きょうふのおうさま
おうさまはニコニコとしています
おうさまはニコニコとしています
むかしむかし、色んな人を怖がらせるという怖い怖い悪魔のおうさまがいました。
悪魔のおうさまは、とっても強くて、剣でさされても魔法で焼かれてもニコニコと笑っていました。
おうさまを刺した剣士は両腕をちぎられ、魔法を向けた魔導士は両腕を焼かれてしまいました。
おうさまは優しいので、命を奪ったりする事はなく剣士も魔導士も家に返してあげました。
腕を無くした剣士と魔導士を見た街の人達は、2人の姿を見て怖がってしまい、泣き出してしまう人もたくさんいました。
おうさまはそんな街の人達と、腕の痛みに苦しんでいる剣士と魔導士を見てニコニコ笑っていました。
ある日、おうさまの前に1人の男がやってきました。男は町の人達から勇者と呼ばれていました。
勇者の魔法はおうさまを焼いて、勇者の剣はおうさまに深々と刺さりましたが、おうさまはニコニコと笑っていました。
勇者は驚くことなく、懐から白く光る球をとりだすとおうさまに向かって投げつけました。
ニコニコ笑っていたおうさまの顔が痛みに悶え苦しむ顔にかわり、白かった球は灰色に変わっていました。
おうさまが倒れて動かなくなるのを見た勇者は、灰色の球を懐にしまうと、おうさまの座っていた椅子に座りました。
◇
街の人々は勇者を歓迎して、新しいおうさまにしました。おうさまになった勇者は町の人々の顔を見てニコニコとわらっています。
おうさまは、人々の笑顔を見てニコニコと笑って、悲しい顔をしているの見て一緒に悲しんでいました。
おうさまが夜寝ると、前のおうさまが現れニコニコと笑っていました。
おうさまがお仕事に疲れてウトウトすると前のおうさまが現れて、街の人達をいじめてニコニコとしていました。
街の人達がおうさまに色んなお願いをして、お願いをかなえてくれないと知った街の人達は怒ったような顔をしていました。
怒った顔をした人達をみた王様は悲しい顔をしましたが、街の人達はもっと怒った顔をしました。
その日の夜、おうさまの見た夢では街の人達を剣で刺して、魔法で焼いて、ニコニコとしている前のおうさまがいました。
おうさまはニコニコと笑っていました。
街の人達は今日も怒った顔でおうさまにお願いに来ています。お願いを聞いてくれないおうさまにみんなもっと怒っていました。
おうさまの目には街の人達が刺されて、焼かれる幻が見えていましたが、それはいけない事と思っていました。
おうさまの懐にある灰色の球は黒っぽい灰色に変わっていました。
◇
おうさまは毎日見る夢の中で、街の人達を刺して焼いてニコニコとしていました。
街の人達は今日も怒っています。剣を使える男の人と、魔法が使える男の人が前に出てきました。
おうさまは懐にある球を取り出してみたら真っ黒に染まっていました。
おうさまは剣に刺されて、魔法に焼かれてしまいました。とっても痛くて苦しい思いをしました。
真っ黒になっていた球がパリンと割れると、おうさまの苦しい思いは無くなりました。
剣で刺されて、魔法で焼かれて立っている今のおうさまをみて、みんな悪魔だといいました。
悪魔と言われたおうさまは、自分を刺した男の人と魔法を使った男の人の腕を焼いて、ニコニコとしていました。
その日の夜に見た夢には前のおうさまは出てこなくて、おうさまがニコニコと笑っていました。
次の日の朝にはおうさまはニコニコとして人達を見ていました。
おうさまはニコニコとしています