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ガタンゴトン  作者: すう
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ダイカンパトウライ

「お前、今いくら持ってんの」

タオルで乱暴に顔を拭きながら先輩が呟く。

急に話しかけてきたものだから、つい驚いて「え、俺ですか?」なんて言葉を返してしまった。部室には俺と先輩しかいないのに。

「お前しかいないだろ」、と今しがた俺が思っていたことと同じことを先輩が言ってくる。その顔は少し意地悪だ。

ですよね、と返事をし、自分の財布の中を確認した。



「…1430円っすね」少ねーなオイ。

財布の中に入ってる小銭を指で数えてる自分の後輩にそんなツッコミをしようとしたがやめた。中学生だしまあそんなもんか。

なぜそんなことを聞いたのか不思議そうにしている後輩よ。今から言うからちゃんと驚けよ。

「んじゃ、海行くか」季節は冬だ。



『一日中冷え込みが続く』『大寒波到来』

今朝みた天気予報を思い出しながら、いよいよ先輩の頭がおかしくなったのかと心配になった。何かストレスを感じることでもあったのだろうか。日々の勉強に疲れを感じているのだろうか。さてはて。

そんなことを思う俺が咄嗟に出した声は「は?」

何が言いたいか分かりますか、先輩。



素っ頓狂な声を出した後輩に、思わず吹き出してしまいそうになった。きっとコイツのことだから、俺の頭がおかしくなったとでも思っていることだろう。そう思うならそう思ってくれて構わない。むしろお前が合ってるよ。そう、頭がおかしくなったんだ。だからお前と2人で海に行きたい。

「だから、行くぞ、海。はやく準備しろ。」そう俺が言っても微動だにしない後輩に“パンッ”と猫だましを喰らわせたところでようやく口を開いた後輩。

「うわぁ!!やめてくださいよ!!」

大袈裟だなあ。



やはり今日の先輩はおかしい。だいぶおかしい。

しっかり防寒対策していても十二分に寒い今日に限って海へ行こうだなんて、狂ってやがる。

なんて思いつつも実は少し楽しみにしてる自分がいるのだ。なぜなら俺は先輩が好きだから。もちろんレンアイとしてのあれのあれだ。だけどこの気持ちは墓まで持っていくつもりでいる。なぜなら、先輩の迷惑になりたくはないから。とは言うものの自分のためでもある。単に、傷つきたくない。気持ち悪がられたくない。簡単そうで簡単ではないこの気持ちはきっと頭のいい先輩(あなた)にだって理解できないでしょうね。

「お待たせしました」、と先輩の元へ駆け寄った。先輩、何を思って海へ行くのですか。



随分難しい顔で登場した後輩。海に行くのが嫌なのか、それとも俺といたくないのか。できれば後者の方であってほしい。なぜなら俺はお前から嫌われたいから。でないと未練が残ってしまう。


そう、俺は今日、自殺するんだ。


後輩に恋をした。気づいたら好きになってしまっていた。ずっと一緒にいたいと思ってしまった。抱きしめたい、キスをしたい、ぐちゃぐちゃにしたい。そう思い始めたら止まらなかった。この気持ちはお前に伝えられない。嫌われたくない。引かれたくない。

最近になって、思いが強くなってきてるのが自分でも分かる。だから、お前に酷いことをする前に、俺は死ぬよ。お前に看取られて死ぬよ。嫌な先輩でごめんな。


「ほんとに行くんですか?」行くよ。「寒いなあ、、」肉まん買ってやろう。「!!っしゃあざす!!!」

ほんと、犬みたいで可愛いな。好きだ。

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