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079★青木君の異世界バイトは?4



 吹雪に包まれて、目も鼻も耳もほぼ使えない状態になったはずなのに…………。

 ハイエナの獣人は、青木とキンカに向かってのろのろと歩く。

 あきらかに、それはおかしい状態と姿だった。


 そこへ、大きな【氷塊】が、ガンガン降ってくる。

 氷の塊にぶつかり、倒れる者もいたが…………。

 なまじ、体力があるので、血を流しながらものろのろと立ち上がり、そのまま青木達へと歩き出す。

 その姿は、まるでゾンビのようだった…………。


 うえぇぇぇー……気持ち悪ぅー……まるで……ゾンビだぜ……

 どうすっかなぁー……あんま…怪我させんのもなぁー…

 ………って……バカか俺は……


 たとえ、大怪我させても……

 あとで【治癒】すりゃ良いじゃん


 よし、身体を地面に縫い付けてやるかぁー…………

 とにかく、動きを封じないことにはどうにもなんねぇー……


 青木は、深呼吸して、思いついた魔法の呪文を唱える。


 「すべてのハイエナを刺し貫け【氷槍】」


 青木の詠唱により、空中から氷の槍がハイエナの獣人に、まるで雨霰のように降っていく。

 そして、ハイエナの獣人達は、氷の槍に刺し貫かれ、次々と大地に縫いとめられていく。


 キンカも氷の槍に当たっていたのだが、ヒグーマの特性を使い、当たったそばから蒸発させたり、殴って壊したりしていた。

 その為に、ちょっと身体をぬらしただけですんでいた。

 なお、青木は呪文を唱えた人間なので、吹雪も氷の塊も氷の槍も彼を害することは無かった。

 

 よし…全員…氷の槍で大地に縫いとめられた…………

 思ったとおり、氷の槍のおかげで、出血もほとんど無い

 これなら、すぐに【治癒】を使う必要は無いな


 とりあえず、キンカの怪我の状態も、ついでに確認しよう

 何で、俺は、ハイエナの獣人に、めんどくさいことをしているんだろう?


 唐突に、青木は、大好きな和也のことを思い出した。

 が、まず、青木は、自分に従っているキンカに声をかける。


 「キンカ……怪我していないか?……」

 

 「ますたーは、私を傷つけたくないと思いながら、魔法を使ったから……

 私には……ほとんど影響は無かったのです」


 「それって、マジ? ……本当か?」


 「……攻撃魔法は……敵を目標にしてかけるモノなので……

 味方には……基本的に影響はありません……

 ハイエナに当たった氷の塊が…私に向かって飛んできたりしましたが

 ……所詮は氷ですから…殴って壊しました……大丈夫です……」


 あっさりとしたキンカの答えに、青木は、ほっとした。

 そして、とりあえず、身の危険が無くなったので、のんびりと自分の思考にハマっていった。


 そうか、動物好きな和也に、ハイエナの獣人を殺したら…………

 たとえゲームの中といえど、嫌われそうで…………

 なんとしてでも、殺さないようにしたかったんだ…………


 俺ってば………純情だわ……じゃねぇーだろ…………

 いや、それより……獣人って……人間なんだから…………

 後味の悪いコトはしたくないしな…………


 さぁーて……ディスペル【解呪】……を試してみよう

 いや、パラライズ【麻痺・痺れ】をかけて……

 全員を動けないようにしてからの方がイイのか?


 ……まずは【治癒】を唱えて怪我治して………

 それから【解呪】を唱えてみよう…………

 危険は避けたほうがイイし……


 怪我は、新しいうちに治療したほうが治りがイイもんなぁー……

 ハイエナの獣人達が、正気に戻れたら、何があったか聞いてみよう


 絶対に、このゲームのアルバイトを和也もしているはずだから…………

 後で、どんなことがあったか……話すはずだから…………


 さぁーてと……ハイエナの獣人サン達よぉ……正常になってくれよ……


 内心で、色々なことをマジメに考えていた青木は、自分なりに考えた手順で、魔法を使うのだった。


 「お前等、ちっと…動くな…【麻痺・痺れ】……」


 「…………」


 ハイエナの獣人達は、その身にかけられた【呪】が解かれていないので、青木とキンカに向かって、低く唸っていた。


 なかには、青木もキンカも見ないで、ぼーっとしているだけの獣人もいた。


 不味い……大量出血のセイで……意識混濁しているヤツがいる…………

 さっさと、直そう


 それを見た青木は、次々と魔法を発動せていった。


 「氷の塊も、氷の槍も、今は、必要ない……砕けろ…溶けろ…消えろ」


 青木の言葉に従って、ハイエナの獣人を大地に縫い付けていた氷の塊と氷の槍は、砕けて溶けて水になり、蒸発して消えていった。

 その為、ハイエナの獣人達は、立っていることが出来なくなり、次々と倒れたりヒザをついて行った。

 どうやら、氷の槍に支えられて立っていたらしい…………。


 崩れ落ちるハイエナの獣人に、内心で死ぬなよぉと叫びながら、青木は言う。


「この場に居るモノすべてに【治癒】を……」


 青木の言葉と同時に、青木の身体は、白く輝き出した。

 その光は、水面に石を落としたときのように、何十にも輪を描き広がっていった。


 青木の白い暖かい光に触れたハイエナ獣人達の身体から流れる血はとまり、その傷は見る見る内に、ふさがり閉じていった。


 ふうー…………どうやら……治ったな……

 次は【呪】を無効化にするかぁー…………

 上手くいきますように…………


 深呼吸して、精神統一をした青木は、魔法の言葉を口にする。


「邪悪な心で、悪しきコトを行う愚か者に還れ【呪】よ……【解呪】……」 


 青木の言葉が終わると、ハイエナの獣人達の身体から、黒い靄のようなモノが立ち上り……空中で……一塊となり、すうーっと飛んで行った。


 うっわぁぁ……獣人の身体から出て来た、あの黒いもやもやしたモン………

 ……なんか…すっげー……気持ち悪いんですけどぉぉ……

 って………これで、解呪できたかぁ~…………


 獣人の身体から抜け出たモノを見送った青木は、ちよっと不安そうな顔で、キンカに声をかける。

 








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