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え?自殺したら勇者には成れないんですか?!  作者: としょいいん
第一章
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第4話 命の選択(2)

『コホン……では準備は良いな。これから其方の転生を執り行うが、異世界へ旅立つ者たちには皆等しく神々からの加護が贈られるのじゃ』


 神様がそう言った瞬間、目の前に[勇者]とか[大賢者]といった明らかに何かの物語に出て来る主人公が持つ職種ジョブが、光の文字によって描き出されたパネル状が現れる。

 その他にも[聖戦士]や[大魔術師]、それに[光神官]など華々しい職種ジョブが書かれているパネルも浮かび上がって来た。


『とりあえずこの中から選ぶが良い。どうした? はようせんか、お主の手を伸ばして触れてみるがよい』


(は、はい……)


 神様に促されてオレは目の前のパネルへと手を伸ばしてみたのだが、そのどれもがグレー表示で虚像のように半透明となっており、手で触れる事が出来ずにすり抜けてしまう。


(あの……神様、どのパネルにも触る事が出来ないんですが、これってバグか何かですか?)


 なんかどー見てもシステムの不具合っぽいのだが、仮にも神様が創ったモノなのにそんな事ってあるのだろうか? だがパネルを何度見ても文字は全てグレーで表示されており、もしかしてこれはパソコンなんかで良くある”非アクティブ”の状態なのではないだろうか?


『やはりこうなったか……。お主の場合は情状酌量の余地があるとは言え、既に殺人の罪を犯した上に自殺までしているからの……。普通なら贈られるであろう神々のギフトとも呼ばれるこれらの善なる職種ジョブに就く事が出来ないとは他の神々も厳しい処罰をしたものじゃ』


(え?自殺したら勇者には成れないんですか?)


『何を言っておる……そんな事は当たり前、常識以前の問題じゃろう。勇者とて聖職者の端クレなのじゃから神から与えられた自分の生命を粗末に扱った者が成れる職種ジョブでは無いという事じゃ。じゃがこのままでは其方が余りにも不憫じゃから妾から特別な加護をやろう。どれも特別な職種ジョブばかりじゃから感謝するのじゃぞw』


 するとそれまで浮かんでいたグレーのパネルが一斉に消えると、その下から新しい別のパネルが現れて目の前をくるくる回り出した。


 そしてパネルに表示されている白い文字を安心して読んでみると……。


----------------------------------------------------------------------------------

[盗賊][強盗][山賊][海賊][売人][詐欺師][鬼畜][暗黒騎士][女衒][鬼畜][殺戮者][処刑者][暗殺者][強奪者][受刑者][ヒモ][獣魔人][吸血鬼][不死者][死霊騎士][死霊術師][悪魔神官][淫魔][暴食漢][好色魔][強欲者][憤怒者][怠惰者][傲慢者][嫉妬者][憂鬱者][虚飾者]……etc

----------------------------------------------------------------------------------


 そこには[盗賊]とか[暗黒騎士]などゲームでよく目にするメジャーな職種ジョブの他に、中には[女衒]だとか[鬼畜]なんてどう考えてもデメリットしか連想出来ないものがある。

 他にも[受刑者]だったり[殺戮者]なんて犯罪チックなニオイがプンプンするモノもあって、更には[獣魔人]とか[吸血鬼]などと云った明らかに人間を卒業してしまうなモノまで並んでいる。


 なんかこの中のどれを選んでもハズレばかりのような気がしてならない。それに最後の方に出て来たいくつかの職種ジョブについてはどう考えても天使の軍団に命を狙われされそうな気がするとオレのカンがそう告げている。




『どうした? 遠慮なんぞせんでもよいのじゃぞ? 早うパネルに触れて妾の加護を受け取るのじゃw』


 何故か善行を行ったかの様なニコニコ顔の神様がオレの選択を生暖かい目で見守ってくれているが、この中のどれを選べば良いのか皆目見当もつかない。

 もしこのうちのどれかを選んだとしても、真っ当な人生を歩める日がやって来るとは到底思えないが……オレも男だ。


 異世界へ転生したであろう妹の里奈を守るためにはどうしても力が必要だ。


 だからここで選り好みしている場合では無いのは重々判っているつもりだが、どうしても生理的にイヤだったオレは目を瞑ったままパネルにそっと手を伸ばした。




 するとその直後、頭の中で”ピピン!”とアラーム音が鳴る。


《ジョブ”死霊術師”を得ました》


 あ、何か禍々しいのが貰えたみたい……。


『妹殿の命を奪われた事と自身の手によって死者を作り出した過去によって”死霊術師”の適性を既に得ていたようじゃな』


(ちょ、ちょっと待ってくれ。いくら理由が有ったとは言え、結果としてあの男の命を奪った事は認めよう。でもそれはそうするしか他に手が無かったからだ。決して自分から奪う側になりたいなんて望んではいなかったはずだ……と思う)


『それは妾もちと言葉が過ぎたかも知れぬな……すまぬ事じゃ。確かにお主の選んだ職種ジョブは勇者のように強力な力とか人々に好かれるような訳では無く、大賢者のように万能で使いやすい能力でも無い。じゃがお主が選んだその職種ジョブは一般的には忌職として嫌われておるが、能力だけを見ればそれは素晴らしいものじゃぞ』


 やっぱり忌職だったのか……これ……。加護をくれた本人が必死に良いところをアピールしてくれてはいるが、どうしてもフォローしきれていない感じがする。

 それでもただの村人とか何の力も持たないまま見ず知らずの異世界へ放り出されるよりは遥かにマシな選択なのかな? あの残念な神様の言う事だから効果はいまいち信用出来ないけど、ここはポジティブシンキングといこうか。


 ハァ……。


『ではさらばじゃ、達者で暮らすのじゃぞ。……そうそう、今度また妾の事を残念とか言ったら絶対に泣かしに行ってやるから覚えておくのじゃぞ?』


ここでやっとタイトルのセリフが出てきました。

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