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第四十二話 分析失敗


「やっ!」

「はぁっ!!」


 雑魚と言われるゴブリン相手に奮闘するユリアとミスティ。

 悠斗は二人の戦かう姿を確認しながら、どうして上手く戦えないのかを考えていた。


(二人は間違いなく、ゴブリンよりも強い。新人といえども、今まで冒険者としてやってこれたのだから、ゴブリンでは二人の相手にならない。それなのに、何故集団戦になると途端に上手く戦えていないのだろうか?)


 二人はしっかりと自分達の役割を果たし、ゴブリンを相手に奮闘している。だが、ゴブリン相手に余裕で勝てないという事実に、悠斗は困惑していた。

 一人一人で戦っている時には、上手く戦えているのだ。しかし、連携を取ろうとした途端に上手く戦えなくなる。

 役割の分担は問題ない。元々冒険者として活動していた二人なので、その辺りはしっかりと決まっていた。

 小柄なユリアは、敵と正面から戦わないように器用に動き回りながら攻撃。

 ミスティは反対にしっかりとした体格なので、よくいる冒険者と同じように盾と剣をそれぞれの手に持っている。彼女の役割は敵の真正面に立って戦うことだ。そしてサポートをするように、敵の周囲を動き回ってユリアがダメージを与えていく。

 悠斗が考えても、何も問題のない役割だった。強いて言えば攻撃力が若干足りないが、それは元々攻撃の能力持ちだった者がパーティーにいた名残である。

 二人の実力ならば、ゴブリン相手に攻撃力が足りていないということはない。


「やっ!」

「はぁっ!!」


 再び攻撃を繰り出すが、ゴブリン達は二人の攻撃を回避する。そしてカウンターのように他のゴブリンが二人へ攻撃するため、二人の攻撃の手が止まってしまう。

 お互いに決め手に欠ける戦いだ。

 相手が格下なので怪我の一つもなく戦えているが、これが同格以上の敵であれば間違いなくすでに戦闘不能になっていることだろう。

 二人は上手く戦えない。そしてそれは、悠斗にも当てはまることだった。

 彼と二人の実力がかけ離れているため、どうしても二人が彼の足を引っ張ってしまうのだ。ユリアとミスティは悠斗の動きについて行くことができない。

 そして彼が二人に合わせるのは、逆に戦力の低下に繋がってしまう。


(二人の戦ってる姿を見れば、原因が何か分かると思ったんだけど……。何でこんなにも戦い難そうにしているんだ?)


 彼は自分と共に二人が戦った場合、実力差が大きすぎて互いに邪魔となっているとすぐに分かった。だが、二人が上手く連携を取れない理由が一向に分からない。

 そうこうしている内に、ユリアとミスティの動きが鈍くなってきた。

 二人のスタミナが少ないため、あまり長く戦い続けることができないのだ。

 これは仕方がないことだと悠斗は考えていた。二人が貧民街で生活をしていたと知っているので、体力を付けることすら困難だったのも納得している。


「ここまでだな」

「「「グギャァァッッ」」」


 二人と戦っていたゴブリン達に、彼はさっさと止めを刺していく。元々の実力差が大きいうえに、二人と戦って疲弊していたゴブリン達は、すぐに片づけられた。


「申し訳ありません」

「ありがとう」


 息を整えた後、二人が悠斗へ礼を述べる。その表情は、明らかに暗いものとなっていた。


(明らかに迷惑になっています。ゴブリン相手に苦戦するなんて、冒険者として失格です……)


 ユリアは一人で反省を始める。自分がミスティの足を引っ張っていると考えているのだ。実際に戦闘能力だけを見ればミスティの方が上なので、そう考えてしまう。


(また上手くいかなかった……。沢山活躍して、早くユウトに認めてもらわないといけないのに…)


 ミスティは悠斗の役に立つため、そして彼に認めてもらうために必死だった。

 これが上手く連携の取れない理由である。

 ミスティが活躍しようと張り切っており、ユリアがそれについて行けないのだ。と言っても、傍から見ても分からない程度のものだ。

 ミスティが前に出過ぎているとか、そういった簡単なものではない。それならば、側で見ている悠斗が気付くことができる。

 二人が冒険者として積み重ねてきた者ものが今、二人の邪魔をしているのだ。

 二人だけが分かる動きやタイミング。それが全て、気持ちと共に僅かにズレてきている。息を合わせるという連携において重要なポイントが、上手く噛み合っていないのだ。そしてこれは二人にしか分からない間なので、二人の戦闘を知ったばかりの悠斗では指摘できないでいた。

 彼が冒険者パーティーとして行動をしていれば、今回のことにも気付けたかもしれない。

 しかし、彼はソロで活動していた。軍を動かしたことはあるが、軍では息を合わせるといったことはしない。

 どのタイミングで動くのか、どう動くのかは指揮官が全て指示を出すのだ。そのためタイミングを窺うことはあるが、息を合わせるといったことはしないのである。


「取り敢えず、雑魚と戦いながら連携の確認」

「「はい」」


 二人のために休憩を摂りながら、指示を出していく。


「そのついでに可能な限りレベルアップをしてもらう」

「早く足を引っ張らない程度には強くなりたいです!」

「私も、早くユウトと共に戦えるようになりたい!」


 悠斗の指示を受けた二人は、やる気の籠った声を出す。


(俺もまだまだだな。シャクナだったら、もっと上手く二人の連携力を上げることができるはずだ)


 彼は彼で、自分の実力不足を実感していた。

 二人の頑張っている様子を見て、上手く二人の実力を引き出せないことを申し訳なく思っていたのだ。


(二人を誘ったのは俺だ。しっかりと面倒をみなければ)


 彼等が連携を取れる立派な冒険者となるには、もう少し時間が掛かるようである。

これ以上進むと長くなりそうだったので、途中で話を切りました。

おかげで今回は少し短くなってしまいました。

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