081★青木君の異世界バイトは?6
あまりにも予想通りのベタな設定に、青木は、内心で頭を抱えた。
おいおい……持って行った、品物の対価を踏み倒されたあげくに……
きっつい【呪】をかけられてんじゃねぇーよ…………
ったく、判断能力を削られて、闇雲にケンカを売りまくりなんて………
………バカとしか…言いようの無い…状態にされていたのかぁー…………
だぁぁぁぁ…………なんか……すっごく……不憫な気がしてきた…………
ハイエナって、強かで丈夫で悪賢くって………って思っていたのによぉ…
獣人になると……ただの残念脳筋の集団だったんだぁー………
はぁぁぁ~…………こんな、不憫な集団を捨ててきたなんて…………
和也に言えないじゃんよぉぉー…………はぁ~…………
しゃーねぇー………ここは…【名被せ】してやっかぁー………
もう、変なのに引っ掛かんねぇーよーに……あっ……でも………
ここに居る人数だけやってもしょーがねぇーか…………
村? に、残っているやつらが人質に盗られたら意味ねぇーじゃん………
しょーがねぇー……村に来て欲しいって言われたら行ってやっかぁー
はぁー……ビンボッくじ……1番引いてるのもしかして……俺?
内心では、かなり諦めている青木だが、表面上は面倒くさいと顔で言う。
「なぁ…………ここって、そのドラクロニーアから遠いのか?
お前等【呪】に狂ってたけど………そういうのって……わかるかぁ?
もし、近いんだったら…俺達を、襲っただけですむだろうけど…………
遠かったら……どんだけ、周りに被害を出しているかわかんねぇーぞ………
……どうなんだ?」
青木の質問にリーダーは、改めて辺りを見回す。
次に、獣人同士で、お互いの匂いを確認する。
そして、ほっとした顔になり、青木を振り向いて応える。
「はい、ここは、ドラクロニーアからは、そんなに離れていません。
それに、この辺りはキャラバンは通りませんし、村などもありません。
俺達が襲ったのは、貴方達だけです。
俺達の身体にまとわり付いている匂いや魔法の痕跡は
貴方のモノしかありませんから…………」
その応えに、何故か青木もほっとするのだった。
さすがは、ハイエナの獣人だなぁー……お互いに匂いをかぐだけで
自分達以外の匂いが、俺とキンカ以外無い……って、すぐにわかるんだから
確か、ハイエナの匂いの記憶力と、その匂いをたどって移動する距離って
………普通の犬なんて、足元にもよれないほどだったからなぁー…………
ライオンのメスだけだったら、ハイエナにおどされたら……
獲物を置いて逃げるしかないほどに…………
ハイエナの集団って、強いんだよなぁー…………
たまに、オスライオンをからかいすぎて殺されるってドジ踏むけど…………
なんか、なぁー………強いけど…残念って感じがする…………
たぶん、そういう意味で、ろくな天敵がいないから………
あんまり…考えなくても大丈夫って状態で生きてきたから…………
獣人っても人間の狡猾さが足んなくて、抜けているんだろうなぁー………
俺も和也や、赤沢ツインに会わなければ…………
こいつらみたいに、お間抜けで残念なヤツになっていたかも…………
はぁー……早く……時間がきて……ログアウトしたい………
なんか、むしょうに………和也に会いたいなぁー…………
こいつらとの戦闘より……和也とバスケしたり……話したりしたいなぁー
刺激が足りない……ミスったら……何されるか……わかんない……
その緊迫感がたまらないんだよなぁ………
はふっ…………ログアウトしたときに…………
苦労したって、言えるように………コイツの頼みをきいてやるかぁー………
なに、名前なんて……今までに…戦った(試合した)………
……ヤツらの名前をもじって付ければイイだけだし………
完全に腹をくくった青木は、ハイエナの獣人達に苦笑しながら言う。
「俺達以外に、ケンカを売っていないなら、何の問題も無いな………
ところで……ドラクロニーアに売ったはずの…………
その、冠ウサギとかの代金は、きちんと受け取ったのか?
……それと……お前等の家族の住んでいる場所は、ここから近いのか?」
青木の質問に、ハイエナの獣人達は顔を見合わせる。
そして、はっとした顔で、仲間内の会話を始める。
「イエナ様、俺達の馬車や荷物、馬や商品や武器とかも……あそこに……」
「たぶん……冠ウサギも…置いてきたと思う…」
「…………」
「…………救いなのは、ドラクロニーアが…………
請け負った商品の最後の搬入先だったってことですねぇー…………」
「ああ……商品を…届けそこねて…信用を落とす心配は無いからな………」
「ドラクロニーアに行く前に、商品の受け渡しは終わっていたし………
必要なモノは、全部買い終わっていたしなぁー…………」
「……ええ……なんか……いやな予感がするって…………
イエナ様が…………ドラクロニーア…に…行く前に…………
代金と買った品物を持って、帰るように指示して……
俺達以外は…村に帰るようにして…良かったですねえー………」
「ドラクロニーアの王家からの依頼は、今後いっさい受けないし
その話しは、すべての獣人族に通達する…………
勿論……冠ウサギの対価も、きちんと払ってもらうし…………
あそこに置いてきた、もろもろのモノは、返品してもらう…………」
「はい…もちろんです……イエナ様……」
「我々、ブチハイの対価を踏み倒そうとする者が
他の獣人の一族の対価を、真っ当に払うとは思えないからな」
「そうですねぇー……我々より…力の無い獣人は…特に……
確実に、踏み倒されるでしょうねぇ…………」
「だが、これで…………我々の話しを理由に
ドラクロニーアとの取引を止める者達もでるでしょう」
「特に、森の管理人達は、ドラクロニーアとの取引を
即座に、停止するでしょうね」
「彼らの薬が手に入らなくなれば……ドラクロニーアも困るだろうさ……」
「あらゆる獣人族に………」
もう少し、状況が種族などの立場などを知りたくて、ブチハイエナの獣人達の話しを、青木は黙って聞いていた。