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異世界で暮らすにも、お金は必要だよね

切り立った崖の上――先ほどいた村を上から一望できる場所に来た。

「自己紹介が遅れましたね。ノクタリア魔道学院から参りました、シルバと申します」


男は会釈をする。

年齢は同じくらいかな。綺麗な銀髪に整った顔立ち――美青年だ。


いやぁ、本当に美青年だ。

互いの鼻先がぶつかりそうなくらい近くにいるのに、ムダ毛が一本も見当たらない。


「ところで、シルバさん、この状況なんなんすかねぇ」

「なんのことでしょうか?」


近い……近すぎるんだよ!

なんでこんな至近距離で話しているの俺達……!


目配せでフーリエに助けを乞う。

だが、さっきシルバから貰った果実に夢中で、気が付いてくれない。


「あの……近くないですか?」

震える手に付いた汗を拭い、尋ねる。


「え、あぁ、失礼しました」

何かに気が付いた顔で、シルバは後ろに下がる。


「申し訳ありません。普段、魔術ばかりの生活なので、あまり初対面の人との距離感を掴むのが苦手で……」


物理的な距離感に悩む人初めて見たよ。

「それでシルバさん。話ってなんですか?」


思い出したかのように、

「単刀直入に言います。私と一緒に戦ってください?」


「戦いって……誰と?」

「相手は、あの村にいる勢力。ローリとアギラです」


「なんのために戦うんですか?」

「法の裁きを受けさせるためです。正確にはローリとアギラに所属する一部の犯罪者を逮捕するために協力してもらいたいのです」


シルバは真剣な目つきで続ける。

「あの村は少し複雑な立ち位置にあります。ここから見えるように、あの村には沢山の人が暮らしていますが、正式には『村』として認められていません」


「それってどういうこと?」

「この土地は四方を危険な森に囲まれた危険地帯で、居住が認められた土地ではないのです。記録はありませんが、200年ほど前に、後ろめたい理由で、帝都に暮らせなくなった人達が、ここを住処にしたと言われています」


危険な森っていうのは、俺が最初に目覚めた、あの森のことか。

「しかし今、帝都ハントヘカテは、ここを村と認めて吸収する計画を立てています。計画が正式に発表される前に、この村にいる犯罪者を捕らえたいのです」


シルバから一枚の羊皮紙を受け取る。

どうやら、捕らえる人間のリストみたいだが。


「ちょっと待ってくれ!俺は戦うなんて一言も言ってないぞ」

貰ったリストを突き返す。


「そこをなんとかお願いします!私一人では対処出来ないのですよ!」

「……相手は何人なんだよ?」


「リストの人物は重罪人のみなので4人ですが、彼らがグループに所属している以上は、ローリとアギラのメンバー全てを相手にすることになるので……戦う相手は二百人くらいですかね」

「多すぎるだろっ!なんで、お前一人の仕事になってるんだよ!」


「ひ、人手が足りないのです!余分な戦力があるなら、とっくの昔に介入していますよ!」

「なるほど。……ちなみに、お給料貰えたりする?」


「私の給料から個人的にお支払いします。ただ、低い給料をさらに割るので……雀の涙ですが」

「……う~ん」


俺が協力したところで、戦力は二人。一人あたり百人と戦う超過重労働&低賃金。

おまけに命の危険も伴う……ニートの俺にやらせる仕事じゃないな。


「お断りします」

「お、お願いします!私はまだ見習いの魔術師なので、決して強くはないのです!」

シルバは俺の両足にしがみつく。


「いやいや!俺なんかそもそも魔術とか使えないし!」

「それでも強いじゃありませんか!三人で力を合わせて戦いましょう!」


「え、三人?」

「はい。私と、水貴さん。それと、フーリエさんの三人です」


「いや、フーリエは女の子だから……」

「彼女はドラゴンだとお見受けしますが?」


何を言ってるんだという表情でシルバは首を傾げる。

「えっと、見た目でわかるの?」


「えぇ、わかりますよ。珍しい種族でありますが」

「……」


「ねぇ、フーリエ、君って強いの?」

フーリエは、果実を食べる手を止める。


「うん!強いよ!」

「どのくらい?」


「うーん、凄く強い?」

「じゃあ、あの村にいた人達と比べたら、どのくらい強い?」


「一人で全員倒せるよ!」

満面の笑みで言い切った。


「わかりましたシルバさん、村のために協力しましょう。分け前は、俺が7割、フーリエが2割、シルバさんが1割でよろしいですね?」


「本当ですか!ご協力感謝いたします!早速ですが、作戦の内容をお伝えします」

シルバは爽やかな笑顔を浮かべ、握手を求めるのであった。


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