表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

三女の傲り

三女視点です。

ユーリ・フラン

私はユーリ、ドール国の辺境伯の三女です。この度6歳になりました。


お父様達からたくさんの贈り物とお祝いを頂いて幸せいっぱいです。


使用人達もたくさん可愛いと言ってくれます。


そう、私は可愛いんです!だってお父様もお母様も私にはとても甘いから!


お父様達は二番目のお姉様には優しいけれど私にするように甘やかすことはありません。


一番目のお姉様においては厳しく、むしろ冷たいと思います。


私は得意げになっていっぱい甘やかしてもらいます。


部屋で一人、贈り物の人形で遊んでいると二番目のお姉様がやってきました。


「お誕生日おめでとう。朝からたくさんの人にあって疲れたでしょう。チョコレートがあるの。お姉様もいらっしゃるからお庭で一緒にいただきましょう。」


チョコレート!私、大好きです!


「本当ですか!?嬉しい!ありがとうございます!だけど・・・」


チョコレートは嬉しいです。チョコレートは。だけど一番目のお姉様もいらっしゃるのは気が引けます。


一番目のお姉様はお父様達から嫌われています。悪い人ではないと思うのですが私もあまり接する機会がなく、疎遠になりがちでどうしたらいいかわかりません。厳しいし、笑った所を見た事がないのです。

お父様達の眼中にないのならどうでもいい人なのでしょう。


「アリエルお姉様がいるなら行きません。お父様達に嫌われたくないですもん。」


するとお姉様が苦笑しました。


「酷い事を言わないで。お姉様は嫌われてなどいないわ。」


反対された事にむっとしちゃいました。


「嫌われてます!お姉様も嫌いです!何でお姉様にそんな事言われなきゃいけないんですか!私の方がお父様達に好かれてます!だって一番甘やかしてくれるし、一番優しくしてくれます!お姉様達とは違うんです!私の方が偉いんです!チョコレート持ってきたら出て行ってください!大嫌い!」


私は激おこですよ。お姉様ごときに口答えされたくありません。


「黙りなさいくそガキ。」


えっ。


突然聞こえた厳しい暴言と低音に驚きました。振り返ってもお姉様しかいません。お姉様が言ったのですか?


「誰が何と言おうとお父様達が最も好いているのはお姉様よ。最も信頼され、期待され、誇りに思われているの。甘やかして貰うだけの貴女など、お姉様の足元にも及ばない。お姉様をよく知りもしないくせにとんだ傲りを覚えたわね。」


いつも優しい姉が無表情で怒っているのはとても怖いです。


「嘘です!私が一番です!だって、だって、」


震える声で反論しますが、怖すぎて言葉が出ません。未だ嘗てここまで厳しく言われた事など誰にもないのですから。


思い返してみるとこの時の自分の行動が馬鹿すぎて情けなくなります。火に油を注いでどうするつもりなのだと。


「あなたは身代わりよ。かつての私もそうだった。お父様もお母様もお姉様を甘やかせてあげられない分、とても甘やかしていただいたのよ。私も自立し、甘える事も、甘やかして貰う事も我慢した分、貴女を甘やかして可愛がっているだけ。もちろんみんな、そして私も貴女を可愛いと思っているわ。けれど話は別よ。お父様達にとって一番に思う娘は貴女じゃない。」


「う、嘘です!ひっく」


私、とうとう泣きました。衝撃が大きいです。


「貴女ごときに何ができるのよ。」


もう我慢できません。大きな声で泣き出しました。怖いです。とても怖いです。まともにお姉様を見る事ができません。


そんなお姉様は私の頰を両手で支え、目を合わせようとしました。


「覚えておきなさい。人を見下せば傷付くのは自分よ。」


はい、今がその時です。二度とお姉様に喧嘩を売りません。絶対に怒らせてはいけない人だと学びました。


私は泣きながらこくこくと何度も頷きました。


「ご、ごべ、ごめんなさ、あい、」


するとお姉様は優しく涙を拭って頭を撫でてくれました。


「はい、許すわ。いい子ね。」


あっさりと許されました。いつもの優しい笑顔です。安心したらまた涙が出ましたが、一番ではないという衝撃は忘れられません。そして一番目のお姉様の話はまだ信じられません。


心中を察したのでしょうか。お姉様が教えてくれました。


「一番とは正しく、唯一を表すの。きっとお父様にとってはお母様が、お母様にとってはお父様がそうでしょう。もしかしたら貴女が本当に一番かもしれないけど、それは今度聞いてみたらいいでしょう。しかし、嘆く事はないわ。貴女を一番に思う方と必ず出会う事ができるからよ。お父様達のように。そして誰かを一番に思うができるようになる。貴女は誰を一番に思う?」


えっと、お父様とお母様と、あれ、一人じゃない。


「まだ、わからないわよね。きっといつか知る日がくるよ。私は今のところお姉様を一番に思うわ。大好きなの。先程の言葉はお姉様の受け売りよ。お父様達に甘やかされていた頃、貴女と同じ失敗をし、自分の不甲斐なさを知ったわ。私の持てる武器は少な過ぎたのよ。二度とお姉様を怒らせたくないわね。」


一番目のお姉様の方が怖いという事ですね。ちょっと思い出し涙が出ました。


「ふふ、それ以上にお姉様は優しいのよ。かっこよくて強くて、美しくて。私の目標なの。貴女がチョコレートを好きだと知り、用意してくれたのはお姉様よ。」


もう、何も言えません。というかとても嬉しいです。


「お姉様が?」


疎遠で、見向きもされていないと思っていました。まさか、という思いで、しかしとても嬉しくて。


「待たせてしまっているわね。一緒にチョコレートをいただきましょう。」

「っはい!」


私の笑顔は満面だったと思います。


三女あるある。「自分がいちばん。周りが見えていない。長女に憧れる。甘え上手。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ