083★青木君の異世界バイトは?8
「進化って?」
「俺達も人族のように、新しい魔法や武器や道具を作り出せる?」
「でも…ブチハイは、ブチハイとしか子供は作れない………」
互いに、そう言いあい、青木をみて哀しそうに言う。
「この辺りのブチハイは……数が少なくなって………
……子供が…生まれなくなっているんです……
このままじゃ……滅びそうです」
その説明に、青木はああという表情で、納得する。
頷く青木に、イエナは説明を続ける。
「だから、長い旅をして、大陸中央にある天竜山脈を越えて
向こう側のブチハイと合流して……
新しい血の交換を……そのために…………」
イエナの補佐をする男が、その言葉を引き取るように続ける。
「ドラクロニーアとか、人族の王族や貴族、裕福な商人が
欲しがるモノを狩るようになったのです」
青木は、なぜブチハイ達が、ドラクロニーアの非道な仕打ちに、消極的な報復しかしようとしないわけがわかった。
なるほど……天竜山脈までは遠い……ってことは……
そこに、たどり着くまで……人族の国々…………
支配地域を、旅する必要が有るってことだよなぁー……
だったら……人族と争うのは得策じゃ無いのはたしかだな……
穏便? イヤガラセに、たえる必要が有るわけだぁー……切ないなぁー……
こいつ等の様子じゃ……海を渡るって方法は存在しないようだし……
海を渡る船を作る能力は…………無さそうだしなぁ………
航海術なんて……なにそれ、美味しいの状態だろうしなぁー……
いっくらハイエナだって…病人も子供も老人も体の弱い者もいるだろう……
そいつらを連れての長旅って………色々なモノも必要だろうなぁー…
金は、幾らあっても足りないって思ってイイだろう…………
なんか不憫だなぁー…………
ここは、ハイエナと近縁種で、子供が生まれる可能性のある
種類を教えてやるかぁー………雑種にはなるけど…………
子供が欲しいなら……気休めぐらいにはなるだろうから………
でも、ゲームだっていうのに……みょーに……設定が暗いなぁー………
魔王も魔物も出ていないのに……なんか……終わりの世界っぽいよなぁー
「だから、資金が欲しかったのかぁー……でも……お前等の近縁種……
例えば、リカオンやオオカミやジャッカル…ヤマイヌとか…だったら
……子供は生まれると思うけど? ……それは、考えたか?」
青木からの思いもよらない言葉に、イエナはびっくりした表情で言う。
「えっ? ……ほ…本当ですか?」
「ああ……今あげたのって、お前等ブチハイと遺伝子的に……
かなり近いからなぁー……あとは……相性の問題だろう……」
「人族の貴方が、なぜそんなことがわかるんですか?」
イエナの問い掛けに、青木はわりと世間的にあたりまえのことなので、どこがどうとは説明できなかった。
はぁ~……ここに、動物好きの和也や緑川がいれば……
色々と、詳しく説明してくれただろうけど………
俺、そういう知識少ないから………はぁー………
「…うーん……遺伝子を調べたからとしか言えないなぁ…………
俺は…専門家じゃない……ただの高校生だからなぁ…………
上手く説明できなくて、ごめんな」
「いいえ……教えていただけたぶんだけ……滅びに、怯えなくてすみます
……ありがとうございます……」
「……重たくて…わかりづらい…話しは無しにして……
お前達に、新たな名前を付けてやろうか……」
「本当に?」
「ああ……お前等だけなのか? ……それとも?」
「村に居る者達にも……宜しいでしょうか?」
「ああ…………かまわない…お前等の血に連なるブチハイ達に………
名前をつけてやろう………
ただし…俺が付けるのは……名前に幾つもの意味がある………
【名被せ】だが…それでもいいか?」
「ありがとうございます」
そうして、青木はキンカをともなって、ブチハイ達と移動したのだった。
青木は、自分のゲーム内容をある程度説明し終え、和也を振り返って言う。
「まっ……こうして、俺はブチハイ達に、名前を付けたんだ…………
んで…夜になったから、野営して起きたら村に行くってことで………
ログアウトしたんだ…」
青木の経緯を聞き、和也は大きく頷いた。
「そうですか………はぁー…大変でしたね、青木くんも………」
「なんかなぁー………内容的に、神々の黄昏ですかい?」
「ふむ、終わりの始まりの世界って設定というところでどうだろうか?」
「じゃあ……ボク達は……その世界を救うために…………
異世界から召還された勇者? って設定でしょうか?」
「かもなぁ~……なんか…おもてぇー…設定だよなぁ~」
「あっ……こんな時間ですか……帰りましょう」
「和也、車を呼んであるから、一緒に帰らないか?」
「ありがとう…………」
「なぁー紫島のは?」
「次に、みんなが集まるU18の時にでも………ボク…眠いので」
「じゃ…そういうことで……解散なのだよ……」
こうして、彼らはそれぞれ家路についたのだった。
話しを振られなくてすんだ、紫島は、みんなこのまま忘れてくれないかなぁーと、心の中で、ひそかに祈っていたのだった。