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姫と騎士  作者: いつき
短編
59/127

間幕 日常

 本編とは違う雰囲気なのでお気をつけて。

『白鳥の湖』(パロディーのような、パロディーでないような)




「オデットがティア姫?? え、プルーじゃないの?」

 エイルが不満そうに声を上げた。そこには配役が書かれた紙が握られている。

「王子が誰になるかで変わるんじゃないかしら」

 あなたのお相手はアレク以外にいないと、そう言いたいのですか??

「ティア、お願いだから仕事して」

 書類を両手に抱えているアレクは半ばあきらめた表情でティアを見ている。一度こうなったら、もうなすすべがないことをよく分かっているらしい。

 劇などに興味はなさそうだ。

「エイル。お前いい加減にしないと、本気で怒るぞっ」

 こちらはプルー。

 アレクよりさらに多い量の書類を両手に抱えている。鬼気迫っているような様子が垣間見れ、現在劇どころでない様子がよく伝わる。

 しかしエイルはそんなのを一切無視して、未だにその紙に見入っていた。

「俺が王子役ね。プルーがオデットで、姫様はオディール、する?」

 テキパキとした支持はさすが隊長と褒めるべきか、隊長らしく仕事しろと怒るべきか少々迷う。

「勝手に何決めてるのー。私、悪魔の娘じゃない。それに、オデットとオディールって本来同じ人がやるんでしょ」

 ティアがエイルからその紙を奪い取った。劇って城以外で見たことないのよねーと言いつつ、最近はやっているらしい城下の劇が見たいともらした。

 最近、町へ降りられないのが目下の悩みだ。

「えー、両手に花かと思ってたのに」

「エイル、殺されたいらしいな、お前」

 エイルの言葉に、アレクは書類を丁寧に机に置き、腰に佩いた剣を抜いた。その目は冗談ではない。

「アレクの目が本気なんですけど、どうすればいいですか。姫様」

「そのまま刺されればいいんじゃない?」

 にこっとティアの美しい笑顔が向けられた。

 美しいには美しいのだが、満面過ぎて逆に嘘くさい。

「ひどっ」

「えー。ひどくないわよ」

「ひどくないな」

「ティア様のおっしゃるとおりだ。一回、死んでその不真面目さを直して来い」

 三者三様の返事が返ってきて、しかしどれもエイル自身を心配する声はない。……残念なことに、全てアレクの味方をする声ばかりだ。

「俺一応、隊長なのに」

「隊長なら仕事しろっ!!」

「アレクを見習いなさい。いざとなったら降格して、プルーを隊長にするわよ」

「その方がいいかもしれないな、騎士のために」

「あ、そういえば、どうするの『白鳥の湖』」

「「「あ……」」」


オマケ


「でも『白鳥の湖』って本来、来世で結ばれるって話でしょ。王子ダメよねー。どうして見分けつかないのかしら。そこは愛の力かなんかで」

「ロマン小説の読みすぎだと思う。魔王の魔法なんだから、しようがないんじゃないか?」

「えー。そんなもんなの?」

「そういうもんだろ」

「そっか。アレクはわたしとわたしのそっくりさんを間違えるのか……」

「俺は」

「ん?」

「俺は、見分けられる自信があるよ。王子ではないけど」

「本当?」

「本当」

「そっか。なら安心だ」



――――――――――――――

バカップル……にならないこのシリーズの不思議さ。





『居眠り』



 コンコンと小さなノック。それに答える人はいない。そっと扉を開ければシン、と静まり返っていた。

「リシティア様?」

 呼んでも返ってくる返事はいない。確かにここにいるはずなのに。午前中はずっと執務室で書類整理のはずだ。

 そっと部屋へ入り込むと人の気配は感じられた。

「ティア?」

 人がいないのをいいことに、呼び名を変えても返事が返ってくる気配はなかった。執務室の机に向かうと、高く積み上げられた書類と本に隠れていた人間が見える。

「ティア」

 しかし、返事は返ってこない。それとともに、スーっという寝息が聞こえ、思わず笑ってしまった。天下の白薔薇姫と呼ばれる少女が――弱冠十六歳で王代理を務めている姫君――が居眠りをしている。

 まだあどけない寝顔は少女が十六であるという事実を思い起こさせる。ここ数日の激務が堪えて寝不足なのは知っていたが、ここまでとは、と眉をひそめる。

 人の気配に聡いティアが気が付かないほど深く眠っていることが分かり、そっとマントを脱いでかける。蒼のマントがティアの肩から下を完全に覆ってしまった。

 それでもまだ起きないティアに笑いかけ、耳元で囁く。

「早く起きないと、どうなっても知らないぞ」

 それでもまだティアは寝たままだった。


――――――――――――――

 妖しいのか、妖しくないのか。




『シンデレラ』(多分パロディー)



 あるところに、とても美しい娘がおりました。

 しかし意地悪な継母のせいで、毎日毎日働かされているのです。

「灰被りー。はーいーかーぶーりー??」

「お母様なんでしょう、っていうか、わたしがこの役ってどうなのよ! 正真正銘の姫なのに。

 その前にその呼び方止めなさい、格好が悪いから」

 しかも灰被りって、日本語訳もいいところだろ。

「あら、灰被りちゃん。今は美しい継母にいじめられる、可哀想な子の役よ。わたくしの言うことが絶対なのよ~~。

あらあら、ここにもここにもほこりが。ちゃんとお掃除したのかしら? コレだからダメなのよ、お姫様育ちは(アドリブ)」

 美しい金髪に碧眼の少女は、持っていた箒を軋ませながら言葉を返す。

 母国では白薔薇の姫君、と呼ばれている自分が、何故こんなことを、と思いながら。

「お母様。申し訳ありません、すぐにお掃除しなおします」

「そうしてちょうだい。わたくし、今日は舞踏会ですもの。お洒落して行かなくっちゃ」

 じゃあ、よろしくねー、と声をかけて、女性のわりに背の高いその人は行ってしまう。

 少女はそれを見送ってから、小さく毒づいた。

「エイル~~。次の遠征はどこがいいから、そんなにわたしに歯向かうのかしら……??

それとも、よほどプルーと離れ離れになりたいのかしら?」

 そのあとやっと、決められた台詞を可愛らしく言う。見目がいいだけあって、さすがに様になっていた。

「わたしも、舞踏会へ行きたいわ。でも、そんなドレスないし」

 よよよ、とハンカチで目元をぬぐうことも忘れない。

「なんと可哀想なシンデレラ。私が舞踏会へ連れて行ってあげましょう(超棒読み)」

「あら、あなたはだあれ? どこから入ってきたの。不法侵入でしょ!! (素が出る)」

 黒い髪の毛の青年は台本片手、格好は騎士の制服のまま登場した。

 やる気がなさ過ぎる気がするが、少女は気にしない。

 いちいち止めていたら、この話は完結しないのだ。

「あー。もう帰っていいですか? 私、用事があるんですけど」

「わたしだってあるわよ! 今日までの書類とかっ」

「じゃぁ、帰りませんか。どうせあなた、舞踏会なんて出飽きてるんだし。踊りなれてるんだし。王子に会わなくてもいいじゃないですか」

「えっ。ええぇ!!」

 ひょいっと少女は男に担がれる。微妙に気を遣っているようで、裾がめくれ上がることもなかった。

「話の進行は??」

「えー。エイルがするでしょう。帰りますよー。夜は長いですからねぇ」

「ちょっと。おーろーしーてー」

「王子様に会いたいんですか? 小さい頃は『わたしの王子様はアレク』とか言ってたのに」

 ぼっと少女の顔が赤くなり、青年を睨みつける。しかし青年はそんなもの気にしていないように歩を進めた。

「う、うるさい。舞踏会で素敵な王子様を探すのよっ」

 意地になっている気がしないでもない。

「ふぅん。そう」

 しかしそう言われても、青年は端正な顔を崩すことはなかった。代わりに綺麗な笑顔を浮かべる。

「でも。俺、十二時までとかだと、少し短いな。まぁ、逃がすつもりもないし??」

「このっ。離せ。セクハラっ」

「同意の上での行為はセクハラではないんですよ。帰りましょうねー。ティア」

 ばたばたと青年の肩の上で暴れているが、少女が逃げれるはずもなく……。

「いーやー。アレクの馬鹿ぁーー」

 少女の声が響くだけだった。



オマケ

「エイル、美人が来るんじゃなかったのか」

「えっと。魔法使いさんが攫って行ってしまいました」

「あー。アレク様が。と、いうかな、正直、それ似合ってないぞ」

「えぇー。嘘ぉ~~」

「可愛らしく言っても気持ち悪いだけだな」

「プルーは似合ってるよ。王子様のパンプキンパンツ」

「煩いぞっ。刺されたいのか」

「いやだなぁ、褒めたのに」


――――――――――――――

王子様に会わないシンデレラ。

魔法使いさんにさらわれるシンデレラ。……一番目立つ継母さん。

シンデレラなのに、掃除もまともにできない姫君です。




『カーテン』


 しゃっとカーテンが閉められる。外はまだ明るいのに、部屋の中が暗くなった。

「いきなり、何?」

 わたしの声はわずかに震えている。

 その声の震えを分かっているように、アレクは近づいてきた。

「手、貸して」

 もう敬語でもない。騎士の仮面さえつけていない。彼は彼だ。

「ど、して」

「いいから」

 少しだけ苛立った声で、逆らえないような強い調子で、少しずつわたしに近づいてくる。

 逃げることが出来ない、イスから立ち上がることも出来ない。思考が停止して、近づいてくるアレクを見ていた。

 ぐっと、手を引っ張られた。自分の手とは明らかにつくりが違う。その手がわたしの腕を掴んだ。痛いと感じたが、言葉を出せない。

 ただ、びくりと恐れたように肩が上がった。

「怖いの?」

「何で、怒ってるのか分からないから」

 怖いのかもしれない。

「どうして、俺がこうしてるか、分からない?」

「分からない、の」

 どうして、何故怒っているの。わたしが何をしたというの。

 すっとアレクの顔が下がって、左の手の甲に口付けられた。すっと下がって、今度は指先にキスをされる。

 触れるだけ、すべるように、そっと押し付けるように、触れられる。

 もったいつけるような、微妙な感覚だった。

「まだ、分からないの」

「分、からない、よ」

 今度は上がって、再び手の甲に。手首に、腕を上って肘の裏側に。そして二の腕までたどり着く。

 するすると袖が捲り上げられ、布が腕の上をすべる感覚にさえ反応してしまう。


 顔が赤い。絶対、赤い。

「消毒って言ったら、分かる?」

「消、毒?」

「そう」

 腕から少しだけ唇を離して離す。言葉がこぼれるのと同時に、吐息も口から零れ落ちる。それが腕を滑っていく。

 ぎゅっと、捕らえられていない右腕が肘おきを掴んでいた。

 アレクが話すたびに布に爪を立てる。黙るとほんの少しだけ緩めて、そしてまた爪を立てる。

「さっき、蒼彩国―リュシラーズ―の王子に、同じことされてた」

「同じことって、手の甲のキスしか同じでない気がするけど」

 他国の王子はこんなに執拗に口付けをしない。ただ触れるように、親愛の証をくれるだけ。

「何? アレク」

「いや、男の嫉妬はみっともないと思って」

 そう思うくせに、口に出すことはやめないのね。

「別に、わたしは嬉しいからいいけど」

「いや、騎士道に反してる気がする」

 情けないな、そういってまた腕に口付けを落とすので、その頭のてっぺんにこちらからも口付けを一つ。

「では、女王として情けない話しを一つしてあげる。

ある日ね、塔に登って城の下を見てると、一人の騎士がメイドに囲まれてるの。その騎士、すっごい人気みたいで、メイドが山のように集まってたわ。

で、そのメイドたちが盛んに何か言って、騎士は柔らかい笑みを浮かべたまま頷いてるのよ。

普段はほとんどわたしの前で笑顔なんか見せないくせに。

ものすっごく腹がたってね、その日一日、ひどくわたしはその騎士に当たってしまった」

 どう? 情けないでしょう?

 にっこり笑って見せれば彼は顔を上げて、幼い子どものように頬へキスを一つくれた。

 甘いだけのものでもないし、恋人同士がするようなものでもない。

 仲のよい二人が自然とするような、そんな頬へのキスだった。

「お互い、気苦労が多いから」

 そしてそっと、触れるだけの甘い口付けを交わした。



 外が見えなければ、夜になれば、わたしは少しだけ王族の任務から離れる。

 国と民を愛しつつ、たった一人を想うようになる。

 罪深いことだと思いつつ、それでも幸福だと、ふとした瞬間に実感するのだ。


 罰でさえ、きっと甘い気がした。



――――――――――――――

えっと、本編では絶対出来ないので。パロディー的な位置で見ていただけたら。本編でこの雰囲気はありえないです。すみません。





『ワルツ』(続編本編に関係がありそうでなさそうな)



「アレクー」

「ティア。どうしたの?」

「踊り、教えて! 父様も母様も、二人で仲良く踊ってばかりで教えてくれないの」

 幼い少女がドレスの裾を翻しながら走ってきた。

 社交ダンスを習う前に、歩き方を習った方がいいと思う、とは言えず、アレクは苦笑した。

 三歳年下のこの可愛らしい友人は、できないと言われるのが大嫌いなのだ。

「いいけど、こういうの、嫌いじゃないの?」

 剣の練習のほうが好きな彼女のことだ。

 自分がダンスのレッスンをするのはもっと先だと思っていた。と、いうか、その前に彼女をその気にさせなくてはならないと思っていた。

「嫌い、だけど、アレクと踊れるようになるんなら頑張る」

 可愛いなぁ、と思いつつ、そっと手を差し出す。

 この王女様は、いつも我がままで、人を振り回して、いたずらっこだけど、ときどき本当に可愛いのだ。人に愛される素質があるのだろう。

 王族なら、それでいいのかもしれない。


 少しだけわがまま。

 少しだけ気まま。

 少しだけ意地悪で、少しだけ恥ずかしがりや。

 寂しがりやで泣き虫で、そしてとっても可愛い我らが王女。


「えっと、ワルツで、いいかな」

 最初にワルツを踊ろう。

「えっと、男女は向かい合ってね、そう。もう少し近づいて」

「でも、三歩以上近付いてはいけないんでしょう?」

「これは特別。正式なダンスだから。肩に手を置いて、あー左手だけ。右手はこっち」

 すっと右手を背中にやると、びくりと震える。

 あー、怖がらせてるのは分かっているんだけど、今更止めるのも逆に不自然だ。

「動くのは反時計回り。始めはスローのでやるから、足はゆっくりでいいよ」

 まずは楽しもう。せっかくのダンスなんだから、どうせなら楽しく踊って欲しい。

「リズムは音楽を聴いたら自然と分かるし、あとはステップか……」

 もうその時点で、ティアはそわそわしていた。

 確かに、動き回っている彼女にゆっくりな音楽は合わないかも。

「早いのにしする? たとえばこのくらい」

 ぐるり、と彼女をフロアへひっぱりだす。ステップの知らない彼女はついていくのに一生懸命だ。

 うん、本当は無理なリードってよくないけど、これくらいなら、許されるだろう。

「ステップ! 教えてよ」

「そんなの後からでもできるでしょ」

 グルグルとまわしたり、時々歩いたり。

「あぁ、一つだけ。女の子はこのステップの始めに後退するよ」

「どっち? 両方?」

「どっちだっけー??」

 わざと教えてやらない。ステップなんていつだって覚えられるし、いくらか踊ってしまえば身につくものだと思う。

「アレクー」

「右だよ。右」

 彼女が確認する前にまたターン。そしてステップ。

「足、意識しすぎ。布の靴なんだから、少々踏んでも痛くないよ。俺は普通の靴だし」

「でも、踏んじゃったら……」

「いいから。こっちみて。ティアの顔が見えないと寂しい」

 慌てる姿も可愛いんだけど、やっぱり楽しんで欲しい。

 そう思って、速度をゆっくりにした。今度は丁寧に教えよう。

「ステップには色々あってね、それを組み合わせたりするんだ。でも基本、今からするいくつかを覚えれば、後は大丈夫。男性がリードするから」

「男性が下手だったら?」

「俺が相手してあげる」

 冗談めかしに言うと、なら大丈夫だね、と笑った。

「アレクと今度の舞踏会に出よう。それならきっと大丈夫。母様も父様も『できないのなら、無理しなくいい』って言うのよ。

まるで子ども扱いしてるみたい!」

 いや、してるんだよ、とは言わず、ホールの中央に戻った。

「一曲、お相手願えますか? お姫様」

「……次までにステップ完璧にしてくるから教えて。そしたら楽しく踊れる気がする」

 可愛いなぁ、と声に出さずに笑った。



――――――――――――――

ふっ。ワルツの踊り方なんて知るか!!

といいつつ、調べました。だけど私には絶対踊れない。


ラブラブ度は幼ければ幼いほど高い。

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