077★青木君の異世界バイトは?2
和也の冷たい視線を、思う存分味わった?青木は、軽く頭を振って話しだす。
「俺は、キンカに、人間達が生活している場所に行きたいって言ったんだ」
「キンカ?……クマの名前なのか?……」
「ああ…そうだぜ………」
「金色の華って意味ですか?」
「おっ…さすが…和也は…わかってくれるんだぁ…」
「金色のクマだったのかい?…もしかして……メス?…」
「くすくす…当たりだ……そう…メスだったんだ」
「色はわかったけど…触り心地は?………」
「絹の手触りって感じだったぜ……首から胸にかけて…真紅の飾り毛があって……頭から背中…シッポの付け根まで…真紅のタテガミもどきが…あって……綺麗だったなぁー……」
「へぇー……種族的な特徴は……どんなものなのだよ」
「オスよりメスのが大柄だって言っていたなぁー」
「なにを食べるんですか?」
「雑食だって言っていたぜ」
「ふぅ~ん……クマに似てますね……」
「青木は、何か食べたの?」
「いや……何にも持っていなかったから……アレは食べたくなかったし………」
「アレって?」
「…………」
「わかったのだよ…………」
「緑川ぁー……もしかして……虫?」
「当たりだぁー……俺は……半透明のイモムシを見たんだ」
「それでぇー」
「なんなんだぁー…って…思って……でも…触るのがイヤで………短槍で、サクッて刺してみたんだ」
「青ちゃんでぇーもぉー………イモムシはぁー…ダメぇー?」
「サイズが問題なんだよ」
「どのくらい大きかったんですか?」
「小さいヤツで、でぶいコーギーって感じだった…中ぐらいが…足を取ったゴールデンレトリバーで……大が…伏せしているセントバーナードって…サイズ……」
「マジで?」
「ところで…そのイモムシはどこを歩いていたんですか?」
「空中を、大中小の群れで歩いていたんだ」
「前にテレビで見た…………エビの行軍って感じ?」
「そう……そんな感じ……んで……イラッとして……サクッて刺してみたんだ」
「刺せたんですか?」
「ああ……短槍で…刺したら…半透明の透けたイモムシから、ピンクのムチムチしたイモムシになったんだ」
「…もしかして…キンカさんが…美味しく食べたって……コトですか?」
「あっああ……キンカが嬉しそうに……槍に刺さったイモムシを見るんで…………俺は……喰うかって…言ったんだ…」
「それで?」
「食べたいって言われたから、口元に持って行ってやったんだ…そしたら……ガブッて……食いついて……あっという間に……食べ終わったんだ」
「そのイモムシは…人間も食べられるんですか?………」
「ああ…かなりの高級食材らしいぜ……俺は…ゴメンだけど」
「…………」
「その後は、氷川や緋崎の見た道路を目指して走ったんだ」
「たどり着けたんですか?」
「…んにゃ…キンカが近くに……ちょっと…ナンナ…獣人族が居るって言うんだ」
「苦手な獣人族…? ………」
「クマは、基本単体で動く……それに対して…集団で動くライオンとか狼とかリカオンとかハイエナとかじゃないですか? …」
「ふぇー……流石は、動物オタの和也……そのとおりだったよ」
「で……どれに近かったのだよ……」
「ブチハイエナに近かったなぁー…………」
「本当にブチハイエナだったら……ガンガン撃ちまくり出来たかなぁ……」
「たぶん……ブチハイエナとかリカオンだったら…数も多いから撃ちまくりで…楽しいだろうなぁー」
「どんな手応えなんだろうなぁ………」
「でも……ライオンも…撃ってみたいねぇー…」
「そうだなぁー……特に……タテガミの立派なゴッツイぐらいのオス……くうぅ……たまんねぇーなぁ」
「恐竜は……反応が…にぶくって…つまんねぇーからなぁー」
「だよねぇー……突然…電池が切れて…ズズゥーンって……倒れるだけだもんねぇー……アレだったら……ソンビの方が…面白いよぉ…」
氷川と緋崎のそれってどぉーよという会話を、和也は一言でやめさせる。
「ボク…眠いんですけど…」
早く青木の話しと紫島の話しを聞き終わって、眠りたいという不機嫌な和也の言葉に、氷川と緋崎は乙女か?というように手を握り合ってブンブンと頭を振る。
「ごッゴメン……もう…勝手に…発言しないから……許してください……」
そして、結局…………話しが終わらない…………。
青木と紫島は、懲りずに和也をイラ付かせる2人になまぬるい視線をむけるのだった。