなさそうだから。


「……でも、みんな美味しいって言っているよ?」


 食べるのは私なのに、他人の嗜好が押し付けられる。

 私がいらないと言っているのに、他人が絶賛しているからとねじ込んでくる。



 ……私の中に、他人が介入する。


 ―――これでいいの、私はこう書きたいの。


「……でも、こんなこと書いたらみんなに笑われるよ?」


 これを書くと決めたのは私なのに、他人の感想が前提になる。

 私がこれでいいと言っているのに、他人に合わせたものを用意しろと命令してくる。



 ……私の中に、他人が割り込む。


 ―――許せないの、もう、関わりたくないの。


「……でも、普通の人はみんな許しているよ?」


 許さないと決めたのは私なのに、他人のやさしさを求めてくる。

 私が許さないと言っているのに、他人が許しているからお前もそうするべきと押し切ろうとする。



 ……私の中に、他人が割り込んでくる。


 ―――つらいの、逃げ出したくてたまらないの。


「……でも、君より悲惨な人はたくさんいるよ?」


 つらいのは私なのに、他人の状況が立ちはだかる。

 私がつらいと言っているのに、他人の方がつらいのだから我慢しろと抑えつけてくる。



 ……私の中に、他人が割り込んで引っかき回す。


 ―――無理なの、もう、何もできないの。


「……でも、もっと頑張っている人はたくさんいるよ?」


 無理だと判断しているのは私なのに、他人の努力がのさばってくる。

 私ができないと言っているのに、他人が頑張っているからお前もやれると決めつけられる。



 私という人間が、私という人生を生きているのに、他人の常識がまかり通る。

 私という人間が、私という生き方をしたいのに、他人の判断がまかり通る。

 私という人間が、私でいたいと願うのに、他人の決定がまかり通る。


 君という人間は、たくさんの人に支えられて生きてきたんだよ?

 君という人間がいるのは、たくさんの人に助けられてきたからなんだよ?

 君という人間になるまでには、たくさんの人に学ばせてもらってきたんだよ?


 他人が、私を、支配してくる。


 人は、一人では生きられない。

 人は、一人では生きていけない。

 人は、一人で生きていてはいけない。


 自分以外は、他人。

 自分以外の人はみな、他人。


 自分以外の人たちもまた、他人に囲まれている。


 他人だらけのこの世の中で、自分という命を永らえる。

 他人だらけのこの世の中に、自分という命を持て余す。

 他人だらけのこの世の中が、自分という命を蔑ろにする。


 他人が作った食べ物を食べ。

 他人が作ったシステムを使い。

 他人が作った常識に囲まれて。

 他人が作った世界で生きる。


 他人の中に、私がいて。

 他人の中で、私が藻掻き。

 他人の中を、私が生きる。


 他人は、私ではない。

 私は、私だ。


 私は、他人にとっては他人だ。

 私は、他人だ。


 他人など、嫌いだ。


 他人の作ったものを使うくせに。

 他人の発言を利用するくせに。

 他人に紛れて、安心するくせに。


 他人も、嫌いだ。


 自分も、嫌いだ。


 みんな、嫌いだ。



「僕は、君が好きだよ?」



 たった一言で、焦る自分が嫌いだ。



「私は、嫌いだよ」



 可愛くない、自分が嫌いだ。



 抱きしめられて、顔を赤くする自分が嫌いだ。

 頭を撫でられて、涙が出た自分が嫌いだ。



「僕は、君が好きなんだよ」



 ……私は、私が、嫌いだ。

 ……私は、他人が、嫌いだ。



 嫌いな人しかいない、この世界で。



 私は、私が好きだという、他人のために。



 大嫌いな、他人の、手を……取った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさかのビックリ。いい話だなー。 [気になる点] この主人公、ああ、白魔道士ですね。
2022/12/03 20:49 退会済み
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