076★青木君の異世界バイトは?1
全員を見回して、青木が楽しそうに言う。
「こんなかじゃ、俺が1番早いかな?」
そんな青木に、和也が不思議そうな顔をしながら尋ねる。
「……何が…早いんですか?」
和也の質問に、ヘロッと青木が答える。
「目が覚めるって感じたのは、ふこふこした敷物の上だったんだ」
全員が、それって何なの?という表情になった。
だから、1番どこ行ったの?と思いつつも、勝手に喋らせておいたほうが、和也の希望に沿うと、誰も突っ込まない。
やはり、触らぬ…………である。
まわりを見渡してから、得意げに青木が言う。
「タテガミのある………んーと…クマみたいな動物の上だったんだ」
それって、振り落とされたら、食べられてしまいそうな…………
危ない場所ですよねぇ……でも……青木くんは……楽しそうですし?
でも、話しをしやすいように、お題を振らないと進みませんよねぇ、確実に…………はぁ…………
わけが判らないと顔に大きく書いて、和也は再度、青木に質問する。
「それで、クマの上で、何かしたんですか?」
和也の問いに、青木は楽しそうに答える。
「クマのケツに、大きな槍が刺さっていたんだ……クマは生きていたけど…あっちこっち…血まみれだった」
うん~とぉ……どういう風に振ったら……話しが進むかなぁ?
とりあえず、好きに喋らせてみましょう
「…………」
視線だけで、それでという和也の催促に、青木はログインした時のコトを回想しながら話し続ける。
「んで……俺は…槍を抜いてやったんだ……」
下手に抜いたら出血するんじゃありませんか?
いや、ここでそういうのを入れると、話しがあさっての方向に向かうかもしれませんねぇ…………
気にはなりますが、このままの青木君に話してもらいましょう
「槍ですか…………」
「ああ…………でも…クマは…目を覚まさない……んで……治れ……【治癒】って…手をかざして…叫んでみたんだ…」
パターンてきには似たり寄ったりですねぇ…………
「それで?」
「クマの全身の傷が治ったんだぁ……んで…クマが目ぇー覚まして……俺を…見て…礼を言うんだ」
「クマの言葉がわかったんですか?」
「ああ…聖獣ってヤツで…人と会話できるらしい……」
「聖獣ねぇ~……オレの……黄狼っていう種族だったけど……青木の…クマって…なんて種族?」
「火熊って……種族で……けっこう高温の炎を吐き出すし……純粋に力もあるし……一緒にいると……あったかいって感じかな?…浅黄の黄狼は?…」
「黄狼は、いや、ガロは、空を駆け抜けるし……爪で空気を切る?……カマイタチみたいに…遠くの標的も倒せるって言ってたなぁ…あと……某ゲームのように吼えると…その声の大きさとか遠吠えの長さで…可愛い狼が高速で走るアタックも出来るらしい…その辺は…実際に……戦ってみないと…………」
「へぇー……ガロですかぁー…グレイゴ○みたいな必殺技……うらやましいなぁ……でも…ボクだったら……ユキヒョウがイイですねぇー……ねっ…緑川クン………」
「うん……ユキヒョウは…最高なのだよ…会話もできる…ユキヒョウの聖獣を…手に入れられたら…至福なのだよ…」
「はぁー……会話の出来るユキヒョウ……」
「ぇぇー……むぅーりぃー……緑ちゃんってばぁー……リスの群れぇー率いてるじゃん……エーリースがぁー泣いてぇー……いやがぁーるぅ……」
「煩いのだよ……街に着いたら…わかれてやるのだよ…ユキヒョウを探す旅にでるのだよ……あっ…そうだ…和也…どこかの街で待ち合わせして…ユキヒョウを探す旅に行かないか? ……」
「うん……行く…絶対に行くきますよぉ…ユキヒョウを探す旅………あっ…ボクの方は、キャラバンの人達をロ・シェールの都に連れて行く予定があるんですけど」
「だったら……ロ・シェールで…待ち合わせなのだよ…………僕も行く予定だったのだよ……とりあえず……ロ・シェールで会えるのだよ」
「オレも、ロ・シェールに行くよ……ガロに言えば……すぐに行けると思う」
「俺と清雅は……ちょっと遅くなると思う……だって…通常の馬しかいないし………トッカゲンの村に行く約束があるから…………」
「青木はどうするのだよ?」
「……俺……どこにいるか……わかんねぇー」
「聖獣に聞けばイイだろ」
「あっ……そっか……んじゃ……ロ・シェールで…待ち合わせね…」
「そうなのだよ……和也が来るまでは……待つのだよ」
「…………」
「紫島君は?」
「行くぅーよぉー……でぇもぉー…時間がかかぁーるぅー……ちょっとぉー……待ってぇー…ほぉーしぃー……かずやぁー……イイぃー?」
「はい…ここにいる全員が揃うまで……ロ・シェールで待つ…というのはどうでしょう?……ロ・シェール周辺で…ミニクエストをするというのは? ……」
「で……青木…話しの続きはどうしたのだよ…」
「えっ……説明すんのぉー……めんどくせー…………」
なんか面倒になったと言って強制終了を口にした青木に、和也はそんな答え聞こえませんと、バッサリという。
「話してくれますよね?」
和也の双眸がすぅーっと細くなったので、慌てて青木は答える。