頼りない援軍
村を一望出来る崖の上。
そこが、フーリエと事前に話した待ち合わせ場所だ。
俺とシルバが着いた時には、すでにフーリエはゆったりと木の実を食べていた。
どうやら、俺達よりも早く方が付いたようだが。
「えっと、どうしてオーリオさんがここに?」
そこにはフーリエだけではなく、オーリオさんを含む、数人の老人が座り込んでいた。
「いや、ローリのナワバリが騒がしいと思い、見に行けば、お嬢ちゃんがローリの奴らを千切っては投げ、千切っては投げ、乱闘騒ぎなもんで、加勢したんじゃよ」
「なるほど。ちなみに、目標を捕まえることは出来たのですか?」
「あぁ、手足縛って、わしの仲間が見張っとるよ」
小さな岩場に腰を下ろして、
「オーリオさんは、フーリエから作戦の話聞きました?」
「あぁ、全部聞いたよ」
フーリエが作戦のことを伝えられたことに驚く。
作戦の内容、理解してたのか!
「帝都がこの村に介入するという話は真実なのじゃな?」
「ええ、本当です」
シルバは真剣な眼差しで答える。
「ふむ。二百年も放置され続けて、今更、救いの手を……なんて思うがのう」
「そう言われますと耳に痛いです。問題の発覚から対応まで、スマートに進行しなかったのは、こちらの落ち度です」
二百年間、その存在を無視された、名前もない村。
もっと早く来てくれよ……という気持ちはもっともだ。
「この村はわしらの村じゃ。わしらも戦う、そのためにここに来たのじゃ」
「えぇ、オーリオさん!?危ないですよ!」
その時であった。
あぐらをかいていた老人の一人が、突然立ち上がる。
「わしの名はドボルフィッシュ!!」
「あ、はい」
どうしたんだ突然。
怖いこのお爺さん。
「おぉ、そやつはドボルフィッシュといって、昔、棒術の先生をしていたんじゃよ」
オーリオさんが、補足説明をしてくれる。
「わしはマルコハンサ!」
また、一人、老人が立ち上がる。
「そいつは、大工じゃよ。この村にはいくつも、こやつが建てた家がある。力持ちじゃが、腰を痛めて休職中じゃ」
「えーと……」
老人の数は……あと十人はいるな。
早めに切り上げるぜ!
「もういいです。若い奴らには負けないと言いたいのですよね?」
「その通りじゃ。みんな戦いたがっている」
やっぱり、この村、好戦的な人多いよなぁ。
そういう血筋なのだろうか。
「シルバ、どうするよ?」
目配せして、助けを求める。
「へぇ……?あぁ、いいのではないですか。棺桶が怖くないのなら」
うーん。適当だなぁ。
でも、俺とフーリエでカバーすれば大丈夫かな。
「わかりました。一緒に戦いましょう。でも、後衛に努めて下さい。前線は俺がやります」
「了解じゃ、全身全霊でサポートするわい!」
老人達が一斉に叫び声を上げる。
何なんだこの人達。
もしかしたら、この日をずっと待っていたのだろうか。
「この村」を変えるための戦い――火蓋が落とされる日を。
「あの、本当に後衛にいて下さいね」
心配なので、一応、念押しした。
絶対に前に出るなよ!