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第五話 育成

 

(まずはどうにかして、第五部隊の皆を育てないとな)


 第五部隊の者との邂逅の後二日を経て、悠斗は第五部隊の部下全員の確認作業を終えていた。そしていくつかの事に気付いていた。

 一つは今のままでは絶対に、人間の軍に勝てないということだ。これは相手に勇者がいるからという訳ではない。純粋に第五部隊の者達が弱すぎるのだ。

 特に今のままでは部隊としても成り立たない。奇襲部隊や遠距離部隊といった者達はいるが、あまりにも人数が少なすぎる。


「どうするかな…」

「何がだ?」


(昔は人数がいたから、成り立っていたのだろう。だが遠距離部隊と言っても、たった数人で何ができるのか…。このまま部隊を分けて人数を割いていては囲まれて各個撃破されるのが目に見えている)


 彼はシャクナが横にいることも忘れ、一人思考に没頭する。元々兵士として訓練を受けた訳でも、軍師としての経験がある訳でもない。そう簡単に良い答えを見つけられることはなかった。


(先にレベル上げか?)


 そしてもう一つ気付いた点。それは魔族が総じてレベルが低いということだった。

 魔族は人間とは違って種族特有の能力を持っていたり、身体能力や魔力が元々高い者が多い。そのため、修行や特訓といったものの存在を知らないのだ。

 その上、魔族は魔物から狙われることがない。魔物の仲間という訳ではないが、魔族は魔物に近しい何かがあるのだろう。なので、人間のように魔物を倒すということもない。よって、レベルを上げる機会が殆どないのだ。


(それに経験値の問題もあるか…)


 彼が色々と話を聞いたり鑑定でレベルの確認を行った結果、強い種類の魔族ほどレベルが上がり難いことが確認されている。

 魔族は人間と違って、種族によって大きく能力値が異なる。

 例えばレベル5のゴブリンがいたとして、それでもレベル1のオーガには勝てないのだ。そして同じ数の魔物を倒しても、オーガはゴブリンと同じレベル5にはなれないということだ。

 ジョンや他のリーダー格の者達の過去の戦いを聞いた彼は、一人でそこまで推察していた。これは異世界物の本やゲームから得た知識があってこそ、さらには鑑定スキルがあってこそ、そこに目を向けることができる。

 日本から転移して来た彼ならではの推察力だった。


(ゴブリン等は簡単にレベルを上げることができるだろう。だが、戦力に関してこの先頭角を現すはずの者達は、そう簡単にレベルを上げることはできない。効率よくレベルを上げる方法はないのか?)


 戦場を何度も生き抜いてきた古参の者や戦場に立ったことのない新人達を除いて、今戦場で役に立っているのは下級種族と言われる魔族達だ。

 早熟型と大器晩成型とでも言うべきだろう。

 早熟型はゴブリン達のような下級種族と呼ばれる魔族達で、弱い代わりにレベルが上がり易い。つまり戦闘さえ経験すれば、レベルがすぐに上がってある程度の力を得ることはできるということだ。

 大器晩成型はオークやアラクネといった中級種族と言われる者達。この者達はある程度強いがレベルが上がり難く、ある程度経験値を積まないとそれ以上強くなれない。つまり戦闘を何度も経験してレベルが上がるまでは、早熟型の方が先に強くなるということだ。

 大器晩成型の中にはさらに上級種族も含まれるが、彼等は総じて元々の戦闘能力が高く、戦場に出てもすぐに活躍できる。中級種族よりもさらに必要経験値量が多いが、人間を相手に簡単に経験値を稼ぐことができる。ヘルザードやシャクナが上級種族に含まれる。

 ただし上級種族は、レベルが上がるほどかなり必要経験値が増える。前魔王の時代から、四天王として君臨して戦場を荒らしていたヘルザードのレベルが未だに42なことからも、それは簡単に予想が付くというものだ。

 因みにシャクナはレベル12だったりする。ヘルザードと共に何度も戦場に出て、レベルが上がったのだろう。レベル12とは言っても、彼女は上級種族だ。すでにレベル30以上あるジョンですら、無条件で敬意を表す強さを持っている。


(歴戦の猛者であるジョンですら、軍の兵士二人を相手にするのが限界らしいからな。最低でもゴブリン全員をレベル30以上にしないと、奇策を使っても数の差をひっくり返すことはできないだろう。一般兵相手に一対一で負けるようでは、作戦の立てようがない……)


 一般兵と言っても国の軍隊だ。相応の訓練を積んでいるので、レベルはある程度高い。魔族の中でも下級種族であるゴブリン等では、相手にならないのも無理はない。


「まずはレベル上げを行う。部隊編成を考えるのはそれからだ」


 悠斗はそう言って部屋を出て、シャクナの下へと向かう。自分の考えを伝え、二人で話し合うためだ。彼は自分が兵士の育成方法に詳しくないと自覚している。そのためその辺りのことに詳しい彼女から、お墨付き貰いたかったのだ。

 生まれ故郷を捨てて異世界へとやって来たくせに、意外と思い切りが弱い彼なのであった。


「成程、レベルか…。私はスキルを持っていないので、そういったものの存在が分からない。実際にレベル等というものがあり、魔物を倒すだけで強くなれるのか?」

「それは間違いなく。ですが能力が上昇するだけで、動きが悪ければ一緒です。なので、レベル上げ後の訓練は任せてもいいですか?」

「私も確認はするが、その辺りはレベル上げというものを見てみないとな」

「はい」


 こうして明日、レべルを上げるために魔物を狩りに行くことが決まった。






 悠斗の前に、第五部隊の全員が集まっている。彼はここに来てから全員と会話を交わしているので、彼が隊長だと知らない者は一人もいない。


「それでは皆、魔物を狩って来てくれ」


 彼の号令を受けて、五つの部隊に分かれる。それぞれが別の場所へと向かうことになっていた。昨夜の内に悠斗とシャクナは二人で詳細を詰め、部隊の編成や向かう先を決めておいたのだ。

 第五部隊は百人はいるので、五つに分かれても一つの部隊に二十人近くいる。流石に全員で同じ場所に向かうのは効率が悪すぎるのでこうなった。

 悠斗も一つの部隊について行く。シャクナはシャクナで、別の部隊へと同行していた。


「それでは、よろしくお願いしますね」


 デリスが彼の隣まで来て告げる。


「頑張るのです!」


 さらにナノが反対側で気合の籠った声を上げた。


「皆、頑張って強くなるぞ!」

「「「おおー!!」」」


 道の真ん中に、気合の籠った声が響いた。





「こっちなのです!」


 ナノの声が森の中で響き、そのまま彼女は全速力で飛翔する。その後ろには、猪や鹿のような魔物が追って来ていた。魔族は魔物に狙われないと言っても、攻撃をすればその限りではない。

 彼女は釣り役だった。後ろにいる獣の魔物は、大型小型と大きさは関係ない。そのため普通に戦ったら、二十人いたとしても苦戦することは間違いないだろう。

 特に悠斗がいる部隊はあまり戦闘が得意ではないという斥候部隊や、同じく正面から戦うことがあまりない奇襲部隊が多い。

 レベルを上げるためには、この者達にも頑張ってもらわなければいけない。だが普通に魔物と戦うためには、数で押す必要がある。一体倒すのに数人掛かりでは効率が悪い。そのために策を練ったのだ。


「後は任せるのです!」


 そう言って、ナノが急上昇を始める。空を飛べない魔物達は、速度を落とさずに前進を続けた。その先にいる悠斗達に標的を変えて。


(よし! 上手くいった!!)


「今だ!」

「「「行くぞ!!」」」


 糸に絡め捕られて必死にもがく魔物達相手に、皆が一斉に攻撃を開始する。ナノはかなりの数を釣って来たようで、一人一体を相手にしてもまだ魔物は余っていた。

 魔物達の動きを封じているのは、デリスの粘着性のある糸だ。ここに罠を張り、そこまでナノが魔物を引っ張って来るというのが、今回の作戦だった。


(成功だ。戦闘が苦手な者でも、これならば安全に魔物を倒すことができる)


 この作戦のためにナノとデリスの二人を同じ部隊に組ませ、戦いの苦手な者達を一つの部隊に集めたのだ。


(それにしても、俺の命令をしっかりと聞いてくれるな。俺が隊長だからか、それとも副隊長にシャクナが就いているからか…)


 魔族は会話ができる知能があると言っても、基本は魔物と同じで細かいことが苦手だ。これは人間に勝てない原因の一つでもある。

 獣のように、突っ込むか逃げるか。人間の真似事をして斥候部隊等もいるが、ただ前に出て情報を得るだけで、何かの工作をする訳でもない。

 そのため彼等魔族にとって、このような戦い方は初めての経験である。

 かなり戦い易いと感じた彼等は悠斗に尊敬の念を抱いていたのだが、彼は自分が隊長ということやシャクナの存在のおかげだと思っており、最後までそれに気付くことはなかった。

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