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襲来

 窓から差し込む眩い朝日に目を覚ます。

 私は寝ぼけ半分で身体を転がし、高級ベッドの端から手を伸ばしてカーテンを閉めた。

 薄暗くなる室内。これでもう一度、ゆっくり眠れるーー


 コンコン。


 眠りに落ちかけた意識が引き戻された。最悪のタイミングだ。

 ノックを無視して私は、もう一度ーー


 コンコンコン。


 自分でも眉間に皺が寄るのがわかった。ぼんやりとする意識の中、眠気と苛立ちが混ざって余計に苛立ちが募る。

 無視しようにもノックの音が止む事はなく、それどころか執拗さが増していく。

 限界だ。


「ああっ!」


 やけくそで跳ね起き、まぶたが開ききらないのも構わず騒音を立てるドアを開いた。


「ごきげんよう。貧乏人さん」

「…………は?」


 状況の把握に時間がかかった。ドアを開けたらアイヴィーが立っているものかと思っていたけど、違った。

 目の前にいるのは長身のゴスロリ女ではなく、ドレスを着たちびっ子だ。私より背が低いくせに、態度だけはでかいボンボンの娘。


「ごきげんよう、と言っていますの。貧乏人は挨拶も存じないの?」


 不法侵入で訴えたら、慰謝料か示談金で一年は働かずに暮らせるのでは。

 そんなことに頭が回るぐらいには目が覚めた。


「既に家の者には出迎えられましたわ。邪なことを考えるのはおよしなさいな」


 ちびっ子は笑顔で言う。私の考えはお見通しということか。

 もう全てが面倒くさくなってきた。寝よう。

 と、ドアを閉めようとするも、寝起きの私はこんなちびっ子にも力で勝てなかった。我ながら情けない。


「はぁ……」

「溜め息をつくと、ただでさえ薄い幸が跡形も無くなりますわよ?」

「うっさい帰れちびっ子」

「ちびっ子ではありません。シャーロットです」

「どうでもいい帰れ」

「わざわざワタクシの方からこんな薄汚い家に出向いて差し上げたというのに、無駄足を踏ませるおつもり?」


 言い返すのも疲れた。わかってはいたけどキリがない。

 これだから、こいつの相手をするのは面倒なんだ。


「はぁ……わかった、わかったわよ。リビングで待ってて。アイヴィー好きに使っていいから」

「わかればよろしい。五分で支度なさいな」

「はいはい」


 気の抜けた返事をして、私は着替えに戻る。

 着替えの服を選ぶ背後で、リビングに向かうシャーロットの靴音がした。


「はぁ……」


 昨日、依頼を済ませたばかりだというのに。よりによってシャーロットが来るだなんて。

 新しい一日は、嫌というほど長くなりそうな予感がした。

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