次女の願い
次女視点です。
マリア・フラン
姉が去った後、両親は私に謝った。
「すまない、花を散らせてしまった。せっかく綺麗に育ててくれたのに、つい。しかし、あの子には必要ないんだ。あってはならないはずなんだ。」
「そうよ。そのはずなのよ・・・。」
謝る相手が違うだろうと思った。姉を追いかけるべきだろうと。
様子からして姉に言われた事が堪えているのがわかる。
両親の気持ちもわかるため強く言えないが、子供から見ても情けないと感じてしまう。
しかし、これではあまりにも姉が可哀想だ。
私もそろそろ潮時なのかもしれない。
「お父様、お母様。」
私は涙を拭いて姉がしたようにまっすぐと両親を見た。
「私はお姉様が期待に応えるためにとても努力しているのを知っています。お父様達が厳しくする理由も、本当は甘やかしたい事も。代わりに私をとても甘やかしてくれてる事もわかります。」
わからないはずがない。私達は家族なのだから。誰よりも側にいるのだから。
「だから、私はお姉様に甘えるのです。お姉様とお父様達の間にある信頼とは別の意味で、私だけがお姉様の心に寄り添えると思ったのです。それがお姉様の努力の妨げになるほど、お姉様の努力は小さくありません。それは、お父様達がお姉様を甘やかしても変わらないと思うのです。親に褒められて嬉しくない子供などいないのだから。これ以上お姉様と接し方を変えないのであれば、私も甘える事を我慢しようと思います。」
今までとは違う口調と内容に両親は狼狽えて、しかし何も言わなかった。
私が今まで必要以上に甘えていたのはみんなの望みを叶えられると思ったからだ。両親は娘を甘やかしたかったから私は甘えた。また、姉が欲しがっても買えなかったものも、私が欲しいと両親に言えば手に入れる事ができた。それを姉にこっそり贈ることができたのだ。
もう、その必要は無いかもしれない。
今、きっと姉と両親の間に大きな溝ができたのだろう。些細な出来事でも、信頼し合ってたからこそ接し方に戸惑うはずだ。両親の考えはすぐには変わらないだろうし。
原因の1つである迂闊な自分の行動に辟易した。気を付けているつもりだった。こんな事になるかもしれないとわかっていたのに。
けれど、これからはより多くの時間を姉のために費やす事ができるだろう。
甘ったれな私を疎う事なく、いつも見守り、優しく、時には厳しく育ててくれたのは間違いなく姉だ。ただ甘やかしてくれる両親や使用人だけでは、きっと傲慢に、理不尽な性格になっていたかもしれない。
私は姉の背を見て育った。私の憧れで、目標だ。その小さな手で何度も守ってくれた。
先程、両親に向かい啖呵を切った姉の凛とした美しい背と、僅かに震える手を知っているのは私だけだろう。
どうかお姉様に幸せが訪れますように。
そう願わない日は無い。
次女あるある。「要領良い。姉が手本。人の感情に鋭い。マイペース。」