098★和也の衣装が物語るモノ3
和也の性格(弱い者には優しい間違った者には厳しい)や知識(結構、色々な知識が豊富)は、確かに統治者向きなのだが…………。
ただひとつ、目立つのがキライで、それに適した体質を有していた。
だから、彼らは和也に会えない…………。
和也の個性が、彼らを遠ざける。
それは、気配が薄いまたは無い……。
そこに居るのに見えない(幽霊みたいな)という…緋崎が…大嫌いな個性。
目立つラ・アルカディアンの衣装を、和也は銀嶺に乗るとき以外は着ない。
また、とぉ~っても目立つ銀嶺は、和也を乗せて飛ぶとき以外は、和也の中でまどろむので、その姿を誰も目にすることは出来ない。
かくして、飛竜騎士達は、和也を求めて空を飛ぶだけだった。
そんな事情を知る術の無い和也は、解放奴隷の姉弟の待つオアシスへと飛んでいたのだった。
飛竜達のハイウェイは、街や都市を通らない場所にあった。
というか、飛竜達の通り道から、離れて都市を造ることが常識だったから…………。
ようするに、野生の飛竜同士の争いや飛竜騎士同士の争いなどが、ハイウェイではけっこう起こるから…………。
飛竜同士の争いは、ファイアーブレス、アイスブレスなどのブレス系がトコロ構わず吐き出される。
吐き出されたブレスは辺り一面を焼き払ったり、氷らせたりと…………。
はっきり言って大迷惑……その上で……巨大な飛竜自身が地上に落ちたり………。
災害以外のなんでもないコトを、彼らは平気でやらかしてくれる。
その甚大な被害を受けたくなくて、人間達は、勿論、獣人達も、ハイウェイの下には都市を作らない…………。
その為、和也は通り過ぎた国々の都市を遠めに確認するだけだった。
う~ん……都市? ……街が、遠すぎます……
これでは……大きさと形と色合いがわかるだけです
もっと、近くで見たかったですねぇ~…………
でも、銀嶺の速度がかなりありそうなので…………
ソニックブームは無いと思いますが…………
それに準じた風が起きる可能性はありますね
ここは、高度を下げるのを諦めましょう
緑川くん達と合流したら、あちらこちらを見てまわりましょう
今日は、我慢ですね………
それより…あの姉弟達が気になります
《結界》の中で……大丈夫とは思いますが……
色々と旅の準備も必要ですし…………
砂漠や丘陵地帯、草原、遥か遠くに長大な山脈、あちらこちらに、そこそこの山地と細い川、遠くに湖?らしき煌めきを見ながら和也は飛んでいた。
その間、何度も、飛竜騎士達とすれ違っていた。
が、和也は、ちらりと見るだけで、何も言わなかった。
ふぅ~ん、サークレット、詰襟の軍服、マント
剣帯に剣を佩き、鞍には盾と槍と弓を装備している
……よかった……ボクと変わらないですね…………
飛竜は、鎧を着ているし、武器も装備している
ボクと銀嶺の姿は普通の格好なんですね…………
ただ、ちょっと、派手? なだけで…………
飛竜の色合いは、赤、黒、青、黄、橙、緑etc.と
思っていたよりもカラーバリエーションがありますねぇ………
ただ、乗っている人間は、軍服だけあって
それなりに、決まった色合いで統一されていますね…………
でも、なぜでしょう?
……白はありませんね……水色も無いです……はて?
というか、原色の軍服だけで、淡い色合いの軍服は無いです…………
うふふふ……白の軍服って……本来は礼装のはず
じゃなかったら、正装のはずです
日常に着るモノじゃ無いはず………
はぁ~………次に…銀嶺に乗るときには
新しいモノを作ってもらえば…………
いや、それは、なんか勿体無いような気がします
ここは、諦めて……アレを着るしか無いですね……
飛ぶときに、ツキに言って姿を隠すようにすればイイだけ…………
色々と苦悩している間に、銀嶺は、高度を落とし、速度を落とし始めた。
どうやら、あのオアシスに着いたらしい。
そして、銀嶺は、和也に問い掛ける。
「ますたー……このまま…あのオアシスに降りますか?
ここまで……来る途中に……追い越したり…すれ違った
飛竜騎士達は、私達の後について来ようとしていました
…このまま降りたら……私の痕跡が残ります…どうしますか?」
銀嶺の問い掛けに、和也は考え込む。
そういえば、すれ違った飛竜騎士達は、驚いた顔をした後
ボクらを追い駆けていましたね…………何故でしょう?
謎です…………でも、呪を使ってでも
銀嶺を欲しがる存在が居るのは確かです
となると、痕跡が残るのは考えモノです
銀嶺は巨体です……その姿で降りたら……
足跡や身体の跡が残りますね
銀嶺の装備がそのままでも、ボクの中に入れるなら………
…このままいれるのが最良ですね
外さないといけないんだったら……空中で外す……
さて、どっちになるんでしょうか?
色々と考えた和也は、銀嶺に質問で答える。
「銀嶺、その身につけている装備を外さないと
ボクの中に入れないですか?」
「着けたままで、ますたーの中に入れます」
「そう、だったら、ボクが空歩で飛んだら……
中に入って下さい……」
「はい、ますたー」
「空歩」
銀嶺の返事と共に、呪文を唱えた和也は鞍から立ち上がる。
すると、和也に付けていた命綱などを、フウカ達が外す。
鞍という限定された場所に座っていた和也は、空中で思いっきり縮こまっていた身体を伸ばす。
その間に、銀嶺は姿を細かな光の粒となし儚く消えていった。
あれほどの質量と存在は、融けて消える淡雪のように、あっさりと無くなった。
そして、和也は上空から真っ白なマントを翻し、オアシスへと降りて行った。
その一部始終を、けっこうな距離があったにも係わらす、見ていたキャラバンがあったのだ。
間の悪いコトに、そのキャラバンには、遠見鏡を持っている貴族の子弟が紛れていたのだ。
それも、飛竜騎士を輩出する家系の…………。
もっとも、そのキャラバンは、和也の降りたオアシスの存在を知らなかったので………そこへ行くという選択肢は無かった…。
が、あの周辺には、白い翼竜が降りる場所らしいとの噂が流れたのは確かだった。
それを必死になって調べたのは、砂漠の旅に向くサンドドラゴンと呼ばれる、地駆竜種を駆る王に忠実な将軍に従う兵士達だった。
飛竜騎士達には、翼竜が消えたのは亜空間に入ったからだと思われていたので…………彼らは、その辺りを探すという無駄なコトはしなかった。
亜空間に入りやすい場所なんだろうと思ったから…………。
本当に、王と飛竜騎士達の間には、まともな意思疎通は無くなってしまっていた。
キャラバンの貴族の子弟の情報は、飛竜騎士達と神殿の神官達にのみ報告されていたから…………。
すべては、和也のあずかり知らないところで進み始めていた。
が、それが、和也の身に迫るまでには、まだまだ時間が必要だった。