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068★緑川君の異世界バイトは?5



 ここからは、また、緑川くんの不幸な回想にはいります。


 巨大ヘビを、軽々と叩き斬った緑川の前に、逃げ惑っていたエーリースの一族が、全員揃い跪くと、代表して族長のエゾリンが言う。


 「あなたは、我ら森の管理者エーリース一族の命の恩人です。我ら、獣人族は、命を助けてもらったのなら、己の命で返す掟があるのです」


 潤んだ瞳で見詰める者。

 キラキラした憧れを含んだ瞳で見る者。

 尊敬の眼差しで見る者。


 などの色々な表情を、緑川は、不幸なことに見分けられた。

 その視線に、ちょっと…いや……かなり…いやぁ~んな感想を持っていた。

 が、ネズミにそんな目で見られるのは虫唾が走るなどと口にするコトは、理性があったので言わなかった。


 何も言い返すことは無く(=なにか酷い言葉を口にする危険があったので)黙ってエゾリンの話しを聞いていた。

 無言でいる緑川を、尊敬の瞳で見詰めながら、淡々とエゾリンは話し続ける。


 「そう、命には命で返すのです。なので、あなたが死ぬか、私達が全員死ぬか……どちらかが死ぬまで…私達はあなたの忠実なしもべです……ですから…私達…全員に名前をください…」


 その時、緑川は、思った。


 このRPGは、いったいどうなっているのだよ?

 なんで、一族全員に、僕が、名前をつけなければならないのだよ

 名前を付ける意味が……理解不能なのだよ……


 普通は、代表者を決めて1人とか…………

 多くても、2人か……3人……ぐらいだろう

 どう見ても、100人以上いるだろう…………


 それに、全員分の名前を考えろと言うのか?

 いや、落ち着け……とりみだすな………僕………

 とりあえず……何名…いるか…聞いてみるのだよ……

 

 緑川は、内心の葛藤を隠し、エゾリンにポーカーフェイスで質問した。


 「一族と言うが…いったい…何人いるのだよ?」


 緑川の質問に、エゾリンはにこにこしながら応える。


 「ここにいるエーリースの一族は、168人です……群れとしては…少ないほうです…大きな群れだと……1000人を超えます……」


 その人数全員に、名前をつけるのかね……この僕が…………

 …………考えるのもイヤなのだよ……

 なにか、理由を付けてでも……回避したいのだよ……

 …………そうだ………ファンタジーの定説があるではないか………


 ……名前を…知られると支配される……

 人間である僕に、名前をつけられたら[名盗り]と同じではないか?

 …と言って………名付けを回避するのだよ

 ガンバレ……自分なのだよ……


 緑川は、考えを纏めて、やんわりとした拒否の言葉を口にする。


 「僕は、人間だ。その人間に名付けされると…その名前を元に…隷属させられる……危険があるのだよ……まるで…[名盗り]…になってしまうと思うのだよ……だから……僕は…旅に…必要なモノだけを…お礼に…もらいたいのだよ」


 緑川の淡々とした 言葉に、その場に居たエーリースは、無意識に両手を胸の前で組み、うるうるとした瞳で見詰めていた。

 そのエーリース達の思いは…………。


 なんて優しい人間なのだ…………

 我々……獣人を……虐げたり…………さげずんだりしない……

 その上で……従いたいと言うのに……いらないという…………


 お礼なら……食料や馬などでイイとは……なんと……無欲な……

 まして、名付けは、名盗りや支配と一緒だからしたくないなんて…………

 嬉しい……我ら…獣人を…対等な……人間として…扱ってくれる…


 あれほど……強い…人間なのに………

 付いて行きたい…どこまでも……

 この…命……はつるまで……


 などとエーリース一族が、思っていたことを幸いなことに緑川は、気が付くことが無かった…………。

 こんな風に思われていると知ったら……その場にいた…馬? …を……奪い取り…たったと逃げていたのは確かなこと………。


 なお、緑川は、女優業で乗馬シーンがあるのと言われて、姉に無理矢理乗馬を付き合わされて、大障害レースに出られるぐらいの腕があります。

 それに気付かずに済んだので、脱兎しなくて済んだとも言う。


 エゾリンは、緑川の優しい言葉に、感動して涙をポロポロと零していた。

 

 「あなたに助けて頂いたから、ここに私達は生きています……隷属…なんて…関係ありません……あなたのしもべとなり…ともに…生きたいのです」


 「僕の命を護るために、たまたま、ヘビを倒しただけだ。そこまで……恩に…思う必要はない…人間の僕に従ったのなら……他の…獣人に………」

 

 緑川が、必死で説得しようと言葉を紡ぐと、その途中でエゾリンが言う。


 「我らは、あのヘビに喰われ、一族の人数を3分の1に減らしているのです……これだけしか…残って…おりません」


 「んっ? ……それは…おかしいのだよ…いくらあのヘビが大食漢でも……そんなには食べないだろうし……満腹まで食べたのなら……追いかけるはずは…無い…だろう? 不自然なのだよ」


 緑川の納得が行かないという言葉に、エゾリンが項垂れながら言う。


「…あのヘビは…我らが…従うことを拒否したタメに、我らの一族が…すべて…滅びるまで…何処までも…追い続けるように…【呪】がかけられておりました」


 「なんなのだ? ……いったい……誰がそんなことをしたのだよ?」


 「ある王国の王です」


 「人間だな」


 「はい…」


 「僕が…[名付け]をしたなら……もうその胸糞悪い…【呪】は、お前達エーリースにかけられなくなるのか?」


 「はい」


 「だったら[名付け]しよう……くっくく…2度と…【呪】をかけられないように……真名と…愛称を付けて…[名被せ]にしてやろう」


 「おおお……あの伝説の…[名被せ]を………我らは…運が良い……滅びから……繁栄に…運命が反転した……ありがとうございます…我ら…森の管理者エーリースは…あなた様に…この命…はつるまで…忠誠を…………」


 「…………と言われたのだよ……浅黄と同じで、幾つも名前をつけたのだよ…乗り物は…ラクダもどきにエーリース? が乗っていたから……僕も1頭もらって乗ったのだよ……こうして、知識と乗り物と従者を手に入れたのだよ………それで、ひと休みして、目が覚めたらログアウトしていたのだよ」


 黙って、緑川のゲーム内での行動や話しの展開などを聞いていた和也は、無意識に首を振っていた。








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