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The legend begins night

初めましてさんと2度目以降ましてさんもこんにちは。ご無沙汰してしまいました、神尾瀬 紫です。

今回は少し遡って紫づ花と叶多が出会う前の夜の紫づ花の話です。

今後の二人の人生をおもってニヤッとしていただければ幸いです。


重い足を力ずくで持ち上げるように階段を上る。

右手に持ったデイパックが段差に当たりガサガサと音を立てる。

自室にたどり着いた紫づ花は、着替えもせずにベッドに倒れこんだ。

腰を支えるコルセットが苦しいけど、今はとにかく横になりたい。休みたい。

痛めた腰と、自分を嫌う同僚の心ない態度と言葉。そのせいで痛む胃と。

すべて取り出して消し去れたらどんなに楽だろう。そんな魔法が使えたらいいのに。

何度も何度も願った夢物語が日課のように脳裏を掠める。

そんな事考えてもどうしようもないのはわかっている。

辞めればもう少し楽になれるかもしれない。しかしこんな体では次の仕事など見つからない。

田舎の求人事情は偏っているうえに、学歴も資格もないアラフォー女には狭い。

上司は自分が腰を痛めていることも理解してくれているし、自分が思う以上に私に対する不満を受け止めているだろう。それでも辞めないで欲しいと、仕事内容を考慮してくれる。

そんな上司にも迷惑はかけたくない。

その“考慮”が不満の理由だとしても。こんな私でも、いないよりは数字を上げられてるはずだから。

グダグダと考えて、毎日毎朝、気力で動いている。


明日、家から出られないほどの異常気象にならないかな、とか。


車を運転しながら、このままガードレールにでも突っ込めば仕事行かなくてすむかな、とか。


今すぐ、強盗かなんかに襲われないかな、私だけ、とか。


頭を支配するのは逃げる理由。暗い未来。

手元にある腰の痛みを緩和させる薬の残りを数えようとして、無理矢理気持ちを引き戻す。

多分、この薬の量じゃ、うまくイケない、そう考えて。


無理矢理にでも意識をアゲよう。

紫づ花はCDコンポに指を伸ばす。

入れっぱなしのCDは当然、F.a.U Garden。

唯一紫づ花の心をアゲてくれる存在。

ヘッドフォンを装着し、爆音に浸る。

激しいドラムとベースのリズム、歪むギター。

そして心を鷲掴みにするボーカル。

紫づ花は目を閉じて音に体を任せる。

激しく艶っぽく、理不尽や弱さを受け止める歌詞が紫づ花の心に染み込む。

このメロディーとこの歌詞が大好きだ。どちらかが欠けてもダメだ。

覚えるくらい観たライヴ映像は、殻に押し込められている自分を解放してくれる。

そしてきっと、その場に立ったなら壊れるくらい爆発させてくれるだろう。

紫づ花は目を開いた。


明日。


明日は初めてのライヴ参戦。

アルバム発売のリリースイベントの招待ライヴが、当たってしまったのだ。

検索すると、その場所はキャパシティ300人くらいのライブハウスらしい。

そんな狭い空間でKANATAを見られる。

F.a.U Gardenの音に包まれる。

体が軽くなった。

軽いヘドバンをしながら立ち上がって、ようやくコルセットを外し部屋着に着替える。


もう薬の数は数えない。

気になるのは自分の体を支えてくれる薬を、いつ出してもらいにいくか。それは前に生きるための思考。

明日の荷物は万全。

雨の予報はないけど、折り畳み傘まで入ったリュックはパンパンだ。飲み物は途中で買えば良い。

スマホで、駅からライブハウスまでの道順を表示して、何度目かのシミュレーションをする。


まぁ方向音痴が何回考えても道なんて覚えられないし迷うんだろうけど。


それでも、明日。


明日、私は変わる。


きっと私の人生は変わる。変えられる。


もっといい未来を作れる。



そんな予感がした。



ーto be continue...

いかがでしたか?

時々顔を覗かせる病み紫づ花ですが、きっとこの先は愛を抱いて彼女らしく生きていけることでしょう。

もし今回の話が初めてだという方は、ぜひ本編のS.S.Sをよろしくお願いします。コメディ色の強い番外編もたくさんあります(笑)


読んでくださり、ありがとうございました。

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